遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う

「遊行七恵の日々是遊行」の姉妹編です。
こちらもよろしくお願いします。
ツイッターのまとめもこちらに集めます。

2020年最後の東京ハイカイ録

2020-12-29 22:55:36 | 展覧会
「漂泊の思いやまず」とは芭蕉「奥の細道」冒頭の一節だが、今のわたしは強く同意するばかりだ。
コロナ禍の下、思うままに出かけられない状況で、この言葉はリアルに自分を焦がす。
行きたい、行きたい、行きたい。
行きたいが、以前のようにスイスイと出かけられないことはわかっている。
しかしわたしを東京ハイカイ者にした(!)要因たる弥生美術館に行くにはもうこのせわしない年末の一日しかなかった。
わたしは出かけた。
「漂泊の思いやまず」出かけたのだ。

芭蕉先生は歩いたり馬に乗ったりして陸奥へ向かったが、わたしは新大阪から新幹線で向かった。
今回はポイントがたまっているのでグリーン車で往来することにした。
少しでもリスクを軽減しなくてはならない。
ガラガーラの車両で快適に東京へ向かったが、快適すぎて寝入ってしまい、久しぶりの富士山を拝むこともなく熱海辺りで目覚めた。
ああ、熱海にも行きたい。

弥生美術館へは東京駅からなら千代田線で行くのがよいのだが、大手町ではなく二重橋駅からの方が合理的だと今回初めてわかった。
行幸通りを皇居へ向かって歩く方が大手町へ出るより早いのだ。
人気のない道を往く楽しみもある。



弥生美術館では「奇想の国の麗人たち」展が開催中。
今回も友の会の会員更新するが、まだ一回分あることを教わる。そうか、コロナのせいでずれてるのか。

展覧会の感想は年明けに予定。

華宵コーナーは戦う美少年、夢二は童画の展示でどちらもとても好ましかった。
好きなものだけで構成された美術館。
1991年12月「美少年の系譜」展でここの会員になったのだが、以来一度も欠かさず通っているのだった。

ここで韓国の禹那英さんの展覧会のチラシをもらったので四谷の韓国学院ギャラリーに行きたいところだが時間の都合から次回に回す。
そのまま池袋へ。久しぶりにタカセ。少し並んでランチ。オムライスとサバランとをいただく。
おいしかったわ。ああ、以前は池袋に行くたびタカセでこうして食べたり買ったりしてたんだよなあ。
またこんな日が来ますように。

さて池袋の丸井へ。「装甲騎兵ボトムズ」展。
わたしはサンライズのロボットアニメ育ちなのですが特に80年代半ばまでの作品が大好きで。
富野監督作品以外ではこの「ボトムズ」がもう最高に好き。

ぱちぱち撮りたおしたわ。

タイムアップ。丸ノ内線で東京へ。
駅弁買いに行くがエンガワの押し寿司は売り切れてた。でも焼き鯖寿司はあったのでよかった。
再びグリーン車。16時発のにのった。
惜別の念というかなんというか。
やっぱり東京は面白いのよな。
大阪もいいんだが、ぬるいのだよ。
東京に3日ばかりいると早く大阪へ帰りたくなるのだが、それはあのぬるさに癒されるため。
東京で受ける刺激の強さはやっぱり必要。
また行きたい。

今日みた夢二の作品の中にこんな言葉があった。
「ああ 早く昔になればいい」
夢二は草双紙を愛していて、明治大正の世にふっと幕末の頽廃的な美に包まれたいと思ったのだ。
それがこの言葉を言わせた。
そしてこの言葉は久世光彦も愛していて、自作の小説のタイトルに引用した。
「早く昔になればいい」
今のわたしもこの言葉を実感として共有する。
「ああ、早く昔になればいい」
昔のように東海道を好きなように往来できますように…

久しぶりに歩いた京都

2020-12-23 23:53:50 | 日記
最近とみに「終わった人」的な感があるので、もう美術ブロガーとしてはご隠居様も同然、低浮上どころではない状態ですわ。
ほんでもまだぼそぼそとなんか書いていこうという気はあるのと、新しいPC更改を本気ですれば、たまりにたまった建築写真は挙げてゆけるなと。
あとやはり例の「例によって終了した展覧会」の感想もまあなんとか挙げてゆけるように思います。
とりあえずリハビリをしないといけない。
ということで、このコロナ禍の下でも出かけた話とかちょっとまとめます。
今回は京都へ行った話をまとめます。

秋は混むからバスは乗らないようにするコースを考えたのだが、地下鉄も混むし、久しぶりに歩くことにしてとりあえず四条河原町へ出た。
そのままマツキヨの出口から地上へ上がり東山へ向いて歩く。
南座いいなあとかレストラン菊水好きだとか東華菜館行きたいとか思いながら歩く。


やっぱりこんな状況なので賀茂川の川辺にカプがいないよ。


それで珍しいことに大和大路を上がっていった。
仁丹の地名表示がある。


なんだかんだ言うても風情がある街並みで、これで京都は生きてるのよなと思ったりするうち、三条京阪につく。
地下へ降りてビルのうどん屋に。ここはだいぶ前からよく行くのだけど、寒い時期になったらあんかけうどんが出るのが嬉しくて入ったけど、メニューが微妙に変わってしまっていて、あんかけうどんが妙にしょぼくなってたなあ。

まあ大量にショウガ入っててそれは嬉しいけど。

出てから東山三十六峰へ向いて歩く歩く。
普段通らないとこも歩く。


おっ小鍛冶…




案外坂になってんねんなあと思いながら歩く。某宗教の前を往き、粟田口の手前くらいから住宅街の方へ入ってゆく。
ここらは完全に未踏。王様ダリアが咲いていた。


無鄰菴のところで大きい道に出る。
出た、動物園と疎水記念館。



丁度そこの流れのところが「科捜研の女」の舞台になってたな。
干物の話の。

このあたり八つ橋の下にカンザキアヤメが咲き、ちょっとばかり昔男くんのキモチ。


そこから疎水へ。
あれだ、蹴上のインクラインね。

着物着た若い子らが楽しそうに写真撮り合ってるのでちょっとばかりお手伝い。
水の流れは非常に激しい。蔦は赤い。
とりとめのないことを書いているが、わたしの視点の揺らぎをそのまま。
いい建物も見受けられたが、残念ながら廃屋。ハイクオリティなリノベをすればいいのに。






そのままずっと歩く。田辺朔郎博士の像につく。小磯良平、松本竣介と並ぶ美青年だよなあ。







それで左へ行くべきだが、九条山浄水場ポンプ室を見に行って、


そのまま中へ行き、日向大神宮へ向かいかけてしまった。すると雨が降り出した。
これは戻らねばならないともとへ向かうと小雨になった。
もしかすると何かの警告だったのかもしれない。
なにしろわたしはよく歩くので、そのまま歩き続けて山の中へ入りこんでゆく可能性があった。
うまくゆけば山科の毘沙門堂、下手をすれば遭難である。
だから戻ってよかった。
その後は水に沿って歩く。逆行しているらしく、誰もいない。

無人の野道を往くと、ようよう人の集まりが現れた。
そこを超えると水路閣についた。




境内の楓が金色と朱色に彩られている。
煉獄さんの髪の色だと思う。

煉獄さーん煉獄さーん、心の中で叫ぶ。





野村美術館、永観堂の辺りで雨が激しくなり、傘を持たぬのでこれはまずいと泉屋博古館へ走った。
すると長らく会っていなかった友人二人とばったり出くわした。
なんでも二人はとある講座に参加した帰りだという。
けっこうなことである。
お茶を頂ける休憩室でしばらく和む。
コロナ禍がなんとかなればまた一緒に出掛けましょう。

わたしは二人と別れて泉屋博古館の名品を見る。
つい先だって「瑞獣降臨」ちがう、伝来だ、「瑞獣伝来」展を見たばかりの気がするが、もう月日が経っていたらしい。
かつてのわたしの行動範囲を考えれば全くの別人のようだ。
好きなものを色々見るのは楽しいが、そのことを思うとせつない。




帰り、5系統に乗る気はなく32系統に乗ろうとして果たせず、そうなると歩く気になる。
よくやるぜ。

丸太町を西へ西へ向かう。だいぶ前、もう10年以前に一度人と烏丸から鹿ケ谷まで歩いたが、あれは疲れるばかりだった。
今度はマスクしながらも単独なので好きなペースで歩ける。
聖護院の手前くらいで曲がり、南下する。下ル。
そしたら武道センターや武徳殿の塀のところだね。ここを歩くと必ず村上もとか「龍 RON」ラストを思い出して胸が熱くなる。
2000年の夏のある日、1928年を、そしてその人を思う人々。
ああ、あの作品が生まれてくれて本当に嬉しい。

そしてナナメを見ると例のリンゴのタルトのお店は相変わらずの行列。
まあ無理やわな、入るん。ラ・ヴァチュール。
武徳殿の見学とここで食べた話はこちら。
武徳殿とタルトタタン
あの頃はまだおばあさんもご存命だったかな。後にお孫さんとその仲間の活躍でタルトタタンは常にあるようになった。でも行列なのでちょっと難しい。

ロームシアター京都から細見美術館前を経由してそのまま二条通へ向かう。川端二条まで出て橋を渡る。
久しぶりに島津製作所の記念館に行きたいところだが今回はやめて河原町通りへ。
それがたたったか、元の島津製作所のレストランでお茶したかったのだが、この日は休みでアウト。残念。
ここの建物についてはこちらに。
旧島津製作所(現フォーチュンガーデン)
もう8年も稼働しているのだなあ。めでたいことよのう。

志津屋三条店の二階がイートインなのに気づき休憩することにした。
ところでここでこんなの書くのはあまりあれだが、やはり書いておこう。
お客さんがけっこう入っている中で従業員同士が「タダで持って帰っていいよ」とか声高にしゃべり合うのはいかがなものか。
合図し合うとか何かならともかく、これではお金払って買い物するのが嫌になるではないか。わたしなどはもう志津屋で買い物するとき必ずこのことを思い出すだろう。
そして人がここのパン買ったのを見てはそのことを思い出してしまう。
ちょっとこれはよくない。



京のクリスマス飾り


小一時間休んでから帰阪する。
よく歩いたように思うが調べたら16300弱だった。東京へ行って朝から夜まで遊んでいる時に比べると少ない。まあこんなものか。
本当は朝イチから出かけたいが洗濯したりなんだかんだするとどうしてもこうなる。
なかなかうまくはゆかないが、こうして出かけられてよかった。