遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う

「遊行七恵の日々是遊行」の姉妹編です。
こちらもよろしくお願いします。
ツイッターのまとめもこちらに集めます。

「ラブリー!ジャパン」展はラブリーなのが多かった。

2020-08-27 22:40:47 | 展覧会
最近本当に書けなくなって困っている。
美術ブロガーさんだと言われたのは過去の話、もぉダメだ。
いや、もともとあれだ自分の「記録と記憶」のためのブログだから読み手さんのこと考慮してないか。
だから遅くても平気なんだが、それにしても「書けない」は困る。
リハビリとして書きやすいのを挙げよう。
こういうときにコレクション展はいいなあ。優しくしてくれる。
とはいえあれだ。
「例によって終了した展覧会だが」
これで始まるのでした。
今日は大阪市立美術館のコレクション展「ラブリー!ジャパン」展の感想ね。
特別展のおフランスの感想も半分あげたところでリタイアしたなあ…

大阪市立美術館はもともと市民からの寄贈で成り立っている。
まことに大大阪の時代の大阪市民というのは偉かった。
文化への愛情が深い。それで美術館を造成するのなら、とお宝をどんどこどんと寄贈してくれはったのです。
実際、わたしの知人のお宅も寄贈してはった。
持ち堪えることのできたところはそれが出来、没落したところは売るしかない…

作品名称などはリストを引っ張ってきてます。こちら pdfです。


猫図 Cat 原 在正 筆 四辻公説 賛 1幅 江戸時代 18—19世紀 本館 (田万コレクション)

この眠る猫も久しぶりの再会。可愛くて可愛くて。
2015年の田万コレクション展以来かな。
白地に黒ぶちの可愛い猫で耳の辺り、口元のリアルさ。尻尾も前足も内側に。そしておしりのあたりにそっと咲く花がまた可愛いのですな。
原在中の息子で長生きはしなかった。文化七年に京都で亡くなっている。
この人の孔雀の絵が三井下鴨別邸にある。

小野小町図 Ono no Komachi (One of The Six Immortal Poets)清原雪信 筆 1幅 江戸時代 17世紀 個人
雪信は例のへちま棚の下でくつろぐ一家を描いた久隅守景の娘で、母親の許しを得ずに好きな人と一緒になったそうだ。江戸時代でしかも大叔父は探幽、それでも尼崎で好きに暮らし、よい絵を描いて生きたというのはいいなあ。
この小町も品よく綺麗。

扇面流図屏風 Fans Floating on a Stream8曲1隻江戸時代 17—18世紀 個人
これまた派手にド派手にいいねえ(宇髄天元ぽく言いました)。
金地に色んな絵柄の扇面。唐子もいれば五条橋の二人もいる。

伝 江口君像 Standing Beauty, Attributed to Eguchi Courtesan (Eguchi no kimi)1幅 江戸時代 17世紀 大阪・寂光寺
これはもう近世風俗画に現れる美人図の範疇に入るね。このお寺がいわゆる江口君堂ね。

舞楽図屏風 People Dancing Bugaku狩野永納 筆 6曲1双 江戸時代 17世紀 個人
色んな舞楽を描くあれだ。右は安摩からはじまり、左は青海波から納曾利まで。例のお遊戯みたいなのがやっぱり可愛い。胡蝶の少年が妖しい…

絵入り幸若舞曲 『敦盛』『八島』 Illustrated Texts for Kowaka Dance <Atsumori> <Yashima>2冊 江戸時代 17世紀 本館(細見良氏寄贈)
横長本。
・敦盛の遺体が船に流れ着いた。熊谷から「供養する」という意味の文が添えられている。
・能登守との戦い、佐藤兄弟の活躍などを回想する。
細見良さんて細見美術館の?ありがたいことやなあ。

七福神図 Seven Deities of Good Fortune 狩野休圓 筆 1幅 江戸時代 17世紀 本館
(ウンゲルンコレクション)
ほのぼの。
ところで英文訳みると色々興味深いよな。

伏見常盤絵巻 Tokiwa and her Children in Fushimi   1巻 室町時代 16世紀 本館 (田万コレクション)
これは前掲の猫やんと一緒で田万コレクション展で見たが、ページが違う。

素朴な奈良絵本な描画。色は明るい。常盤母子の流浪と逃亡。たいへん。親切な処もあるのでよかったが…
しかし常盤自身はこの後清盛の寵愛を受けて娘を生み、更には一条大蔵卿の北の方になる。
案外平穏を手に入れてるよね。

化物草紙 Tale of Ghosts 1巻 江戸時代 17世紀本館 (田万コレクション)
「今昔物語」から採ったのを描いているシーンもある。
20巻第七話「染殿后為天狗被嬈乱語」これな。
現代語訳はこちらhttps://hon-yak.net/20-7/

他にも三善清行の引っ越し先の化け物屋敷の話の絵。ちゃんと障子全部に目があるのが芸の細かさ。おばけたちがなかなか個性あるしね。
今の醒泉小学校内に碑もある。あの辺りらしい。
あと「起世経」とやらの中の、閻魔大王が屈強な鬼の獄卒から毎日蹴り上げられたり突き上げられたりするのもあった。
とんだ「鬼灯の冷徹」である。

着物も二領
浅葱縮緬地雪輪模様友禅染小袖 Kosode(Garment with Small Wrist Openings) with Snowflake Patterns scattered on the Light Blue Silk Crape 1領 江戸時代 18世紀 本館
紅綸子地松竹模様匹田絞小袖 Kosode(Garment with Small Wrist Openings) with Pine-tree and Bamboo on Red Satin   1領
江戸時代 17-18世紀 本館
どちらも綺麗。
それにしても面白いのは漢字の羅列と英訳と。この二つの文字列から中身を想像するのも面白い。

2020年夏「フランス絵画の精華」展にゆく その1

2020-08-12 23:36:19 | 展覧会
大阪市立美術館の「フランス絵画の精華」展に行った。
このタイトルといえば1989年夏に京都国立近代美術館で開催されたのがある。
あの展覧会は正式名を「ル・サロン(1667-1881)の巨匠たち フランス絵画の精華」といい、サロンに出品された作品群を集めたものだった。
詳しくはこちら

その時にフランスのロココ、新古典主義、ロマン主義作品を見たのだ。
なので今回の展覧会と方向性は等しい。
そのためになつかしさが湧き出して、この暑い中、コロナも怖いが天王寺へ出向いた。
高校くらいまではこうした様式のはきはきした表現が好きだったのよ、あいまいなものより。
今はまた違うけれど…

今回の展覧会についてはサイトから引用する。
「本展では、フランス絵画の最も偉大で華やかな3世紀をたどります。17世紀の「大様式」と名づけられた古典主義から、18世紀のロココ、19世紀の新古典主義、ロマン主義を経て、印象派誕生前夜にいたるまでの時代です。ヴェルサイユ宮殿美術館やオルセー美術館、大英博物館、スコットランド・ナショナル・ギャラリーなど、フランス、イギリスを代表する20館以上の美術館の協力のもと、油彩画、素描あわせて約80点の名品が集結しました。」

第I章 大様式の形成、17世紀:プッサン、ル・ブラン、王立絵画彫刻アカデミー        

アンブロワーズ・デュボワ (本名 アンブロシウス・ ボサールト)フローラ 油彩、カンヴァス 148×137 東京富士美術館
中央にくつろぐフローラがいて、周囲に4人のアモルたち。花は全て瓶や鉢に生けられている。いずれも灰色がかった青磁。左上にはどこかの門とその周囲が描かれている。
このフローラの姿態をみると、白衣観音のそれを思い出す。艶めかしくも尊い。

ジョルジュ・ド・ラ・ トゥール 煙草を吸う男 1646年? 油彩、カンヴァス 70.8×61.5 東京富士美術館
さすがラ・トゥール、ぼあっと灯りが。松明からキセルの火を採る横顔。襟が高く袖は赤い。「ふーっ」とする口元。

ニコラ・プッサン 55歳の自画像 1649年 油彩、カンヴァス 79.2×65.7 ベルリン国立絵画館
人のことは言えんがおっちゃんである。けっこう満足気。

ニコラ・プッサン コリオラヌスに哀訴する妻と母 1652-1653年頃 油彩、カンヴァス 116×196 レザンドリー、ニコラ・プッサン 美術館

右側にローマ風の被り物の男と懇願する女たち。左端にはアテナめいた女もいる。
ニコラ・プッサンのこういう群衆の絵、好きだな。

ジャック・ブランシャール バッカナール 1636年 油彩、カンヴァス 138×115 ナンシー美術館
バッカスのための祭儀は色々あるなあ。左端には赤目の豹がいる。タンバリン叩く女もいる。かれらに歌舞音曲は必須。

クロード・ロラン (本名 クロード・ジュレ) 小川のある森の風景 1630年頃 油彩、カンヴァス 99×149 東京富士美術館
これは前提として「アモールとプシュケー」の物語があり、捨てられて溺れていたプシュケーが救われたシーンらしい。「どうしたどうした」とばかりに来る人々。ロバもいる。森の右端には小川に至る滝も見える。

クロード・ロラン (本名 クロード・ジュレ) 笛を吹く男のいる風景 1630年代 油彩、カンヴァス 49×39 ナンシー美術館
牛がいる。「アストレ」という物語がブームになってから、牧歌的な恋を描いたものが流行ったそう。牧童と羊飼いの娘の恋。

クロード・ロラン (本名 クロード・ジュレ) ペルセウスと珊瑚の起源 1673年 油彩、カンヴァス 100×127 ホウカム・ホール、レスター 伯爵 コレクション

これは画像小さいからわかりにくかろうが、左に結構「え゛っ」な情景がある。
アンドロメダを救ったペルセウスはメデューサの首を切ってもいて、その首の血から出たペガサスを愛馬にし、メデューサの蛇髪を運ぶペルセウスだが、ちょっと一旦置きまして、とした途端首の血が出てきてあちこちを石にする。
それを見た海のニンフたちが海藻を下敷きにと持ってきたら…あらあら不思議、たちまちサンゴになりました。
というサンゴの由来を語る絵になっている。
右端にはモネがよく描いたエトルタの岩みたいなのがある。
そして中央の水面に映る月。


フィリップ・ド・ シャンパーニュ キリストとサマリヤの女 1648年 油彩、カンヴァス (円形、方形の カンヴァスの四隅 を付彩)114×113 カーン美術館

キリスト「水くれい」
女「え゛っ ああ」
見得が決まったような二人、なにやら阿吽の呼吸まで感じる。
青と黄色の衣の対比もいい。

ピエール・パテル エジプト逃避途上の休息 1658年 油彩、カンヴァス 41.5×61.5 トゥール美術館、ルーヴル 美術館より 寄託
右に廃墟、左に円柱の残り。崩れかけ。その下に一家。
なんとなく武田泰淳「わが子キリスト」を思い出したな…

ローラン・ド・ラ・イール 笛を吹く男のいる風景 1648年頃 油彩、カンヴァス 106.5×131.5 リール美術館
こちらは奥に羊飼い。日本だと十牛図のバリエーションになるのかもしれない。

ニコラ・ミニャール リナルドとアルミーダ 1650年代半ば 油彩、カンヴァス 152×198.5 東京富士美術館
十字軍遠征を舞台にした物語「エルサレム解放」の恋人たち。なかよし。ちんまいアモルもいる。十字軍なのでへいもいるが、赤い鸚鵡がけっこう印象深い。

マチュー・ル・ナン あるいは「ゲームの 画家」 いかさま師(かつて「カード 遊び の人びと」と 呼ばれた) 油彩、カンヴァス 65×81 ランス美術館、ルーヴル 美術館より 寄託
真剣にカード見る男の背後でサマの仲間が合図を送るところ。
あきませんなあ、博打なんか負けるためにやるようなもんです。

ピエール・ミニャール 眠るアモルの姿の トゥールーズ伯爵 1682年 油彩、カンヴァス 91×134 ヴェルサイユ宮殿美術館
ニコラの弟。 これはルイ14世の子で、赤ん坊をアモルに見立てた絵。だかに矢羽も描かれる。
すやすや眠るこの幼子。いわゆる「871069」鼻天向くの子で、こんな小さいうちから既にある種の尊大さが出ている。

ウスタシュ・ル・シュウール 病人たちをいやす聖ルイ 1654-1655年  油彩、カンヴァス 192×126 トゥール美術館
ルイは王様。フランスでは聖別された王様は病人を癒す力を持つ、と信じられていたそう。
これあれだ、金枝篇だな。病人たちは青色がかったような石灰みたいな色。

シャルル・ル・ブラン スブリキウス橋を守るホラチウス・ コクレス1643-1645年頃 油彩、カンヴァス 122×172 ロンドン、ダリッジ 絵画館
戦闘シーンなんだけど、橋を守るというと「遠すぎた橋」とか長板坡とか思い出すのよ。あとロンビエン橋な…

シャルル・ル・ブラン キリストのエルサレム入城 1688-1689年 油彩、カンヴァス 153×214 サン=テチエンヌ近現代美術館、 ルーヴル美術館より寄託
基督は青い衣。群衆は犬連れてる人が多いな。
「駆け込み訴え」のあのシーンが蘇る…

続く。

「江戸風俗人形」の世界に遊ぶ その3

2020-08-10 23:36:04 | 展覧会
つづき。
裏側の躯体


裏口

この時間帯は客もいないし準備もちょっと一旦一休み、という雰囲気がある。

なんのか見えるかな。

花魁の表かなあ。


夏とはいえ今とは違う




こちらは盆提灯も


彦根屏風も

他の部屋には風神雷神図があったから、けっこうここの見世はニセモノでもいいのを置こうとしてるわけだね。

花と花魁


釣忍かな


だるまさんも。


爪きり




廻り廊下


花魁ねえさん




見世先へ戻る



囲碁もできるひと

これは





風呂へ


静かな時間帯、いいなあ。


吉原はサマータイムではないが、世間とは時間を異にしている。
「四ツに出て四ツ前に行くおもしろさ」
外界より半刻遅れるという約束がある。




一枚絵になりそうな。





内証には必ずある。


そういえばかむろの姿を見なかった。