遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う

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久しぶりに遠出した話

2020-09-20 21:23:51 | 旅行
今年は本当にどこへも出かけられないまま九月を迎えてしまった。
ところが今月だけで三カ所の遠出をすることになった。
遠出と言ってもどれくらいからが遠出になるのかがわからない。
以前は毎月東京に出かけていた。
これも遠出と言えば遠出なのだが、必ず同じ新幹線にのり、同じ宿に泊まり、練りに練ったコースで好きな展覧会に出かけていたので、遠出しているという感覚がなかった。
週末のルーティンだったのである。

実際のところ「遠出」は物理的な距離の他に精神的な感性も含まれるようで、自分が「近い」とおもえば「近場」になり「遠い」と思えば「遠出」になるらしい。
わたしの場合、西は三宮元町から明石まで、京都から大津も石山寺、三井寺界隈、奈良は東大寺辺りまで、大阪は市内から堺、高石それと忠岡町までは「近場」でその先が「遠出」になるのだった。
この決まりでいえば、去る6日は大和高田から五条、下市口という「遠出」をし、続いて七日に加古川という「遠出」をしたことになる。
更に十日には名古屋、多治見へ向かうのだ。
これはもう「遠出」のクチ。

そしてそれから更に十日経った20日にようようまとめることが出来た。
こんなにも手間がかかるとはなあ。
己の衰えにため息ばかりよ。

六日はお誘いを受けて大和高田へ向かったが、実は近鉄大阪線はほとんど知らない。
たまたま鶴橋で先生にばったりお会いして道中延々と建物の話などをして過ごして、気づけば到着と言う状況だった。
着いたら雨が降ってきたし、しかも「近鉄一日券」なるものがあることもその場で知ったし。
前日までに日にち指定で購入か。わたしならなんばで買うわけだね。しもたなあ、これがあれば吉野もゆけるやん。
また期間内にいずれ。←行けたらな。

さる方のお屋敷へ向かう。
外観は公共的視界のものだからあれだけど、まあ特定されたらまずいので挙げない。
なにしろご好意で拝見させてくれてはるのですから。
御当主がお年よりずっとお達者な方で、お話も楽しかった。
建物もさることながらこうしたおうちには必ず何らかの美術品があるはずで、実際にわたしが見たところ、いくつか真筆がある。
座敷には長尾甲(雨山)からここのご先祖へ贈られた書が飾られていた。
かれは関西にゆかりの深い人なので、こちらのような由緒あるおうちの方と交流があるのも納得。あとおそらく鈴木華邨の絹に描いた牧歌的なのがあった。
奈良の一刀彫の森川杜園に倣ったと記された白鹿の可愛い木彫があり、見学した皆さんの人気の的。いいねえ。
おじゃまいたしました。

尺土から橿原神宮前駅へ。
この駅は村野藤吾。まあいろいろあるのだけど、いかにも村野な構造や装飾があった。
ここでも貴重なものを拝見したが、それが何かは挙げない。ナイショだ。期待と妄想だけふくらましてね。

駅ナカのうどん屋さんで久しぶりに温いおうどんと助六のセット。こういうのがいちばんええ。いやもうほんまに。ようけてんぷらがのっかってました。ありがとう。
それで同席した…言うてもソーシャルディスタンス守って密にならないわけですが、若い兄さんが機嫌よくぱくぱく食べる様子は微笑ましかったなあ。ええ感じや。

さてここからが謎と言うかわたしにはわからない乗換だった。
ここから吉野口へ出て、同じ構内のJRで五条へ向かったのね。
わたしの持ってる路線図は私鉄しかないので、五条へどう行くのか全く分からなかったが、これはそういうルートなのか。いや考えもつかなかった。
そう、関西は私鉄で大体どこなと行けるので、JRのことをあんまり考えてなかった。

五条は完全に初めてで、ただ仕事柄ここには多少関わりがあるので地図は大体浮かぶ。
浮かぶが実際に歩いたことがない土地なので、見るものも面白く映る。
五条といえば「柿の葉寿司」のたなか。その本拠地。
駅の所に売店もあった。わたしはたなかの柿の葉寿司も穴子寿司も大好き。押し寿司万歳。とかなんとかいうてたら雨やがな。
雨の中を行く。
ついでに書くと、わたしがたなかを知ったのはもう随分昔の子供時代で、母親の行きつけの喫茶店のママさんが五条の出で、その人から貰ったのが最初。
後に知ったが、楳図かずおの従姉妹だそう。それで「まことちゃん」の「なのらー」などの台詞が実は五条辺りの方言だと知ったのらー。

五条新町へ。ここらは古い民家が軒を並べていて、ここだけを散策するのも面白そう。今度じっくり楽しみたい。
日本一古い民家へ。これは凄い。非公開だがチラシもらった。
1607年てか。うわーッという感じ。わたしは圧倒されたよ。
それにしてもこういうのが残っているのは凄いな…
街並みをみると丹波篠山を思い出させるところがあった。
冬に丹波へ行くのも楽しい。

そしてその日は最後に下市口へ向かった。
「義経千本桜」の「弥助鮨」へ向かったのである。
釣瓶鮨の「弥助」長らく憧れていたが、遠いので諦めていた。
こんな機会がなければ行けないままだった。

ああ、ここが「弥助」か。「いがみの権太」の実家かぁ、という感慨がある。
ここについては後日また別項でまとめたい。
古い料理旅館らしい趣があるが、のちに49代ご当主からのお話も聞いて色々と納得がゆく。
過疎化がひどいのだ。
来るのは遠いお客であり、常に誰かが来続けるというところではないのだ。
その為に完全予約制で、お運びは近所のご婦人方を臨時雇い。
それから話が滑り、笠置の「笠置館」が現在ではほぼ廃墟だと知り、暗澹たる気持ちになる。

天然アユ定食をいただくが、アユのウルカを集める話などを聞き、天然アユというものはつくづく贅沢なものだとも思う。
色々おしゃべりも盛り上がり、たいへん楽しく過ごし、ついに解散時間。

タクシーはここまで今日は来ないようで、徒歩15分ばかりで下市口に着くと言うので皆さんで歩く。
吉野川の流れは暗くて見えず、対岸の遠くにぽつぽつと人家の明かりが見える。
なにやら物悲しいほどの過疎である。
一人でここを歩けと言われるとわたしはたぶん泣くだろう。
延々とおしゃべりしながら歩くから、まだ神経も保てるのだ。

特急と急行の時間差は大したものではない。
面白いのは先着の特急に乗り込んだのが全員男性で、女性は全員が後の急行に乗ったことだ。
まあ当然な現象かもしれない。よっぽど急いでいるのならともかく。
そしてこの車内でも人が少ないのをいいことに延々としゃべり倒していた。
自分らの持つよい建物のデータを見せ合ったり情報交換をしたり。
それでようよう阿倍野についた。
以前明日香ツアーをした時も思ったが、意外にこの線は速いな。
これならなんとか個人でも吉野に出かけられる気がする。

下市口には今回が初めてだが、吉野山には一度子供の頃に行ったことがある。
家族親族ともどもでマイクロバスを借りて出かけたのだ。
懐かしい話。一泊してそれから談山神社に行って笛を買ってもらったことだけ覚えている。

翌日は加古川である。
加古川というところは意外と凄い近代建築が隠れている。
今回は地元の有名企業の社宅へ向かった。
これについてもどこかということは明確にしない。
ここでも隠された名品をみる。ほとんど崩落寸前だが、なんというか「残んの美」という風情である。

こちらはちょっと見かけたよい屋根。
それから以前にも訪ねた加古川図書館だが、どうやら今は使われなくなってしまったらしい。暗い気持ちになる…

さる実業家の方の邸宅へ向かう。
成城学園で見学したような素晴らしい邸宅で、個人邸でなくば大いに宣伝したくなるような名建築である。
そしてこちらのおうちの方がとても親切で、色々とお世話してくださったのでした。
ありがとうございます。ご厚意に感謝。

帰りに以前美味しかったケーキ屋さんに行ったらダメになってたなあ。残念。
それで西川パンの直売でちょっとばかり購入して帰阪。
三宮までJRで出てそれから阪急。この日もたくさんおしゃべりしたなあ。
やっぱり話が合う人々とお話しすると気分も上昇する。

さて十日。
この日はかねてからの約束で多治見へ。
JR東海ツアーズの「Gotoキャンペーン」に乗って名古屋までひかり号往復ブラスαのお得なチケットで4300円余。助かるなあ。
同じ車両に一人、別な車両に二人友人がいて、名古屋から中央線に乗り換えるホームで集合。
よしよし。
そこから多治見へ。
昨日、午後5:16
タクシー乗ってモザイクタイルミュージアムへ。
ここもまた詳しくは別項で。
藤森さんらしい外観とか階段とか構造で、なかなかに楽しい。
そして展示物はもとより好ましい。

近所の笠原神明宮にも寄った。ここにも立派な陶板がある。
狛犬は日露戦争の戦勝記念、鳥居は大正のご大典記念。
けっこう地方ではこういうのあるね。

バスで駅へ戻る。ランチ場所探すうち今日の講座の先生が向こうから「おーいおーい」。
五人でイタリアンへ。
これがなかなか美味しかったね。

それから地下道くぐって集合場所のバスターミナルに着いた瞬間、まさかのゲリラ豪雨。
いやもう滝としか。凄い風雨、スコールだぜこれ。
タクシーに分乗して神言修道院へ。
着いたら雨も止んだ。いやいやこれはよかったが、あの雨は何なんだ。修道院は実のところ入れず、教会と宿泊施設やブドウ園などを見て回る。
実に素敵な教会で、パッション(受難)絵のほかにキリストの生涯の様々なエピソードを壁画にしたものも展示されていた。それを見るのがなかなかに楽しい。
天井の様子もいい。内部撮影禁止なので字だけでお伝え。
おお、天にまします父たる鳩が。
裏庭にはルルドの泉も。

ログハウスには大天使たちの名前が付けられている。
ショップではここの葡萄酒から作られた寒天ゼリーとミニガレットなど購入。
修道院特製のお菓子、好きなんですよ。

さてタクシーに来てもらう。とうてつタクシー。東鉄。饕餮ではない。
で、虎渓寺に向かう。
…かなり遠いな。
黒門で下車。
横の川が水流増して早瀬になってる。かつてカナダで見た川とよく似ている。
ここのお寺については詳しく知らなかったが、後で調べたらわたしの大好きな夢想国師が開山なのか。
それでお庭が好みなのかも。
信長塀もあるね。もう早や木によっては紅葉始まりつつある見受けられる。
いいねえ。

いい気分で再びタクシーをたのむ。とうてつタクシー。
三人目の女性運転手。所属五人のうち三人に当たったそうです。
エキナカでちょっとお茶。ほっとするわ。
名古屋へ戻り、わたしはみんなより一時間速く帰るので、高島屋へ。
あーっ浪越軒ないやんーっがーん…
赤福カフェがある。氷赤福食べたい…

ということで帰宅。なかなか疲れましたが楽しかったわ。
やっぱり遠出すると気分が晴れるわ。