今井啓子さんの「ファッションのチカラ」を読みました。
今井さんは、文化出版局「ハイファッション」編集部を経て、高島屋に入社し、ファッション・コーディネーターとして22年間勤務されました。1985年ニューヨーク大学大学院でウエルネスを学んだ後、資生堂に入社、1990年ザ・ギンザ取締役商品企画室長・部長として、活躍されました。高島屋、ザ・ギンザ時代に、ピエール・カルダン、ウンガロ、ジェフリー・ビーン、ティエリ・ミュグレー、アズディン・アライア、ジョン・ガリアーノ、アン・ドゥムルメステール、マルタン・マルジェラ、アレキサンダー・マックイーン、プラダコレクション、ヴィヴィアン・ウエストウッド、マイケル・コースなどのデザイナーコレクションを日本に初めて導入されたそうです。文字通り日本のファッションの最前線で活躍されてきた方です。
本の前半は、上記のご自分の経歴をなぞる形で、書かれています。なので、デザイナーの名前やファッション用語(全てカタカナ)が「これでもかっ!」ってくらい並びます。普通これだけカタカナが続くと、私は頭が痛くなるタチなんですが、これは全然OKでした。我ながら現金なヤツと思いながら、ワクワクしながら、楽しく読むことができました。
このテの本は好きなのでよく読みますが、このテの本に共通しているのが「私は、日本人で初めてナントカカントカ…」「私は、フランス人の中でたった一人の日本人としてナントカカントカ…」というような記述です。それと、必ず、有名デザイナーといっしょの写真も掲載されています。おそらく、そういう自己主張をしながら、ここまで来られたので、こういう表現になるのだと思うんですが、ワタクシは何だか“ちょっとイヤミ”って思ってしまうんですが。
後半は、打って変わって、現在のファッションに対する疑問と危惧を書かれています。今井さんは、ザ・ギンザを退社後、ユニバーサルデザイン、ユニバーサルファッションに携わっていらっしゃいます。ファッションは若い人だけのものではなく万人のものであるという意識をもって、活動を続けられており、この本もファッションに夢中の若者に向けて発信したいという思いから出版されたそうです。
確かに、このちくまプリマー新書は、若者向け(というよりもジュニア向け)の新書だそうですが、実際若者が読んでいるのかどうかは?です。まず、このワタクシが読んでいますし、読むきっかけを与えてくれたのが新聞の書評欄でしたが、その書評を書いてらしたのも大人の方でした。本書の前半のファッション史の部分は、私ぐらいの年代の人が「そうそう、こういうの、あったよね…」と懐かしみながら読むような内容に思えましたが。そういう意味では、自分の若い頃の“古き良き”時代を思い出させてくれるHappyな本でした。↓本の装丁もオシャレでステキでした。