福岡発 コリアフリークなBlog

韓国や韓国語に関するオタクの雑学メモ。韓国映画はネタバレあり。 Since 2005/9.14

ピ(RAIN)の怪

2007年05月31日 |  〇文化・歴史

韓国の新聞(電子版)を読みながら、ずっと不思議に思ってきた
ことがある。


△ピ(RAIN):ネイバー人物情報

それは日本やアメリカはもとより韓国国内においてもこれといった
ヒット曲もない「ピ(RAIN)」という男性歌手が世界的なスターとして
活躍している事を伝える記事のあまりの多さについてであった。

韓国メディアによれば日本でも大人気の韓流歌手ということに
なっているが、日本人「ヲタク」にとってはどこか遠い別の国の
話にしか思えない。

世界的な韓国人スターを欲する韓国メディア(韓国人)の願望が
生み出した「怪物」のような虚像が、ピなのではないかと薄々
感じてはいた。

今日、「ヲタク」が感じている「ピの謎」を解く上で大きなヒントを
提供してくれそうな、かなり辛口の記事を目にした。

一部を翻訳練習し記録しておく。なお、紙面の都合で原文の
引用は省いた。


△「The No.1 Superstar in Asia」(ピ公式ホームページ)

・・・・・・・・・・・・・・

■ [再刊記念 特別企画] 
果たしてピ(RAIN)は世界のトップスターなのか
(ヘラルド経済新聞 5月30日)

これからは世界の目で韓国を見よう...<1>

・タイムス誌が選定する「世界で最も影響力のある100人」の
インターネット投票で1位に輝きながらも最終発表の名簿から
除かれるというハプニング

「井の中の蛙」的な価値観、盲信的な愛国主義、一方向に流され
安い病的な集団主義文化の典型的事例

・「ワールドツアー」に乗り出したピは、本当に「ワールドスター」
なのか。

ピが立っている韓国の地は異常に熱く、彼がはじめの一歩を踏み
出そうとしている世界は冷たい。今まさに世界市場のドアをノック
しようとしているピは、まだ単なる韓国の歌手ピであるに過ぎない。

しかし、韓国社会はピを世界で最も影響力のある人物1位に
押し上げた。「進行形」のピをいち早く「ゴール」させてしまった形だ。

世界の人々は大げさな空騒ぎに浮かれる韓国の姿をどんな目で
ながめるのだろうか?ピという一つの現象で韓国社会を切ると、
その断面がはっきりと姿をあらわす。「世界進出」を叫びながら、
その実、世界の視点に立つことを拒む社会。「世界の中の韓国」
ではなく「世界の現実を見ようとしない韓国」は、自らが積み上げた
壁の中に閉じこもっている

ピは、世の中を自分だけの物差しで判断しようとする「井の中の
蛙」の典型的な事例だと言える。そこには盲信的な愛国主義や
民族主義、一方向に流されやすい病的な集団主義文化が一つに
融合
している。

こうした社会の雰囲気は無限の可能性を秘めた歌手の活躍の
幅をむしろ狭めてしまう。世界1を達成した「奇跡」に歓喜する声が、
たちまち自嘲に転じてしまうしかない理由がここにある。

2006年2月、ピはニューヨークのマディソンスクエアーガーデンで
5000名余りの観客を前にコンサートを開きパフ・ダディーとも
挨拶を交わした。8月にはBMWの広告映画にも出演した。年末
にはタイムス誌が発表した「2006・世界で最も影響力のある
人物100人」の一人にも選ばれた。インターネット投票で圧倒的な
1位を占めた結果だ。

ピは、2007年の今年も予想にたがわず「世界で最も影響力の
ある100人」を選ぶオンライン投票で1位に輝いた。しかし、
今年は最終名簿から除かれてしまった
。権威あるタイムス誌が
オンライン投票の結果を一つのハプニング程度に扱った理由とは
何だろう?

その直後、アメリカの人気トーク番組の司会者が自分の番組で
ピを侮辱するような内容の発言をし関心を呼んだ出来事があった。
韓国人ファンとしては不愉快極まりない話だが、冷静に振り返って
見れば、彼は韓国人の過剰なピ賛美を一つの「ブラックコメディ」
として茶化したとも考えられる
。考えてみれば韓国社会が大騒ぎ
しながらほめたたえたピの海外コンサートも、真の世界的スターの
公演とは呼べないものだった。アメリカやオーストラリアでの
コンサートで座席を埋めた観客の90%は、韓国をはじめ中国、
ベトナム、マレーシアなどアジア系の人々だった。そこで、一部には
「ホールを借りただけのアメリカ公演」という厳しい指摘もなされた。

オーストラリアのシドニーで開催されたコンサートのチケットは、
ビヨンセなど世界トップクラスのアーティストの3倍近い値段だった。
現地の人々は「一体、ピとは何者なのか?なぜ、そんなに
チケットが高いのか?」といぶかしんだ。結局、定員2万1000人
程のエイサー・アリーナの座席は半分くらいしか埋まらなかった。
現地の反応も冷淡なものだった。韓国系住民らの大半は「誇らしい
ことではあるが、理解ができない」との反応を示した。CDがたくさん
売れたわけでもなく、世界的にヒットした曲など1曲もない

大衆歌謡の評論家であるイム・ジンモ氏は「韓国でもピのヒット曲を
挙げろと言われれば返答に窮するのが実情
だ。アメリカでは
1枚のCDも出していない
し、日本では3枚のシングルと1枚の
アルバムを出したが、販売量はすべてあわせても5万枚を少し
超えた程度
だ」と語った。しかし、「韓国を飛び出し世界に進出する
韓国人のイメージを代弁してくれているピ
は、アジアのスターとして
世界的スターに飛躍する可能性を秘めた韓国のトップスターで
あることは間違いない」と大きな期待をかけている。

ピの育て親とも言えるパク・ジンヨンでさえ「ピはまだアジアの
スターの段階で、世界的大スターという『バブル』はマスコミが
作り出した虚像
に過ぎない」と認めている。彼は「ピ自身もまた
『ピがアメリカを征服した』などという話を信じてはいない」と
述べた。

ピは、今まさに世界市場のドアを叩いている段階だ。すでに彼は
韓国人の「集団的錯覚」と「狂ったように打ち続ける連続クリック」
の力でオンライン投票世界1位という手放しで喜んでばかりは
いられない名声(?)を手にしている
。しかし、ピは依然として世界
市場では何らの評価も定まっていない新人だ。ピは根気強く
努力しながら世界進出を試みている。しかし、いつのまにか大きく
膨らんだ「バブル」は、むしろピの足を引っ張ることにつながる。
実際よりもはるかに巨大に拡大された絵が、逆にピを小さく
見せてしまうのだ。

合理的な認識と常識的な判断が欠如した虚像の実体は、2002・
ワールドカップベスト4進出以後も如実に現われた。日韓共催
サッカーワールドカップは、韓国民の集約された力と溢れる
エネルギーを見せつけた。肩を躍らせながら言葉どおりの「神話
創造」を成し遂げた。しかし、ベスト4進出後、再び、もとの位置に
戻って冷静に自身を振り返る作業は省略された。

ワールドカップの直前、韓国サッカーのFIFAランキングは40位から
22位にまで急上昇したが、昨年、7年ぶりに50位以下に落ちた。
現在も51位にとどまったままだ。

わずか5年前のワールドカップベスト4は蜃気楼だったのか。客観
的な数字は世界50位を指しているのに、韓国は依然として
世界4強の思い出の中であえいでいる。

韓国人プレミアリーガーに対する評価も全く同じだ。パク・チソン
(マンチェスター・ユナイテッド)、ソル・ギヒョン(レディング)、
イ・ヨンピョ(トートゥナム)など、韓国では最高の評価を得ている
これらの選手に対し、イングランドの公式統計サイト「エクティム・
スタッツ」はソル・ギヒョンには103位、パク・チソンとイ・ヨンピョには
200~400位のランクをつけた。

ランクが絶対的な実力ではないが、最小限の客観性は保たれて
いる評価だ。それを無視すれば、冷静な現実認識が不可能になる。
現実を知らず処方の必要性を感じなければ治癒の方法が
見つかるはずもない

問題は性急な国民性と1位しか目に入らない価値観、過度の
愛国主義と集団主義的な文化だ。世界を相手に戦う戦士たちに
送る過度な愛情と賛辞は「抑圧された文化の逆説的な噴出」、
あるいは「根深い事大主義が生み出した歪んだ産物」と見ることも
できる。

-略-

パク・ジンヨンはピが彼の目に留まったのは「実力よりも情熱が
見えたからだ」と語った。今、世界に向かって第一歩を踏み出した
一人の青年に必要なものは世界レベルの実力だ。そして、我々が
なすべきことは彼が自分の夢を叶えていく過程を世界の目で
冷静に見守ることだ。その青年とはピであると同時に、まさに
韓国と韓国人自身でもあるのだ。

(終わり)

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