『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

翻訳   朴ワンソの「裸木」49

2014-01-04 00:44:16 | 翻訳

 

Dsc03481


翻訳   朴ワンソの「裸木」49<o:p></o:p>

 

154頁~1578行目<o:p></o:p>

 

「中国料理は駄目?」<o:p></o:p>

 

「私、中国料理はジャジャンメンしか食べられなかったんだけど…別なものにして」<o:p></o:p>

 

「実を言うと、実は僕、今晩もう一つ約束があった。兄と兄嫁が今中国料理店で待っていて」<o:p></o:p>

 

 彼がとてもきまり悪がっている成り行きに、私は美食への望みを譲ることにした。<o:p></o:p>

 

「構わないわ。明日おごってくれればいいことで。じゃ、私一人で行くから気にしないでね」<o:p></o:p>

 

「いいや、そうじゃないから」<o:p></o:p>

 

 彼は私の袖を慌てて捕らえた。<o:p></o:p>

 

「ミス・リが必ずいなければならないことなんだ。実を言うと、ミス・リ、怒らないで。実を言うと、ミス・リと僕が兄夫婦と一緒に食事をする約束をしてしまったんだよ。ごめん、僕が勝手に決めて。でも約束を反故にしないでほしい。」<o:p></o:p>

 

 彼は幼い子供のように袖にぶら下がりながらせがんだ。<o:p></o:p>

 

「反故にすることはないけど、私がどうしてその席に加わらなければならないの?」<o:p></o:p>

 

「それが成り行きだ。泰秀らしくないことだと、心配しないで一緒に行ってくれ」<o:p></o:p>

 

「泰秀らしくないことなら、別に私なんかが抜けても関係ないんじゃない?」<o:p></o:p>

 

「ところが、実はそうじゃないんだ。兄、特に兄嫁がミス・リに会えたらと言って。それでなんで…それでそうすることになったんだ」<o:p></o:p>

 

 彼は依然として私の片腕を捕らえたまま、恥ずかしくなるほどあたふたした。私はだんだん面白くなった。<o:p></o:p>

 

「どうして? どうしてそのご夫婦が私に会いたがるの? 慌てないで、詳しく話してみて」<o:p></o:p>

 

 私はすぐに逃げ出すような姿勢をもどして、彼の横に並んで歩きながら尋ねた。<o:p></o:p>

 

「兄嫁はね、とても優しい人ではあるんだけど、ちょっとお節介で、いつも他人の心配で心安らかな日がないんだよ。特に僕のせいで夜も満足に寝られないんだ」<o:p></o:p>

 

「ありがたい方ね。それでどんな悪い事をして、義姉さんがそんなに安心できないの?」<o:p></o:p>

 

「そうじゃなくて、僕が独身で自炊生活をすることを、必要以上に心配して、野次馬が女がいると言うのか、ひどく嫌がっているんだ。それでね…」<o:p></o:p>

 

「それで?」<o:p></o:p>

 

「ごめん。それでね。僕は女がいると、以前から将来を約束した閨秀がいると何故か嘘をついてしまったんだ。僕はそれでうまく行くだろうと思ったんだけれど、そうはならなくて。やいのやいのと会わなければと言うんじゃない。会っても見合いになると思わずに、夫の実家の家族とのただの初対面というのか。確かにそうだけど、すまない、ミス・リはそのまま何も言わずに僕の横にいるだけでいいんだ。是非来てくれ。どう?」<o:p></o:p>

 

 あまりすっきりしない、よく聞く話のあらすじのようだった。私はあくびをして、肯いて承諾してしまった。<o:p></o:p>

 

「ありがとう。別に難しくないだろう。僕の横にいてくれればいい。そして、兄嫁はちょっとちょっとおしゃべりな人だから、ミス・リは煩わしいだろうけど、適当に笑いながら別なことを考えながら、聞いてだけいて」<o:p></o:p>

 

 私はまた肯いた。<o:p></o:p>

 

「それでだけど、あまりに僕によそよそしくはしないで。愛し合う間柄らしくしてくれないと」<o:p></o:p>

 

 私がとにかくうなずいてやるので。彼はだんだん御しやすくなった。私は笑いながら店の硝子窓と白っぽい空を見て、もう一度あくびをした。<o:p></o:p>

 

 彼はしばらくして明洞の裏通りの福順楼という中国料理のガラス戸を押した。<o:p></o:p>

 

 福順楼という田舎の娘のような名前におのずから笑みがこぼれたが、これからこの建物の中で私が経験することを、推測させる名前だった。さほど洗練されないまま人情味と無邪気さをたっぷり添えた、少しこっけいで少し退屈でもあるものを。2階への狭くてぎしぎし音を立てる階段を上がる時、彼は目をしかめて、私が腕を掴めるように自分の肘を私の方に突き出した。私は彼の腕に捕まって階段を用心深く上って、そのまま靴とゴム靴が並んでいる部屋へ入った。年配で落ち着いた村の地方書記のように、少し重苦しく臆病そうな彼の兄は座ったままで、兄嫁らしい女性がばたばたと立ち上がって、<o:p></o:p>

 

「なんとまあ、坊ちゃんも…」<o:p></o:p>

 

と言いながら、しきりにわけもわからずに笑い続けた。私は腕を組んだ姿を彼らが十分に見たらなあと思った時に、組んだ腕を解いて、2回丁重に腰をかがめた。そして堅苦しく優しく笑いながら、粗末な座布団の上に淑やかに膝をついて座った。<o:p></o:p>

 

 泰秀の兄嫁は口が大きい上に、平たい前歯が前に出っ張って、心が限りなく良さそうだけれど、泰秀の言葉通り並大抵のおしゃべりではなさそうだった。<o:p></o:p>

 

「なんとまあ、坊ちゃんも。本当にこんな女の子がいるのね。私が見ても信じられない、あらまあ」<o:p></o:p>

 

「どうして小母さん、気に入りませんか」<o:p></o:p>

 

「まあ、坊ちゃんも悪いことになるという話が。とても不思議なのよ。黄家の堅物の家庭では、両親が娶せてくれなければ、生前独身男の亡霊になるのは免れられない堅物だけが集まったと思うので…坊ちゃんはいずれにしても恋愛をして、なんとまあ、あなたも見たでしょう? まあじれったい、あなた」<o:p></o:p>

 

 彼女は小さく小心者の目をぱちぱちさせて座っている夫の膝をつねるために騒がしく振る舞った。<o:p></o:p>

 

「ところで年齢は本当にいくつなの? まず表面上の相性を合わせなければ」<o:p></o:p>

 

 彼女は節くれだった指を立てて、既に干支を名指す準備運動までする。<o:p></o:p>

 

1932年生まれです」<o:p></o:p>

 

 私はそれとなく意地悪になった。計算が鈍そうな彼女が、私の出した年から私の年齢を算出して、また出した年から干支を指折り数え上げていたら、かなり長い時間がかかるはずで、私はその間も黙っていたかった。しかし、私の目論見は外れた。彼女は、干支占いどころか、私の年齢も指折り数えず、両親が生存しているかとか、学校はどこまで出たのかとか、ほとんど答えを待たずに、絶え間なく質問を浴びせた。<o:p></o:p>

 

「この子が料理を注文しないと…」<o:p></o:p>

 

 初めて彼の兄が口を開いた。泰秀が及び腰で立ち上がると、<o:p></o:p>

 

「おやまあ、こっちの気持ちもちょっと考えてよ」<o:p></o:p>

 

と言うと、手を騒々しく打って人を呼んで料理の注文まで、彼女が一手に引き受ける有様だった。

                        ー  続  -

★ランキングにクリックをお願いします☆

にほんブログ村 本ブログ 本・読書情報へ

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。