『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想226  ピリオド

2017-12-14 14:28:09 | 小説(日本)

「津軽平野」の画像検索結果

読書感想226  ピリオド

著者      乃南アサ

生年      1960年

出身地     東京

出版年     1999年

出版社     (株)双葉社

☆☆感想☆☆

 題名の「ピリオド」は文に区切りをつける符号である。

写真家の葉子が冬の津軽平野で衝撃的な廃屋を見ることから物語がスタートする。2階建ての棟割長屋の真ん中の一所帯分の幅だけ、1階も2回も外壁が剥ぎ取られている。隣家は人が住んでいるが、その一角だけ鋭い爪でえぐり取ったようになっている。その家は連続殺人犯の実家だった。東京に帰った葉子のもとに長野から高校3年の甥の彰彦が塾の特別講習のために上京してくることになる。バツイチの葉子は杉浦という雑誌編集者と不倫関係にあるが、彰彦の上京中は葉子の自宅に来ないように話をつける。そうこうするうちに葉子の身辺は騒がしくなる。葉子も葉子の周囲の人々もそれぞれがそれぞれの人生のピリオドを打つ時期を迎える。

葉子の兄は余命わずかで入院中、その妻の志乃、彰彦の妹の理菜、杉浦の妻。そして今は住む人もいなくなった故郷の実家が葉子の目に津軽平野で見た廃屋と二重写しになってくる。

 ものを捨てること、とりわけ故郷の家を解体するのは、思い出も捨てることだし、わびしいというのがよくわかる。一方、人が人との関係に区切りをつけていくことには、あまりわびしさはなく、新しい関係への希望が溢れる展開になっている。殺人事件が起きたりして、ミステリー仕立てかなと思ったが謎はあまりなく、人が再生する物語になっている。

 一気呵成に読ませる筆力はさすがだ。


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読書感想225  地のはてから

2017-12-03 16:36:50 | 小説(日本)

 「知床半島」の画像検索結果知床半島

読書感想225  地のはてから

著者      乃南アサ

生年      1960年

出版年     2010年

出版社     講談社

感想・・・

 第1次世界大戦の好景気の時期から第2次世界大戦の敗戦から数年の時期までがこの小説の時代背景である。主人公は2歳で福島県の農村から北海道の知床半島にわたった開拓農民の娘、とわ。明治初期から北海道の開拓は始まっていて、大正年間に入ってから入植する土地は、明治期に入植した土地に比べて格段に不利だろうとは想像がつく。しかもそういう不利だとわかる土地に入植してくる人々は、困窮して経済的に追い込まれて、開拓地に行くしか生きるすべがないと思いこんでやってくる。とわの父親もそうした人だった。裕福な農家の四男坊として生まれた父親は、農業に身を入れず上京し、第一次世界大戦の好景気で株で大儲けをした。それに味をしめて本家から資金を集めてさらに大々的に株取引をした。しかし好景気はいつまでも続かず株取引に大失敗して、多額の借金を負うことになった。本家に資金を返済することができないだけでなく、本家の兄の名前で借金までしていた。そこで、すべての借金を踏み倒して、家族を連れて夜逃げをすることにしたのだ。一家は知床半島の宇登呂の近くのイワウベツへ行く開拓団に入って北海道に渡った。とわは4歳年上の兄、直一と母つね、父の作四郎と一緒に未開の森林を切り開くことになった。

 森の中でとわは三吉という少年に会う。三吉から山ぶどうやクルミなどの木の実の採り方を教えてもらう。三吉は直一が通う分教場へは行かない。とわはその理由がわからない。大きな不幸がとわの身の上に襲い掛かる。雲霞のごとくバッタが発生し、開拓地の貧しい農作物を根こそぎ食い尽くしてしまう。食べ物がないとわたちに、三吉が祖母を連れて現れ、オオバユリの根から澱粉の取り方を教えてくれる。宇登呂の町で漁の手伝いをしていた作四郎が亡くなり、とわの母は再婚する。鳥取から入植していた義父たちとは言葉がちがい、料理の味付けが違い、軋轢が多くなる。そんな中、兄の直一は、飢え死にするかどうかの瀬戸際で、好き嫌いの余地などない、ただ生き延びるんだととわに語り、終生とわはその言葉を肝に銘じて生きていく。

ものすごく貧しい開拓地の生活だが、宇登呂では魚がふんだんにとれるので、無料かただに近い値段で手に入ったのではないだろうか。農村部は貧しくても、漁村の豊かさが人々の生活を支えていたのだろう。イワウベツは農業としては適していない土地でも、温泉が湧いていたり、山の幸が豊かだったり、なんとも言えない自然の素晴らしさを感じる。また、とわの家族の言葉が福島県の神俣方言で、義父の一家が鳥取弁なので、うちの中の地域対立の雰囲気が伝わってくる。

「おがちゃ(お母さん)」の語る一節。

「何でも外国の品物をあぎなってる家だど。そこで守り子、探してんだど。んでなぁ、行ってもれぁでぁんだ。おめに」

義兄の新造の言葉。

「この、だらず(馬鹿)が。みんなで力をあわせんかったら、どげするだっ。もう、おとやんはおらんだぞ、おじやんだって、こげなだし。もしも今年、畑がええ具合にいかなんだら、せっかくここまででかいにしてきたって、どげにもならんことになるだけえなっ」

知床はアイヌ語で地の果てという意味で、題名になっている。この主人公のとわは「ニサッタ、ニサッタ」に出てくる片貝耕平の95歳になる祖母だ。 


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読書感想224  ニサッタ、ニサッタ

2017-11-25 22:37:02 | 小説(日本)

ニサッタ、ニサッタ(上) (講談社文庫)

著者      乃南アサ

生年      1960年

出身地     東京

出版年     2009年

出版社     (株)講談社

受賞歴     第1回日本推理サスペンス大賞優秀作

        「幸福な朝食」

        第115回直木賞「凍える牙」

 ☆☆感想☆☆

 この物語は前半は東京を舞台にし、後半は北海道の知床半島の斜里に舞台が移って行く。故郷を離れて一人暮らしの主人公はふとした弾みから正規雇用から、非正規の派遣社員の身分に転落し、さらにそこからもはじき出され、借金まみれになって新聞販売店に転がり込む。そんな主人公の片貝耕平は、故郷の知床半島の斜里から、東京の無名の大学に進学し、初めて就職した先の上司に大学のことで馬鹿にされ、2か月でやめてしまう。その後勤めた会社は社長と経理部長が夜逃げをして倒産。派遣社員としていろいろな所に行くが、うまく行かず、小学生の学習塾で安定した職を確保したと思ったら、インフルエンザに罹って失職してしまう。新聞販売店にはいろいろな所から流れてきた、わけありの男たちがごろごろしている。借金の肩代わりをしてもらった代わりに、そこで住み込みの新聞配達員として働く毎日。店主には将来新聞販売店の経営者にならないかとも誘われている。東京ドリームは新聞販売店の経営者か。そこに沖縄から若い女の子が入ってくる。 「ニサッタ」はアイヌ語で明日という意味だそうだ。明治時代もそうだったが、北海道は敗者に寛大で、再生させる土地柄だ。戊辰戦争で敗れた伊達家や会津藩の士族たちが入植して艱難辛苦の末に成功している。この小説でも東京でもみくちゃにされた若者が再生する土地として描かれている。まだ、チャンスもあり、人間的な温もりが感じられる土地なのだろう。


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読書感想223  憂いなき街

2017-11-12 19:52:14 | 小説(日本)

 

憂いなき街 ハルキ文庫/佐々木譲(著者)

読書感想223  憂いなき街

著者      佐々木譲

生年      1950年

出身地     北海道

出版年     2014年

出版社     (株)角川春樹事務所

☆☆感想☆

火曜日から始まって土曜日までの5日間の出来事。舞台は大通公園で開催されるサッポロ・シティ・ジャズという夏の音楽イベント。そこに参加するために札幌に来たジャズバンドのピアニストの安西奈津美とサックスの四方田純。そして四方田を追っかけるファンの女たち。ジャズ・バーを営んでいる元警官の安田、ジャズ愛好者の津久井巡査部長。そして女性の遺体が公園の池で発見される。

警官の恋の葛藤も描かれている。恋した相手が犯罪者だったら、どうするか。

夏の大通公園という舞台装置が楽しく、ジャズの響きが絶えず聞こえてくるようだった。


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読書感想222  廃墟に乞う

2017-11-02 22:09:13 | 小説(日本)

廃墟に乞う/佐々木譲

読書感想222  廃墟に乞う

著者      佐々木譲

生年      1950年

出身地     北海道

出版年     2009年

出版社     (株)文藝春秋

☆☆感想☆

ある殺人事件の捜査のせいで精神に大きなダメージをうけた、北海道警察本部の仙道孝司は、自宅療養を命じられ勤務に復帰できる日を待っている状態だ。警察手帳もなく、捜査権のない仙道に、被疑者にされている者やその関係者、担当警官からも、警察が見落としている点を洗いなおしてほしいという依頼が飛び込んでくる。真相を明らかにする仙道の活躍を描いた短編6編。

1.  オージー好みの村

舞台はニセコ。オーストラリア人が殺人の容疑をかけられている。

2.  廃墟に乞う

13年前に担当した札幌の娼婦殺しと同じ手口の殺人が千葉で発生。娼婦殺しの犯人は釈放されていた。犯人の故郷は夕張。

3.  兄の思い

殺されたのは道東の漁港で町一番の有力者の漁師で、殺したのが町で一番人望のある若い衆。なぜか。

4.  消えた娘

豊平川の河川敷でジョギングをしている仙道に声をかけた男は娘をさがしてほしいという。

5.  博労沢の殺人

日高地方の競走馬生産牧場のオーナーが殺された。今回の被害者は17年前の殺人事件の被疑者だった。

6.  復帰する朝。

帯広で妹に殺人の容疑がかかっていると姉から仙道に助けを求める連絡が入った。 


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