著者 北方謙三<o:p></o:p>
生年 1947年<o:p></o:p>
出身地 佐賀県唐津市<o:p></o:p>
初出版 「文藝春秋」<o:p></o:p>
2001年11月号~2003年4月号<o:p></o:p>
単行本出版 2003年<o:p></o:p>
出版社 (株)文藝春秋<o:p></o:p>
<o:p> </o:p>
☆感想★<o:p></o:p>
大塩平八郎の乱に至る陰謀や思惑、友情や大阪の人々の様子を、江戸から来た武士の目を通して描いている。天保の大飢饉の時代、大阪でもその影響は出始めていた。米が市中に出回らず、庶民に口に入らない。江戸の旗本の庶子である光武利之は御庭番を統括し勘定奉行まで務めた父の村垣定行の命で大阪に来る。人の動きや物の動きを見てくるようにと。大阪では知り合いの矢部定謙が奉行をしている大阪西町奉行に寄宿することになる。矢部の元にいろいろな献策を持ち込んでくる大塩格之助という東町奉行所の与力に興味を持った利之は、格之助に剣術を指南することになり、親しくなっていく。格之助は名与力だった大塩平八郎の養子で隠居した平八郎の跡を継いでいる。奉行に持って行く献策は平八郎のものであり、それを取り次ぐのが格之助の役割だ。洗心洞という平八郎の陽明学の塾には東町奉行所の与力や同心、豪農などが門人に連なっている。西町奉行は老中水野忠邦の実弟の跡部良弼が就任し、米の供出を統制するようになり、義捐米を庶民に提供する必要を説く平八郎との溝が深くなった。間を取り持っていた矢部が江戸に戻ることになり、一触即発の雰囲気が大阪の街を覆う。洗心洞の門弟の中に不審な動きを見せる者、また格之助が夜な夜などこかに出かけていく。<o:p></o:p>
大塩平八郎の乱に関係している歴史上の人物が登場し、それぞれが生き生き描かれてはいるが、義挙を起こすほどの怒りは見えてこない。なぜ成算の見込みのない義挙を起こしたのか、今一つわからない。ここでは不正隠しや反対派を一掃する陰謀に義挙が利用されたとしている。大塩平八郎の乱の真実が納得のいく形で描かれないと、落ち着かない感じが残る。歴史小説のむずかしさを感じる。 <o:p></o:p>