今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

マイクロ・ミリシーベルトってどんな意味か(改題整理版)

2011年03月15日 | 東日本大震災関連

放射線量マイクロシーベルト(μSv)っていったいどういう意味なのか。
報道された値はどの程度危険なのか、どの値以下なら安全なのか。
できるだけ分かりやすく紹介する。

(私を含む)ラドン温泉愛好者憧れの、オーストリアのラドン岩盤療養地ハイルシュトレーンの線量は176μSv/hr(Bqベクレル値からの換算,hrはhour(時間))。
そこでは、医師の指導のもと、厳密な時間制限で利用されている。

実際に人体に許容される限界線量は500,000μSv(=500mSv)で、これを「緊急時被曝限度」という。
つまりこの値を超えると放射線障害が発生する段階に突入する。
それをもとに、心配しなくてよい上限は、100,000μSv(=100mSv)とされている
(吸収線量単位Gyグレイ値から換算)。
ちなみに40過ぎの会社員が毎年受ける胃検診での放射線量は600μSv/hr。

ということはたとえば「500μSv/hr」は、明確な健康被害が起きるとは言えないが、
普通の人が生活空間で浴びていい数値ではない。
つまり、まだまだ異常に高いということ。
私の手元のガイガーカウンターがこの値を示したら、
顔面蒼白になり、その場から走り去る(ただし、真の「屋内退避」基準はこの10倍の5,000μSv/hr。これこそチェルノブイリ)。

また基準値として使われる「5μSv」は、異常に高い値だが、健康被害とは無縁(ラドン温泉で有名な鳥取県の三朝温泉より低い)。

●単位時間の扱いに注意!
※この項は記述に誤りがあったので下記のように書き換えます。またコメントの回答で正しくなかったものは誤解を避けるために削除しました。ご指摘いたいだいた方には感謝いたします。
μSv/hrは1時間当りの量で、標準ではこの単位時間が使用される。ただ、次項のように積算値を問題にしたい場合は、単位時間が一日(dya)や一年(yr)になる。たとえば世界中で人があびる平均値は年単位で1,200μSv/yrである。だから、放射能漏れで計測された放射線量が1,200μSv/hrだった場合、一年間であびる放射線量を1時間であびたことになる。

●積算値を問題にしよう
生活空間での放射線量については強さ(シーベルト値)だけでなく、積算値(累積時間)が問題。
すなわち(線量/hr)×(時間)を計算すべき。
たとえば5μSv/hrを1日であびる量は、5×24=120μSv/dayとなる。
日単位での「低線量」(悪影響は発生しないといわれる)の上限は548μSv/day、
ここから半分の値にした「安全値」の上限は274μSv/day。
なので、安全圏内ということになる。
でも毎日の生活空間では、今度は日レベルで積算しなければならない。
実は、先の「安全値」は年間の安全値(100,000μSv/yr)を日割りした値なので、この値が1年間続いても安全圏内。

逆に1時的に高い値を示しても、すぐに低下するなら、積算的にはそれほど問題ではない(X線検診のように)。
今回の事態の場合、観測される放射線量の変動幅が大きいので、過敏にならないように。

●健康に影響のない値の上限
ついでに、「低線量」上限の単位時間の値は、22.8μSv/hr。
「安全値」上限の単位時間の値は、11.4μSv/hr。
おおざっぱに、10μSv/hr、とりわけ20μSv/hrのラインが重要と思っておこう。

●シーベルトの単位レベルの違い:まとめ
放射線量の問題は、シーベルトの細かな数値ではなく、値の単位レベルで問題の質が異なってくる。
だから値が4桁(千の位)になったら、次の上の単位レベルで論じた方がいい。

生活空間での日常の観測値はn(ナノ)Sv/hrレベル(0.0xxμSv)。
日常値からの逸脱はμSv/hrレベル。
μSvからm(ミリ)Sv(=x,xxxμSv)になったら、単位時間の意味は小さくなり、とにかく要避難(そこから逃げる)レベル。
だから 500μSv=0.5mSvが、マイクロからミリレベルへの中間段階として重要な通過点となる。
そして、mSvからSvになったら、
しかも1Svから、実際に生体の障害が発生するレベル(すなわち、このレベルになってはいけない)。
だから最悪でもmSvレベル(500mSv以下)で抑えておかねばならない(←今の日本はココ!)。

ここで注意してほしいのは、異常値や要避難レベルと、健康被害レベルとでは、シーベルトの単位レベルが異なるわけで、
異常事態であるのは確かだが、実際に傷害が発生するわけではないことは理解してほしい
(すなわち放射線の評価基準は、まちがっても健康に害を及ぼさないように、ものすごく厳しい数値に抑えられているということ)。


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10 コメント

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御礼 (enguelgue)
2011-03-13 15:08:59
客観的なモニタリング、感謝します!今必要なのは、こういう情報です。今後とも、よろしくお願い致します。
返信する
Unknown (山根)
2011-03-13 15:37:38
原発事故は地震や津波とは別の恐ろしさがあり、ホントは顔面蒼白になっていますが、冷静を保つようにしています。
返信する
Unknown (Unknown)
2011-03-16 09:49:40
胃のレントゲンについて、600μSv/hではなく、一回の胃検診で浴びる量(言い換えれば積算量)が600(μSv)ではないでしょうか?
これであれば、http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110312-OYT1T00407.htmの記事と符合すると思います。
>線量は毎時150マイクロ・シーベルト。そこに1時間いた場合の線量は、胃のレントゲン検診の約4分の1程度
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Unknown (山根です)
2011-03-16 10:36:13
胃検診は、胸部よりかなり強いので、ご指摘のとおりかもしれません。私の記述に誤りがあった場合、本文の方を訂正させていただきます。
ご指摘ありがとうございました。
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Unknown (Unknown)
2011-03-17 16:42:13
当方専門家ではありません。確実な情報として記載されておりましたら私の勘違いです。大変失礼します。

訂正前>ちなみに40過ぎの会社員が毎年受ける胃検診での放射線量は600μSv/hr。
訂正後>ちなみに40過ぎの会社員が毎年受ける胃検診での放射線量は600μSv。
ではないでしょうか?
Oshieteの回答も推測が多く正しは無いと思いますが、瞬間的な線量は600μSv/hではなく、遙かに高くなる物と推測致します。

また、/hrと/hの違いについて分かりましたら教えて下さい。

プロフィールに
>大学の教員
という事もあり、内容を訂正、また、大切な値などは引用元を書いた方が混乱が少なく済むかと思います。
特に今、間違った情報はパニックを引き起こす要因となりかねませんので、お忙しいとは存じますが対応されることをお勧め致します。
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Unknown (山根)
2011-03-17 18:34:26
Unknownさん、その部分の記述は削除いたしました。これに懲りて、自分が測定した値以外は、不用意に使わないようにします。
ありがとうございました。
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hとhr (山根)
2011-03-17 18:42:03
hrは hour(時間)のことです。 hも世間ではよく使われますが、”高さ”と混同する可能性があるので、間違えないために hrと表記する傾向にあります。
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Unknown (Unknown)
2011-03-18 12:06:11
13行目についてです。
>ちなみに40過ぎの会社員が毎年受ける胃検診での放射線量は600μSv/hr。
お手数ですが再度ご確認宜しくお願い致します。

>hとhr
ご返信頂きありがとうございます。
ありがとうございます。
了解いたしました。
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Unknown (Unknown)
2011-03-18 16:41:49
"だから最悪でもmSvレベル(500mSv以下)で抑えておかねばならない(←今の日本はココ!)。
"と言うことは、既に限界レベルに来ていることですよね?
何故これでまだ大丈夫なのですか?
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Unknown (山根です)
2011-03-18 18:03:11
大丈夫であることの最終段階という意味です。
なぜそれで大丈夫なのか、それは大丈夫の範囲内だからです。限界を越えてはいませんから。

次からは名乗っていだけませんでしょうか。
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