今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

フェイスブックの目的

2011年02月25日 | 作品・作家評

 フェイスブックは何をしようとしているのか。
『フェイスブック』( D.カークパトリック 日経 BP社)を読んで、
創始者、マーク・ザッカーバーグのビジョンが分かったので、
かいつまんで紹介する(詳しくはこの本を読んでほしい)。

ザッカーバーグがフェイスブックを世界へ拡張しつづける理由は、
「フェイスブックは世界をもっとオープンな場所にできる」というビジョン(理想)のためだ。
フェイスブックの価値は、いわゆるデジタルデータではなく、人とその繋がりにある。
これはある意味、生の人間関係から人を引き離してきた従来のデジタルライフにとって画期的である。
「フェイスブックには人と人とがよく理解し合うことを助ける力がある」
あくまで人のための道具(メディア)なのだ。

人ときちんと正しく繋がるためには、無責任な匿名ではダメで、唯一にして真の自分をさらけ出し、
共有してもらうことが必要である。

そして個人が、政府や組織を介さずに、自分たちの自由意思で繋がり合う。
彼は、アメリカ人の一人として、民主主義の正義を(素朴に)信じている。
フェイスブックは、人と人とを果てしなく結びつけるツールであるから、
現存している隔たり(国境・政治体制の違い)をなすく効果がある。
これは、(インターネットのない時代に)マクルーハンが予言した「グローバルビレッジ」を実現する構想である。
そして現実に、フェイスブックなどのソーシャルメディアは、北アフリカ・中東の民主化のうねりにその力を発揮しているらしい。

”独裁者を倒す”
民主主義の申し子・アメリカ人にとって、これほど痛快なことはなかろう。

これは、何もCIA的な陰謀を意味するのではない。
フェイスブックというメディアが人々に与えるメッセージなのだ。
そのメディアを使うことで、そのメディアのビジョンの方向に自然に行動や価値観が誘導されるのだ。
つまりフェイスブックには政治的メッセージすらあるということ。

マーク・ザッカーバーグは単なるパソコンおたくでも、 金儲けがしたいITビジネスエリートでもない。
メディアが人や社会に与えるインパクト(役割)を冷静に考えるメディア論的ビジョンがある。
その点でスティーブ・ジョブズやアラン・ケイとともに、実際にマクルーハンに繋がっていた。
この点が、彼のビジョンに深みを与えている。
いうなれば、アメリカのイノベーターたちは、みんなちゃんとマクルーハン理論を教養として勉強している。

日本の技術屋は、どれだけマクルーハン的ビジョンをもっているだろうか。
ビジョンなき高機能化が”ガラパゴス化”をもたらしている気がする。
昔、情報教育にたずさわった者として、
日本の情報教育のビジョンの無さに寒気を覚えた記憶がある。



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