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情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

刑事法は何のためにあるのか~自由を守るため?それとも自由を縛るため?

2007-08-28 07:40:24 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 
 
 冒頭の事案(全文下記引用)について、皆さんは、どう考えますか?記事に書かれた労働組合は、違法なことに手を貸す不埒な集団と思いますか?今後支援しないという方針を決めたのは当然だと思いますか?少なくとも、この記事を掲載した読売新聞はそう考えているようだ。でも、本当にそう単純なことでしょうか?

 日本の裁判所は、法に触れたらただちに逮捕を認め、有罪だと判決する。だから、例えば、昨年、大阪市内でディーゼル車を運転したことがあるというだけで、次のように、道路交通運送法違反で逮捕したりすることができる。

【大阪でホームレスを支援しているというだけの理由で一人の人が理由もなく逮捕されたのです。逮捕理由はディーゼル車を運転したということ。なんじゃ、そりゃ?確かに首都圏や関西など地方の政令指定都市では排ガス規制があって、数年前から、キャタコンという装置をつけたディーゼル貨物車輌以外は乗り入れが禁じられた。そのあと追い討ちをかけるように、たとえキャタコンが装着されていても、一定の年式よりも古い貨物車輌は車検を通さないというお触れが出た】( ※1、詳しくは※2

 マスメディアは、いまのところ、報道していないようだ。だれでもが犯しうる行為を利用して逮捕すること~これまで単純に運転をしただけで同じ罪名で逮捕されたことはないらしい~を異常だと思わないのだろうか…。

 そもそも、多くのマスメディアや市民の間では、刑法に対する考え方が根本的に間違っていると思う。刑法というのは、国家権力が身体的拘束を伴うような強制的手段をもって取り締まる範囲を限定するものだ。取り締まる範囲を明らかにすることで、市民の行動の自由を保障しているわけだ。

 つまり、刑法で規定された犯罪類型に当たる行為をしなければ、逮捕されたり、起訴されたりすることはない…ということだ。

 そして、刑法で規定された行為を行ったからといって、それだけで、直ちに、国家が強制力を行使する必要はないし、そうすべきでもない。強制力を行使するに値するような違法性の大きい行為であって初めて、強制力は行使されるべきなのである。

 例えば、米国では、公務員が情報を漏洩しても、その情報が社会的に伝えられる意義がある場合、最高裁は、罪に問わなかったという。

 これが日本では、西山事件(外務省密約事件、※3)のように、形式的に秘密を漏らしたことをもって有罪となるのではないだろうか。あ、刑法に対する考え方を間違っているのは裁判所もだったねぇ…。

 これって、やっぱりおかしい。国家が市民の自由を保障するためにある刑法を利用して、国家が自分に敵対する者を弾圧する…。

 冒頭の記事(8月10日付社会面トップ)について、私は非常に違和感を抱いた。労働組合は、現在の経営者に支えられた自民党・公明党政府の政策に反対するのは当然であり、そのような政府・与党が定めた法律が時には、労働組合を弾圧する手段として使われることは十分考えられる。

 だからこそ、国家の法には裁かれようとも、労働組合として裁かれた者を擁護し、支援する必要がある場合はあるはずだ。

 それにもかかわらず、形式的に法に触れる行為をしたら、労働組合は支援しない、というのでは、労働組合は「政府御用組合」ということになるのではないだろうか…。支援するしないは、裁判所とは別に、労働組合としての判断がなされるべきなのだ。

 法に触れたら違法ではないことを前提に強制力の行使がなされるよう、まずは、上記事件で、大阪府警に抗議してほしい。

※1:大阪府警、メチャクチャやねん。 (http://nyanke.blog.ocn.ne.jp/nyanke/2007/08/post_c04b.html)

※2:大阪府警が天皇警備のために「事前逮捕」(http://bund.jp/modules/wordpress/index.php?p=398)

※3:ウィキペディア(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%B1%B1%E4%BA%8B%E4%BB%B6)

■■読売引用開始■■

2004年の参院選を巡る川崎市交通局の労働組合幹部による選挙違反事件で、有罪が確定した川崎交通労組の元委員長(59)ら幹部8人に、同労組と上部団体の「日本都市交通労組(都市交)」(東京都港区)が「犠牲者救援金」として計1億円を支給していたことが9日、分かった。

 懲戒免職や停職処分で支払われなかった退職金や給与、賞与を補てんする目的。川崎交通労組の谷野(やとの)安喜夫委員長は「組合活動の一環だったが、時代にそぐわず、今後は規約を見直したい」としている。

 元委員長は、横浜市教職員組合出身で民主党比例候補の那谷屋(なたにや)正義氏(当選)の票の取りまとめを依頼され、現金15万円を受けとるなどした公選法違反の罪に問われ、懲役1年6月、執行猶予5年の刑が確定。04年12月に懲戒免職になった。ほかの7人も罰金50万~30万円の略式命令を受け、6~3か月の停職となった。

 労組関係者によると、都市交は昨年8月、元委員長に定年となる08年3月までの給与と賞与、退職金に相当する4500万円を支出、元委員長の裁判費用などを加え計6000万円を支払った。川崎交通労組は8人に停職などによる給与の減額分など計4000万円を支出した。

 これらの支出は、組合活動中の不利益や損失を補償する川崎交通労組の「犠牲者救援金」制度に基づき、04年12月に機関決定。規約にのっとって、都市交と川崎交通労組で支出した。規約では給与の補てんなどのほか、刑事事件などでの逮捕に1万円、3か月以上の懲役・禁固の実刑に20万円の見舞金支払いなども規定している。具体的にどんな例を対象とするかは明文化されていない。組合活動中の交通事故以外で支払われるのは初めてという。川崎交通労組に、川崎市から公金は支出されていない。

 川崎交通労組の谷野委員長は救援金制度については、「事件や処分で生活資金を断たれる組合員にとって必要」としている。都市交は取材に対し、「規約、規定にのっとり交付した」と回答した。同じ選挙違反事件では神奈川県教職員組合と川崎市教職員組合の幹部も逮捕されたが、両組合は「支払いはない」としている。

社会は納得するか
 労組問題に詳しい早稲田大学の久米郁男教授(政治学)の話「選挙違反事件は組合員のための正しい活動とは言えない。組合活動に厳しい目も向けられる中、救援金の支出が一般社会の納得を得られるか疑問」

ストの犠牲とは別常識から逸脱
 選挙違反で処分を受けた労組役員に対する「救援」は、官公労組による“ぐるみ選挙”の一端が明るみに出たケースといえる。

 労働組合は、組合員の労働条件を引き上げるため、きわどい闘争を繰り広げてきた歴史を持っている。例えばストライキを実施すれば組合員の賃金カットは免れない。そのため、賃金カット分を闘争資金から穴埋めする制度を整えた。

 ストを禁じられた官公労組では特に、停職や免職処分者を抱え込めるだけの資金を用意してきた。1970年代くらいまで、春闘のたびに停職や減給など大量の処分者を出していたからだ。「犠牲者救援金」もそんな背景を持つ制度の一つだろう。

 今回の「救援」で問題なのは、選挙違反が組合員の労働条件向上の延長線にある活動の結末といえるかどうか――という点だ。

 労組の代表を国会や地方議会へ送り込むことは正当な活動の範囲と思われる。

 ところが、選挙には公職選挙法というルールが定められている。ストによる処分なら「組合活動に対する犠牲者」との理屈が成り立つかもしれない。これに対し、公選法違反では、そんなへりくつは通用しない。まして買収となれば、きわめて悪質な犯罪ではないか。組合員の生活に直結する経済闘争と、選挙違反を一緒くたに考えるのは、明らかに社会的な常識を逸脱している。

 これでは、労使交渉などで相手方に法令順守を求めることもできないだろう。民間大手労組の役員の1人は「労組だからといって特別な理屈が通る世の中ではない。組合員の不信も招くだろう」と自戒する。

 サラリーマンの声を代弁するのが労組の役割だ。労組は、今回の参院選で躍進した民主党の有力な支持基盤でもある。内部規約も含めて一般のサラリーマンに理解できる組織に脱皮しなければ、労組離れにますます拍車がかかるだろう。労組をみる国民の視線も一段と厳しくなるに違いない。
(編集委員 左山政樹)
http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_07081003.cfm■■引用修了■■





★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (ゴンベイ)
2007-08-28 09:54:01
>労組は、今回の参院選で躍進した民主党の有力な支持基盤でもある。
>編集委員 左山政樹
民主党内で最も改憲に反対する勢力基盤である公務員労組攻撃の、編集委員直々の意見報道ですね。参院選の自民党による民主党攻撃の延長戦。自民党メディア遊撃部隊の読売は、事務所費問題に代わる格好の攻撃材料を見つけたと大喜びでしょう。
県教職と市教職は支給しないと書いてありますが、教員組合の場合組合外郭団体への再就職の斡旋での補填というやり方もありますし、バスの運転手出身の労組上がりでは再就職も難しく、懲戒免職で年金受給資格も喪失しているから、金額の大きさに驚く4500万円を貰っても後々の生活への打撃は大きいでしょう。
公務員が公職選挙法に疎く結果として軽率な行動を取ったことになりますが、票取りまとめの依頼にかかる交通費や電話代、面談の際の飲食代の費用弁償として掴み金を渡し、渡されただけのことであろう行為を違反に問うた公職選挙法の規定は【買収】!末端の一有権者が受け取る実弾と何ら区別されないんです。以前田舎の選挙でニッカ、サントリーの実弾授受の現場を目にしたことがある私としてはお気の毒としか思えません。依然として公選法の規定を熟知せず気軽に選挙資金を費用弁償で支出している選対の候補は責任を取れ!と声を大にして叫びたいです。

ところで、編集委員という方はサラリーマン面していますが、不遜極まりないのがゴロゴロいる新聞記者って、羊のようなサラリーマンの代表でしたっけ?
 # 私の小学校時代の恩師は教員というのは子供を育てることだから自分の職業は「自由業」というのかもしれないなってことをいっていましたし、新聞記者も「民主主義」を育てるものだから「自由業」だといっている方もいたということを思い出します。
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六社会恐るべし (田仁)
2007-08-28 17:50:55
記者クラブの運営自体、CIAの正力さんは噛んでないんですか?
税金で弁当でも何でも取り放題、クーラーの効いた桜田門のお部屋で、優雅に(警察発表があるまで)TVでもネット・サーフィンでも見放題、挙句に口移しの鸚鵡ちゃん…。
ううっ!書いてて暗い気分になりましたっ…!
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政治活動一般と特定政党の政治活動 (東西南北)
2007-08-29 00:30:57
「元委員長は、横浜市教職員組合出身で民主党比例候補の那谷屋(なたにや)正義氏(当選)の票の取りまとめを依頼され、現金15万円を受けとるなどした公選法違反の罪に問われ、懲役1年6月、執行猶予5年の刑が確定。04年12月に懲戒免職になった。ほかの7人も罰金50万~30万円の略式命令を受け、6~3か月の停職となった。」

 この記載から言えば、特定政党である民主党の選挙運動をしていたわけで、労働組合の資金を使うことは違法だと考えます。なぜなら、労働組合には民主党の支持者だけではなく、他政党の支持者もいるわけで、組合費を民主党支持者に使うことは組合員の思想・信条の自由を侵害することになります。なお、労働組合が経済闘争だけではなくて、政治活動一般を行う活動へ組合の資金を使うことには問題ないですが、読売の記事ではこの点を問題視している感じですから、異常だと思います。

 今回の問題で言えば、民主党の運動員に支払われた組合の資金ついて、組合員が返還請求をした場合、民主党の運動員は組合へ資金を全額返金せねばならないと考えます。つまり、組合員の多数や国民合意があったとしても、組合にいる少数の人々の思想・良心の自由を保障すべく運動員に支払われた組合の資金は返還されるべきです。この問題はいわゆる「しがらみ」の問題であり、民主党が政権交代を目指すなら断ち切るべき問題です。組合の資金を特定政党の政治活動へ支出することは「利権」「しがらみ」と規定されて当然の行為でしょう。

 

 

 
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小悪を憎んで大悪を許す (田仁)
2007-08-29 15:29:58
「小悪を憎んで大悪を許す」日本人の性癖は、実に施政者から操り易く、「スキャンダルの積極運営と活用」で、本来は庶民の為にならない政策を、容易に呑ませる事が出来て便利です。
何故か日本人は政治を汚いと思っており、でも人間が2人以上居れば一種「政治のようなもの」は当然に発生するけど、その妙な潔癖性を操作すると与党スキャンダルを野党スキャンダルで打ち消せる等します。
ま、結果は「人を不幸にする日本と言うシステム」に他ならず、映画「シッコ(サイコな米国医療)」程度まで、日本の社会保障をまさに破壊しようとする売国奴の跳梁跋扈を許してます。
朝青竜とかもアソコまでのバッシングは明らかに異常なんで、却って祖国では明白な被害者として安らぐかも…、てな効果も期待され、ソレって従軍慰安婦非難決議の時の有名な逆効果広告と似てませんか…?
兎角、中道・中庸・冷静さと言うものが存在しないので、殆どの場合に行き当たりバッタリなヒステリー症を発揮し、割とかなりの逆効果を挙げる事に長けて自虐です。
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