情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

取り調べを可視化しても捜査に支障はない~法務省の挑戦への回答案(前半)

2011-01-25 23:25:07 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 法務省と民主党が協議をしている法務部門コアメンバー会議で、法務省側から取り調べの全面可視化をした場合には、問題があると考えられる事例9つについて、考えていただけたでしょうか?私なりの考えを示してみます。

事例9つはこちらから
  ↓
http://iwakamiyasumi.com/wp-content/uploads/2011/01/110120_Kashika.pdf


(事例1)
【被疑者は、最初に強盗強姦で逮捕されて自白し,裁判員制度対象事件であったことから,警察及び検察において,録音・録画を実施した。
 その後,被疑者は数十件の強姦,強姦致傷等の余罪を自由したが,その際,「事件の内容も恥ずかしいし,取調べを受けている姿も見られたくないので,カメラはやめて欲しい。」と申し立てたため,余罪については録音・録画の実施を断念した。】

…これはナンセンス。誤解しているだけ。自白が任意になされたものか、誘導されたものか、ということが争われない限り、録画されたものが法廷で再現されることはない。
 そもそも、こういう余罪のなかに他の人が行った事件も紛れ込ますことで、ほかの事件まで解決とするトリックが行われる可能性があるんだから、きちんと取り調べ過程を録画しないとあぶなっかしい。


(事例2)
【被害者は,暴力団甲組の相談役の名刺を使って活動していたが,被害者自身が逮捕・起訴された別事件の捜査の過程で,甲組長らから数千万円を要求され,甲組から追い込みをかけられていることが判明し,これを恐喝未遂で立件した。甲組長・乙若頭は否認していたが,丙組員は自白し,供述調書にも署名した。しかし,丙は,署名後,「裁判では,白紙の調書に署名させられたと言う。」と申し立て,その理由について,「組の上をうたつたとなると,生きておれない。」,「全国の刑務所にうちの組員がいないところはない。指令が行つて,殺されることになる。」と話した。】

…これは子供だまし。いまどき、「組の上」が、「白紙の調書に署名」なんて信じるはずもない。本当は、捜査員側が、「白紙の調書に署名したって言えばいいんだから、ちゃんと話せ」とか言っていたりするわけだ。それでいて、自白した後の保護なんて考えていない。結局、この事例は、組織犯罪における証言者を保護するプログラミングの必要性と取り調べの可視化の問題を混同しているにすぎない。


(事例3)
【某中国人窃盗団では,構成員は,組織に加入する際,祖国の家族,連絡先などを明らかにするように求められ,「組織を裏切ったら,家族らの命はないものと思え。」と脅されており,最初に現行犯逮捕された被疑者は,現に,ミスを犯した構成員が指を折られるなどの制裁を受けた場面を目撃したことがあつた。そのため,被疑者は 組織の全容について供述したものの,報復をおそれ,犯行のうち被疑者が直接担当した部分以外については,供述調書の作成に応じなかった。
 そこで,警察は,上位の共犯者の人定が判明した後も,直ちに逮捕することはせずに行動確認を続け,同人らがその後に敢行した別の窃盗事件について証拠固めをした上で,被疑者とともに敢行した本件及びその後に敢行した別事件の両方で逮捕するかたちをとった。】

…ちょっと分かりにくいが、これって、「上位の共犯者」が「本件」について否認した場合、自白した構成員の証言がなければ、有罪にできないようなケースのように思える。だとしたら、構成員が証言を拒む以上、「上位の共犯者」に関する情報を話す様子が録画されていても、それが法廷で明らかになるはずがない。録画は、あくまでも、不当な自白を防ぐためになされるものであって、そこで自白したことをそのまま検察が証拠にして他の人を有罪にできるというものではない。
 もし、自白した構成員の証言は単なる端緒で、ほかの物証で「本件」についても有罪にできるというケースであれば、端緒の存在を否定すればいいだけのこと。これ自体、問題だと思うが、現実にはすでになされていることだ。本当は、組織犯罪における証言者を保護するプログラミングを法定するべきだと思うが、その辺りは放置されてきた。いまさら、その必要性を根拠に、可視化の導入を遅らせようとするなんてね~。


(事例4)
【警察は,車の中から大量の覚せい剤を発見し,その車に乗っていた暴力団組長甲及びその愛人乙を覚せい剤の営利目的所持で逮捕したが,乙は本件の通報者だった。甲は,本件覚せい剤の仕入れに乙を同行させ,乙に覚せい剤を持たせていた。乙は,覚せい剤を持たされて怖くなり,警察に連絡したが,甲のもとか逃げるようにとの書察の勧めに対し,覚せい剤を持ったまま逃げたら甲に殺されるとしてこれに応じなかった。そこで,警察は,甲が乙を伴って本件覚せい剤の密売に向かう途中,甲及び乙を逮捕したものであった。検察官は,甲を覚せい剤の営利目的所持で公判請求したが,乙の通報が捜査の端緒であることは明かさなかった。】

…これって、甲及び乙を逮捕する際に、職務質問を装うとかそういうことだよね。あるいは、逮捕状をとるときには乙からの情報を使うが、公判(裁判)では使わないってことのか。いずれにせよ、そのことと、録画は無関係。乙自身が自白が任意にされたものかどうかを争わない限り、録画されたものは再現されない。甲も、乙の情報によって逮捕されたと思っていないのだから、乙の供述の信用性について争う場面はないから、そちらから録画されたものを再現してほしいという要求もこない。
 これも組織犯罪における証言者を保護するプログラミングの問題との混同もある。


(事例5)
【勤務先事務所において雇用主である被害者と2人になった際,被害者を姦淫しようとした事案。外形的行為としては,被害者に抱きついた上,その□を手でふさいだにとどまり,強姦の犯意の中心的な証拠は被疑者の自白であった。被疑者は,終始犯意を認めていたものの,取調べにおいて,「被害者の夫は女遊びが激しいため,被害者夫婦は不仲であった。」などと,本件とは何ら関係がなく,かつ,真偽も不明な事項についても供述をしていた。】

…これは意味不明だな。被害者のプライバシーのことを問題にしているのかもしれないが、それは法廷で直接証言する時も同じでしょう。無罪を争うために必要があれば、他人のプライバシーを侵害するような情報だって証言しなければならないことはよくある。それを封じるわけにはいかんでしょう。これは争っていないにもかかわらず、っていうところがポイントなのかもしれないが、自白について争っていないなら、その録画されたものは法廷では再現されないんだから、何の問題もないはず。なんじゃ、こりゃ。


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