情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

刑務所での物品販売を独占している法務省職員・OB組織が販売利益を自らの利益のために使用!

2008-04-27 12:51:29 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 日弁連は、今年2月、【現役の法務省職員やOBらで組織する財団法人「矯正協会」が、刑務所などの刑事施設での受刑者への物品販売をほぼ独占しているのは問題だと】(※1)する意見書を鳩山法務大臣宛に提出し、【法務省矯正局は「意見書の内容をよく検討した上で、適切に対応していきたい」】と述べていたが、適切な対応策は発表されたのでしょうか?ご存じだったら、教えていただきたい。

 この意見書(※2)は、資料を含め59頁にわたる大作。利益の使途について次のような指摘をしている。

【たとえば名古屋刑務所支部については、平成14年度の売上が5,500万円、粗利1,000万円のうち、500万円が矯正協会本部へ、500万円が支部に配分された。配分された500万円の支出については支部長(=当時は名古屋刑務所長)の裁量となっており、実際には、名古屋刑務所では220万円が被収容者の教化費、130万円が刑務職員の福利厚生費、150万円が売店運営の経費に利用された(国会における矯正局長回答)。その後2004年度(平成16年度)からは、売店のある支部のみならず、全国8カ所の矯正管区及び少年院、少年鑑別所等へも配分がなされるようになっている。】

この構図は、全国的なもので、

【物品販売事業による経常利益の約7割5分が公益事業会計に繰り入れられ】、

【支部の公益事業会計の使途は、平成17年度で①矯正処遇援助費に約4944万円(支部公益事業会計の約21.3%)、②矯正管理援助費に約1億5001万円(支部公益事業会計の約64.5%)、③管理費に約3300円(支部公益事業会計の約7.2%)となっている。
ここで、①矯正処遇援助費とは、被収容者処遇に係る援助経費であり、たとえば、被収容者用図書、被収容者運動会に要する賞品代、慰問演芸会等に要する費用である。
②矯正管理援助費とは、会員及び矯正職員等を対象とする各種行事等に関する必要な援助経費で、たとえば文化・スポーツ活動奨励費、武道奨励費、研修費等である。
③管理費とは、公益事業における矯正協会職員、物的設備及び付帯経費等に関する必要経費であり、給料手当、法定福利費、旅費交通費等である。
この①~③のうち、直接、被収容者の利益として用いられる支出は、矯正処遇援助費のみである。】

という有様らしい。

この実態を受け、日弁連は【(2)刑務官組織が被収容者から多大な収益をあげ、それが刑務官の福利厚生に利用されるという構造になっていること】が問題だと指摘し、次のように述べている。

【本件の根本的な問題は、被収容者に対する独占的な販売によって得られる通常に比して過大な利益が直接処遇にあたる刑務官組織の利益になっているということにある。
 そもそも、矯正協会の各刑事施設における支部は刑務官と1名ないし2名のパート職員で構成されており、支部長は総務部長である。被収容者に対する販売に限れば、被収容者から受け付ける購入の申込みも、個々の商品の被収容者への配布も、刑務官が公務員として行っているものであって、矯正協会が行う独自の作業はそれほど多くはない。それゆえ上述のとおり販売経費率が低いのである。にもかかわらず、矯正協会へ納入される卸値価格に約20%増し(矯正協会の原価率は83%であり、約2割の利益を上乗せして被収容者に転売している)の値段になり、そこから売上高の6%もの経常利益が生み出されるのである。正当な業務に対する報酬と言うよりも矯正協会が名目上関与していることによる利益という側面の大きい利益が生み出され、直接利益をあげた支部に配分されて、支部会員である刑務官らの利益となることについて、正当性を見いだすことは困難である。
 矯正協会が間に入ってとりまとめることで、矯正協会に大きな利益が入り、他方で被収容者がその分を負担しなければならなくなっているのである。
 そうした状況は、刑務官から処遇を受ける立場にある被収容者からみれば、明らかに不公正な取り扱いであり、人権を制限する立場にある刑務官と被収容者の間の信用関係を著しく阻害し、健全な収容関係の維持の弊害となるものである。このように被収容者が刑務官に対して不信を抱きつつ日々の処遇を受けるという状況は、刑の目的である被収容者の教化・矯正という面から見ても、好ましいものではないことは明らかである。】


そのうえで、日弁連は、

【法務大臣及び法務省矯正局長は、各刑事施設の長に対し、矯正協会が販売業者としての地位を独占する運用を改めて、できるかぎり多くの業者に参入させるよう直ちに指導をすべきである。
 また、新規業者が参入しやくするために、民間業者に適切に情報を提供するなどして広く業者を募集して、できるかぎり多くの業者に参入させるよう効果的な運用を行うよう指導すべきである。
 具体的には、全国の刑事施設において、どの施設で、いつ、どのような物品(品目)について販売業者を指定しようとしているのかを、法務省のホームページを利用するなどして、明確に告知するべきである。また、複数の業者が指定を受けることを希望した場合には、各刑事施設の長はどのような審査基準を用いて審査を行うのかを明確にするとともに、審査結果の概要、業者選定に至ったプロセスを可能な限り公表すべきである。その際、刑事施設の長が独断で決定を行うのではなく、視察委員会やその他の第三者機関により、合理的な選定がなされているかどうかを担保することも検討されるべきである。】
と極めてまっとうな指摘をした。

それから2か月が経過したわけだが、法務省は何らかの改善策を検討しているのだろうか…。



※1:http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/125885/

※2:http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/data/080215_4.pdf






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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (トオル)
2008-04-28 12:17:37
独禁法に違反していないんですか?
天下りの典型ですね。酷いです。
天下り全てを批判するつもりはありませんが極々一部のOBが利益をあげてる構造が多すぎますね。
追跡記事期待しています!
自弁 (不当逮捕)
2008-04-28 14:25:07
留置場のシャンプーや歯磨きペーストは定価販売ですよ。
Unknown (真実)
2008-04-28 18:34:41
この程度の問題なんかは可愛いものではありませんか?
記事にしてまでギャアギャア騒ぐことではないと思いますよ。
だって弁護士会だって細かい利権のことを言い出したらいくらでも出てきませんか?
私の知ってるだけでもそれなりにありますから(笑)
Unknown (トオル)
2008-04-28 23:02:37
大小の程度の問題ではないと思いますが・・
一部OBが独占せずに民間と自由競争する。
これって理に適ってますよ。
大問題 (こやぶ)
2008-04-29 01:35:56
実はこれ大問題なんですよ。

警察官OBの利権を利用したきたない金集めが近頃、露骨になってきており、それは犯罪スレスレの行為にまでエスカレートしているんです。

総会屋という黒犬を追い出して、警察官OBという白犬が入り込んでるんです。 この白犬は黒犬よりたちが悪いんです。 要求する金は多額になってきているし、かたぎの人にも手を出す始末で。 弁護士や現役警察官も手がつけられない状態なんです。 田中森一氏もその一部分ですよ。

大阪府警なんてやくざ以上ですよ。
ロビイストと用心棒は紙一重です。
白犬さんたらメールを食べた (田仁)
2008-04-30 21:11:17
硫化水素の製法をネットから削除するのは構わないと思いますが、ソノ窓口の「民間団体」インターネット・ホットライン・センターは典型的な警察OB天下り先ですね…。