情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

「抵抗権」を意識的に見直すほかない!~民主主義を実現するために

2008-06-19 06:15:21 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
 「抵抗権」というと現在の憲法の教科書では半ページほどの扱いでしかない。確かに市民が自らの権利を実現するためには昔は「抵抗権」という非合法的な手段しかなかったが、徐々に体制が民主化されると、市民が自ら権利を実現する手段そのものが合法化され(たとえば、選挙による権力後退交代など)、非合法的な手段である抵抗権を発動する機会が減るため、抵抗権の役割が薄れるのは当然だろう。

 しかし、果たして、日本では、抵抗権の不要な民主的な社会が本当に実現しているだろうか?

 第1に、民主主義の根幹たる「情報の流通」、これは大きく阻害されている。
 
 ①公的文書の公開に極めて消極的。また、文書の保存期間が短い。

 ②マスメディアの報道の自由が奪われている。(「マスコミはなぜ『マスゴミ』と呼ばれるのか」参照…買ってね)

 ③ビラまきなど市民の表現の自由も奪われている。

 この状況は、先進国というには恥ずかし状況だ。


 第2に、民主主義の発動手段である「選挙制度」。これもひどい。

 ①民意が反映される比例方式を主流としていない。

 ②戸別訪問の禁止など選挙活動の自由が極端に制約されている。

 この状況も危機的だ。米国は①は同じだが、選挙運動の盛り上がり方が全く違う。


 第3に、「権力側の暴力」が放置されている。

 ①逮捕後不当に長期間にわたる身柄拘束。
 
 ②警察署での拘束。

 ③取調が録画されていない。
   ↓
  ①~③の結果としての拷問的取調

 ④刑事裁判で捜査側の証拠のうち被告人に有利なものを示す義務がない。

 ⑤死刑の存続(究極の暴力。権力の責任逃れ)

 お隣の韓国と比較しても、第1から第3に関する日本の状況のひどさが分かる。

 たとえば、全ての大メディアがお先棒を担いだ「小選挙区の導入」について、失敗だったと反省しているメディアがあるだろうか。市民に申し訳なかったと謝ったメディアはあっただろうか。そのことだけでも、日本で情報が流通せず、選挙制度に問題があるとを示している。

 そう、「抵抗権」。このような状況の日本では「抵抗権」の現代的意義を見直す必要があるはずだ。特に、情報流通分野での「抵抗権」、すなわち、内部告発や権力側の不正のあぶり出しを行う者を市民が守る必要性は大きい。

 第2次世界大戦前に東京帝国大学法学部教授となった宮沢俊義さんは、戦後著した「憲法Ⅱ」(有斐閣)で、「抵抗権」になんと41頁を費やしている。戦前、戦時の政府の独裁政治を踏まえたものだ。

 宮沢さんは、米国の独立宣言の一節

「永く存続した政府は、軽微かつ一時的の原因によっては、変革されるべきでないことは、実に慎重な思慮の命ずるところである。(中略)しかし、連続せる暴虐と簒奪の事実が明らかに一貫した目的のもとに、人民を絶対的暴政のもとに圧倒せんとする企図を表示するにいたるとき、そのような政府を廃棄し、自らの将来の保安のために、新たなる保障の組織を創設することは、かれら(人民)の義務であり、また、義務である」(義務!)

を引いたあと、次のように述べる。

「個人の尊厳から出発するかぎり、どうしても抵抗権をみとめないわけにはいかない。抵抗権をみとめないことは、国家権力に対する絶対服従を求めることであり、奴隷の人民を作ろうとすることである。しかし、抵抗権という言葉に、それが本来意味するところの、実定法を破る権利という意味を与えるかぎり、そうした抵抗権を実定法上の「権利」としてみとめることは、論理的に矛盾である。抵抗権を、単に事実上の可能性としてでなく、言葉の正当な意味における「権利」として、確立させようとすれば、その根拠は、実定法以外のところ-自然法ないし道徳律-に求められなくてはならない」

 そして、その根拠については、客観的に明白な基準を設けることはできないとして、

「個々に提起された具体的な問題に直面した各人が、まったく個人的に、もっぱら彼みずからの全責任において、それに対する答えを決定しなくてはならないもののようである」 

と述べている。

 果たして、戦後まもなくの状況と現在の状況、どちらがより民主的だろうか…。少なくともメディアに対する規制は悪化の一途をたどっている。

 人権の砦たる最高裁が、ビラまきを封殺し、政治家の圧力に屈した編集権を擁護する判断を下している今、最高裁が死刑の基準をゆるめ、法務大臣が次々と死刑を執行する今、私たちは、それぞれが「義務」に基づく答えを出すよう迫られているのではないだろうか…。

 



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★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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20 コメント

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革命を目指すのか? (Unknown)
2008-06-19 09:52:37
「抵抗権」という非合法的な手段を認める理論は学問として確かに存在しますが、突き詰めていけば、暴力革命を容認する考え方であり、民主主義社会には馴染まない手法であると思います。
思想家が提案するならともかく、実務を行う弁護士が勧める手段ではないと思います。
日本の選挙制度には、確かに問題点もありますが、ビルマのように権力による不正や弾圧が行われているわけではなく、選挙によって政権交代が可能です。
政権交代が普通に行われるようになれば、最高裁も警察も変わります。
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小田実はトックに…。 (田仁)
2008-06-19 11:13:21
亡くなる6~7年前には、個々の市民がソレゾレの現場で、権力機構による戦争圧力に対し、抵抗を実行しなければならない!という意味の事を言ってましたよ?
(だからグリーンピースとか、自分なら絶対取り得ない手段でも、一切非難はしてませんが?寧ろ方策の一例は示した心算です。)
まあ、一言で表現すれば、『当たり前田のクラッカー』ですかね。
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季節はずれの感想文で申し訳ありません。 (Mitsu)
2008-06-19 12:54:40
さき程コメントを投稿させていただいたのですが、「民主党」を「民社党」と書いてしまいました。
訂正してもう一度お送りします。すみません。

『マスコミはなぜ「マスゴミ」と呼ばれるのか』を読ませていただきました(遅くなってすみません)。感想をいくつか述べさせてください。いわずもがなのことと思いますが、まず表題がすばらしいですよね。読了後はなおさらそう思いました。マスコミが「マスゴミ」と呼ばれるほどに堕落・衰退してしまった理由はひとえにシステムにあることを具体的に解きあかした内容と、このタイトルはぴったりマッチしていると思います。
さほど厚手の本でもないのに、中身がぎっしり詰まっていて、大変読みごたえがありました。戦前・戦後の放送の歴史についてはまるで無知でしたので、この点とても興味深かったです。「電波監理委員会」が廃止されることなくそのまま存置され続けていたならその後のメディアの歩みはずいぶん違っていただろう、と悔やまれますが、当時の吉田首相はマスコミを一手に掌握することの重要さを知り抜いていたのでしょうね。(そういえば、国家によるデッチアゲの象徴ともいえる松川裁判も当時非常に厳しい状態で進行中でした。)
「電波監理委員会」の廃止に反対する社会党の山田議員による国会質問内容には胸を打たれるものがありました。「電波という国民公有のものに対して飽くまで公平に分配し、国民の福利に合致するような具合に電波を利用し(なければならない)」「一大臣の諮問機関にしてしまう(と)、憲法上非常に反動的になる、官僚主義にしてしまう」「誠にこれは不合理極まるものである、危険千万なものであると思う」という発言が心底からの不安、危惧の表明であると察しられ、今はあまりこういう真率な言論は特に国会では聞かれないように思います。(言葉に憲法の精神が活き活きと感じられます。)
戦前から戦後にかけてのマスコミの歴史、その後の歩み、また先進国諸国とのメディアのありかたの比較検討のなかで、現状のわが日本のマスコミの問題点が十分に(8割方は)抽き出されていると思い、納得しました。
弱点は、構成があまりうまくできていないように思いました。内容が読む者の頭に整理されてすっきりと入ってくるような工夫がなされていたら、もっとよかったと思います。
ヤメ蚊さんは各マスコミのありかたや記者個々の問題点についてはさほど述べておられませんが、私などはテレビなどを見ていて、個人の問題も大きいように思っています。朝日や毎日の記者の方がよくテレビに出て発言していますが、ものの考え方、センスを疑いたくなるようなことがずいぶん多いのです。(実際、あまりにも下らなさすぎると思います。)
民主党が「独立委員会設置法案」を国会に提出しているそうですから、もしこれが通ればヤメ蚊さんのおっしゃるように、メディアはずいぶん違ってくると思います。読者、視聴者として常にこの法案の動きを見て、必要に応じて声をあげたい(ささやかでも)と思います。
本書を私は2度読みましたが、特にマスコミの方々には熟読してほしいし、この本を参考にして労組などで「独立行政委員会」設置についての勉強会や意見交換会をひらいてほしいとも思います。
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Unknown (真実)
2008-06-19 14:13:11
確かに日本も着々と政府による奴隷人民化が進行していますよね…
憲法によって保証されているはずの国民の権利もこれから先は次々と改憲されていくんでしょう…
私のような表舞台ではなんの権利を持たない者がいくら頑張って抵抗しようが現在の売国奴政治家達は痛くも痒くもありません!
政府が最も恐れているのはなによりも良識ある国民が一致団結して立ち向かってくることなのです!
しかしながら残念なことに現在の日本国民の大部分が自分さえ良ければ他はどうあれ関係ない、余計な騒ぎを起こす必要などないといったことなかれ主義になってしまっています…
これでは売国奴政治家達の思うつぼであり益々奴らは国民に対して無法な要求をしてくることになるでしょう!
現に福田売国総理大臣のガソリン税にしろ消費税率アップ考慮発言にしろ次々に国民を苦しい立場に追い込んでいく政策ばかりではありませんか!

このままでは本当に奴隷人民になってしまいます…

恐れていてはなにも始まりません!
皆さん行動する勇気を持ちましょう!
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Unknown (Unknown)
2008-06-19 22:58:13
グリーンピースの人が窃盗で逮捕されますね。
おそらく公判を維持できると判断したのでしょう。

ところで、ココの弁護士さんは自分の「願望」を法律上見解として見誤るケースが多くないですか?

「自分の事務所に窃盗されたら」の件も結局逃げたままだし…。
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投票は抵抗権の一部だ (飯大蔵)
2008-06-19 23:33:58
お邪魔します。
抵抗権の指摘は重要なことです。抵抗権は投票だけではない、逆に投票は抵抗権の一部でしょう。
「Vフォー・ヴェンデッタ と言う映画」をTBしましたが、暴力的であろうと無かろうと、市民が抵抗する権利を持っていることは当然であるが、それを行使する勇気を持つことは大変なことだ。映画のようには行かない、しかし、考えておかねばならないことだと思います。
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恐るべき国策捜査!! (高野 善通)
2008-06-20 01:03:32
http://www.47news.jp/CN/200806/CN2008061901000908.html
↑エントリーとは関係ないかもしれませんが、恐るべき国策捜査が行われようとしています
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今回も検閲は通るのかな? (ひるどるぶ)
2008-06-20 03:14:02
あいも変らぬテロ思想。

政府=悪、市民=正義という子供のような二元論に基づく思考形態。

情報の流通云々をいくら突き詰めたところで『自らに都合の悪い情報は偽物扱いする』あなたには全く無意味。
そもそも自分自身でコメントの検閲やってるんだから二律背反。


革命を目指すのか? さん。
この御仁は弁護士が思想を語っているのではない。
己が偏った思想の流布のために記者になり、己が偏った思想で法律を運用せんが為に弁護士になった“思想家”です。
民主主義云々も彼の言う『民』とは己が思想に同調する者限定です。
それが証拠に各種世論調査に多数を占める死刑制度維持の『民意』は全く無視。
旧世紀の遺物ですね。
昔はこういうのが大勢いましたがかなり減りました。
いまだに社民や共産といった独裁政治を信奉する連中に票を入れるのがいるくらいだから絶滅はしないんでしょうけどね。

政権交代は・・・民主党の前原副代表の懸念は的中すると思うな。
ならないことを願ってはいますがね・・・。
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勇気ある発言,感謝します (JPLAW)
2008-06-21 01:46:10
ヤメ蚊さん,勇気ある発言,感謝します。
ただ,今の日本人の多くは何があっても動かないでしょう。プロパガンダに完全に洗脳されていますからね。
「抵抗権」の勇気を胸に,自滅・自壊した後の日本の再建のことを考えていきましょう。
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Unknown (真実)
2008-06-21 03:53:05
あのですね…
このまま現在の自民党政権が続くようだと間違いなく日本国民は泣かされることになるでしょうね…
いや、泣かされるどころか最悪の場合は私有財産を根こそぎ剥ぎ取られる可能性さえも…
かといって他の政党に政権交代したら安全かといえば必ずしもそうではないのですが…
最近ネットなんかで見掛ける陰謀論的な世界が現実なものとして私達に襲いかかる可能性も決して否定はできない状況だと認識しておいたほうが良いかもしれません…
これは少なからず裏社会の動きを知る者としての個人的な見解ですから信用するしないの判断は皆さんにお任せします…

本来ならもっと具体的にせの内容を説明できればよいのですが…
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