情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

「否認事件 難しさ浮き彫り」って無罪にすることは「難しさ」の顕れ?~毎日裁判員記事

2009-01-20 07:21:18 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 毎日新聞が、当初検察が起訴せず、検察審査会の不起訴不当を受けて起訴した横領事件が無罪になったことを受けて、「否認事件 難しさ浮き彫り」との見出しの解説記事を1月20日付朝刊に掲載している。

 ダメだよ~、毎日新聞、これだけ裁判員について報道され、裁判の原則だって、結構、読者は詳しくなっているんだから、無罪になることを否定的にとらえるような表現をすることが問題があることくらい、もう、徹底しないと。

 毎日新聞(http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090120ddm041040155000c.html)によると、双方の主張は、

【起訴状は、武蔵被告が99年4月に組合名義の預金口座を無断で解約して6億円を引き出し、成瀬被告名義の口座に送金して着服したとしており、検察側は武蔵被告に懲役7年、成瀬被告に同5年を求刑。弁護側は、保養所として使う土地建物の取得交渉の報酬として組合側が成瀬被告に6億円を支払ったと反論、無罪を主張していた。】

というもの。


 起訴に至る経過は、

【東京の屋外広告業者らでつくる「東京屋外広告ディスプレイ健康保険組合」(東京都豊島区)の定期預金を解約して6億円を着服したとして、業務上横領罪に問われた元常務理事、武蔵克之(71)と元会社役員、成瀬輝修(61)両被告に対し、東京地裁(三好幹夫裁判長)は19日、無罪を言い渡した。東京地検は両被告をいったん不起訴としたが、検察審査会の「不起訴不当」議決を受けて再捜査し、一転して起訴していた。】

というもので、

判決は、

【「組合理事長らが成瀬被告に交渉を依頼した。金額は常識の範囲をはるかに超えているが、暴力団など『影の力』を期待したと言える」と認定し、業務上横領罪には当たらないと結論付けた。】という。


 この流れには何の不思議さもない。

 暴力団がらみの事件を検察が不起訴とした。これに対し、一般市民がおかしいのではないかと、判断し、起訴に至った。しかし、結果的には有罪とまでは認定できなかった。

 極めて普通のことであり、これをことさら取り上げて、【起訴議決は裁判員制度と同じく、司法に民意を反映させる目的があり、審査会の権限を強化するものだ。だが、今回の判決のように、審査会の強制的な起訴判断が最終的に、判決で無罪に覆るケースも想定される。】などと書くのは、極めておかしい。

 この解説の裏には、いったん起訴されたら、有罪にならないといけない、という価値判断が前提にある記事としか思われないからだ。

 起訴されても有罪までの認定はできないということを不思議に思わないような記事を書かないと、裁判員に起訴された人は原則有罪という予断・偏見を与えることになりませんか?

 同時に検察審査会のメンバーにもプレッシャーを与えかねない記事だと思う。



 …正直、この時期の記事としては、ちょっとお粗末なような感じがする。

 
 ※画像は裁判所ウェブサイトより。



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