情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

光市事件弁護団最高裁欠席問題について~では、弁護団にいかなる選択肢があったのか?

2007-09-13 00:10:59 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 光市事件弁護団が最高裁を欠席した件について、コメントがばらばらになっているので、一本、エントリーを立てました。最高裁欠席問題については、こちらにコメントをしてください。

 もう一度、光市事件弁護団が欠席に至った経過を振り返りましょう。

 まず、安田弁護士ら新しい弁護団が事件を受けたのは、最高裁の弁論の2週間前。安田弁護士に対し、被告人は、「殺そうと思って殺したのではない、強姦しようと思って訪ねたのではない、子どもも殺そうと思ったのではない」という主張をした。この主張は、それまでに萌芽はあったが、1、2審で弁護人が正面から取り上げて主張することはなかった。

 弁論は1回で結審されるので、延期申請をした。それまでは、延期申請は裁判所と協議のうえ、弁論の日程を変更するのが通常だった。

 ところが、今回は、延期申請をしたら事情を聞かずに却下した。

 そこで、弁護団は、準備できないまま弁論に臨むことは被告人の利益にならないと考え、弁論を欠席した。欠席すれば、弁論を開くことができず、事実上、弁論を延期することができる。

…以上の経過について、検討してみよう。

①まず、最高裁が弁論を開くことを決定した(つまり死刑もあり得ることの決定をした)のは、弁論期日の3ヶ月前であったが、安田弁護士らが被告人と接見して事情を聞いたのは弁論の2週間前であった点について、安田弁護士は責められることはあるだろうか?いつ、安田弁護士に被告人から連絡があったのかは確認していないが、弁護人として受任していないのだから、来てほしいという連絡があったら直ちに訪問しなければならない義務はない。例え訪問しなくても問題はない。ということで、この点は、非難できない。

②次に、安田弁護士が2週間前に被告人から、1、2審における主張と違う主張を聞いたことについては、どうか。聞いた安田弁護士を責めることはできない。

③弁論延期申請をした点はどうか?新たな主張という特別な事情により十分な弁護ができそうもないのだから、延期申請するのは当たり前。

④延期申請が認められなかったため、欠席したのはどうか?
欠席しなかったら、十分な弁論もできず、被告人に不利益となった。十分な弁論をするためには欠席し、事実上延期することもやむを得なかった。

この一連の流れのどこが非難されなければならないのだろうか?


むしろ、裁判所は、被告人が、弁論の2週間前に、新しく選任された弁護人に対し、1、2審とは違う主張を被告人がしたらしいということを知ったのであれば、真実を発見するためには、その主張を十分に行わせた上で審理するために延期するべきであり、延期をしなかった裁判所こそが、非難されるべきである。裁判所が協議のうえ、延期をしていれば、弁護人は欠席戦術に出る必要はなかった。


なお、補足して、⑤弁護団が欠席する際、弁護団は被害者遺族に直接連絡する必要があるか?という論点については、ない。なぜなら、最高裁は、だれが出席するのかを把握しており、中止になった以上、連絡をするのは最高裁が行うべきことだから。


①~⑤のほかに欠席問題で、論点があるならば、論点をあげていただいても結構です。以上のような論点について、弁護団に懲戒請求をするほどの問題があるというのであれば、その旨コメントしてみてください。その際、どの論点についてのものであるかがはっきりと分かるようにしてください。









★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
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89 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
問題提起の仕方について (モトケン)
2007-09-13 11:50:00
安田弁護士に何らかの意味で批判または非難されるべき点があるかどうかという問題と懲戒理由にあたる点があるかどうかという問題を明確に立て分けたほうがいいのではないでしょうか。
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Unknown (Unknown)
2007-09-13 12:07:45
>昨年12月上旬、二審の弁護人が最高裁へ「弁論は自分ではなく、安田さんに頼もうかと思っている」と伝えたという。(中日新聞記事 異端の肖像2006「怒り」なき時代に 弁護士安田好弘)

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裁判所の見解について (ぎんがみ)
2007-09-13 12:13:38
初めましてぎんがみと申します。

私は弁護士ではなく、細かいところに関しては完全に知識不足です。それでも、今の光市事件弁護団へのバッシングが如何に理不尽なものであるかは理解できます。ちなみに光市事件の弁護団バッシングに対する私の考えはURL先のブログに書いております。

 ところで、最高裁の弁論の欠席に関する私の最大の関心は、裁判所が延期申請を認めなかった理由です。

 通常であれば、認められるとの事ですが、裁判所は却下の理由すら表明していないのでしょうか?そもそも理由を示さないものなのか、理由を示す場合もあるのでしょうか?

 そして、最高裁が今回、延期申請を認めなかったことに法的問題はないのか?という点です。

 法律の専門家ではありませんので、初歩的な質問ですが、よろしければご教授ください。
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2週間しかないのにひきうけたの・・ (HIRO)
2007-09-13 13:05:55
聞きかじりですが、弁護団はボランティアで引き受けるために集まった方々と聞いています。
2週間しか時間がないのによく集まったなあというのが印象です。
被告の主張が変わる・変わらないにかかわらず、被告の話を充分に聞き、木賃と弁護をするためにはもっと時間が必要でしたでしょうに・・・。

引き受けた時点で、期日を守らないつもりだったのでしょうか・・・。
期日というのはいわば、裁判所との約束。約束を守る気がない弁護士・・・私個人としては信用できないのですが。
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その他の論点 (いちファン)
2007-09-13 13:36:38
本当に弁護士が論点とすべきは、
⑥当該弁護人に最高裁の判決を引き伸ばす意図があったか。
⑦あったとして、それは弁護人の行動として正当であるか。
という点だと考えます。世間の批判はこの点にあり、この点を曖昧にすることは妥当ではないのでは?

ちなみに私の意見は、
⑤は回答不能(知る術がない)、
⑥は正当である(道義的には不当でも違法にわたらない限り、被告人の利益をめざすべきである。ただし、それを道義的に批判されることは甘受すべき。)
というものです。
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Unknown (無名Y)
2007-09-13 14:21:30
そもそも、その模擬裁判(リハーサル&本番)の日程は、いつ決まった事なんですか?

また、それに安田弁護士は関与していましたか?彼は主催側の事務局長で、解説役という重要な役を任されており、外れるわけにはいかなかったと聞いておりますが。
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Q&Aの記事で書き込んだコメント (ハズカシ)
2007-09-13 20:25:51
ああ、新しいエントリが出来てたんだね。昨日の晩にQ&Aのエントリでコメント2つ書き込んだけど(まだ反映されてないけど)、ちょっとタイミングが悪かったね。議論するならこっちの方がいいだろうから、こっちにもコメントを書き込んでおこうと思う。ヤメ蚊さん、お手数だけど、向こうのコメント2つは反映しないようにして貰えますかいな?ちなみに、ちょっと推敲・追加してます。

****一つ目****
>…そのままお返しします。想定外の事態に 至ったのに、単に期限に間に合わせるだけのやっつけ仕事をしたら、到底、会社の上司は評価してくれないでしょうね。ただちに報告し、いかなる対処法があるか、それにはいかなる時間がかかるかを検討する…当然のことです。
 ここら辺の認識が甘いんだよな、ヤメ蚊さんは。上司は身内だからまだしも、取引先とかだと、「期限内に」「やっつけでない仕事」をキチンとしないと駄目なんだよ。例え想定外の事態にあっても、それで期限が過ぎた・仕事のクオリティが下がった、って事になったら謝罪するんだよ。それが責任なんだ。

>しかも、刑事手続きにおいては、裁判所は客でもなければ、上司でもないのですから、会社にたとえること自体が不適切です。
 国民は?以前「なんで国民に謝らなければならないのか?」って聞かれたけど、民事ならともかく、刑事ならそれは社会問題であって国民全員に十分関係してくる話じゃないか。金の話一つとっても、裁判費用は国民の税金から出てるんでしょ?だったらさ、自分たちの税金でやってる裁判であんな欠席の仕方されたら怒るのは無理ないっしょ。そこは謝るべきじゃないのかな?

****二つ目****

 漏れは基本的に、被害者遺族の人には思い入れがあんま無いから、その事はあまり触れないでいたけど、ちょっと気になることがあるんで反論してみようかな。

>そして、遺族に連絡するのは、裁判所の役割という考え方も十分成り立つ。直接、弁護団から連絡が来るだけで遺族が気分を害することだって考えられるのです。

 これなんだが、だったらまず、一度確認はしたのか?つまり、「被害者遺族の方が被告の弁護人について良い印象を抱かれない事が多々ある、という事は重々承知しております。ですがどうしても連絡しておくべき事があるのです。どうか話を聞いていただけないでしょうか?」
って感じで一度でも聞いてみた?聞いた上で拒否されたり、門前払いにされたってんなら、確かに裁判所に連絡してもらった方がいい。
 そして裁判所が連絡するってんなら、もう一つ疑問が生まれる。欠席の連絡をした時に、裁判所に「被害者遺族への連絡」をちゃんとお願いしたのか?って事。こういう所に誠意ってもんが現れてくるんじゃないか?
 どちらにせよ、「無視して欠席するのが一番気持ちを逆なでする」って考えるのが普通だしね。
 そして、更におかしいことがある。あの弁護団、欠席した「後で」(直後かどうかは分からん)被害者遺族に会いに行ってるんだよ。もしヤメ蚊さんが書いたように彼等が考えてるなら、欠席して気持ちを逆なでした後で会いに行くってのは一貫性が無さ過ぎる。つまりありえないと思う。
 つまり、彼等は被害者遺族のことは無視していたんだろう。
 そして最後に、「最高裁は、だれが出席するのかを把握している」ってのは全く関係ないと思う。被害者遺族が出ようと(用事とかがあって)出まいと、連絡はしておくべきでしょ。更に言うと最高裁は弁護側が既に連絡をしてたかどうかが分からないし、普通に考えてまず弁護側の都合で欠席するなら弁護側が連絡する(或いは、連絡して良いかどうか聞く)のが筋(それにその方が誠意が伝わる)だし。弁護側から最高裁に連絡の依頼があって、最高裁が無視したってんならまだ話は分かる・・・、いや、やっぱ分かんねぇや。そこまで配慮して連絡を避けたんなら、その後で会いにいったのはおかしいし・・・。
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Unknown (ユズル)
2007-09-14 01:27:54
ともかくこの件については、これまでのマスメディアの情報があまりに一方的だったことに尽きるような気がします。弁護団側の主張をまったく取り上げず、「身勝手で反省の無い極悪非道な被告」と、そんな男を「非常識な手段を使ってまでかばう弁護団」というイメージに合致する情報だけが、つまみ食い的に報道されて来たように思います。

橋下弁護士も、懲戒請求を出した多くの素人も、そんなマスメディアに踊らされてしまったという面もあるでしょう。
しかし、それでも橋下さんの責任は重い。もし本当にこの事件の弁護団が道義的に許せないと思うなら、御自分が先頭に立って懲戒請求を出し、その上で沢山の素人の人たちまで巻き込むのならば、請求者の義務について良く説明し、諸々の手続きに関しても指導して一緒に戦うべきだったでしょう。それが、煽るだけ煽っておいて「自分にはそんな時間も労力も無いからやらない」とは呆れて物が言えません。
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Unknown (YO!!)
2007-09-14 11:04:26
>真実を発見するためには、その主張を十分に行わせた上で審理するために延期するべきであり、

最高裁では事実審はやらないのだから、そのために審理を延長する必要はないと思うが。


>延期をしなかった裁判所こそが、非難されるべきである。裁判所が協議のうえ、延期をしていれば、弁護人は欠席戦術に出る必要はなかった。

延期をしなかったのはおそらく高裁に差し戻すつもりであったためだろう。最高裁で弁論を開くというのは高裁判決を見直す可能性が高いということであるが、必ずしも被告不利の判決に見直されるとは限らないと思う。仮に被告に不利な心証を抱いていたとしてもその場合は却って不利な側の言い分を聞くのが通常のようだ。つまり、被告に不利な判決はしないという意思表示ともいえる。そもそも、最高裁で無期を死刑に自判した前例はない。そして、弁護側も事実を争うつもりでいたのだから、高裁差し戻しはなんら不利ではない。
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Unknown (無名Y)
2007-09-14 20:56:09
安田弁護士が被告と初接見したのが2006年2月27日となっていますが、

では、裁判の資料等を読み始めたのは、いつですか?それと、弁護の依頼を受けたのは、いつですか?
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