情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

NHK番組改編事件で最高裁に期待していたこと…夢だと分かっていても…

2008-06-16 06:27:56 | メディア(知るための手段のあり方)
 6・12判決でNHKに逆転されちまったことのショックから立ち直り切れていないのですが、あの判決に何を期待していたか、書き残しておきたいと思います。「番組内容への期待が法的に保護されるための基準」、これを最高裁が高裁よりも絞ってくるとは思ってました。期待を理由に不当な訴訟を起こさせないためには、より厳格な条件を課さなければならないという発想自体は理解できるからです。

 では、どう絞るのか。正直、現在の最高裁判所の政治的事案に関する判断は価値判断に法的なベールをかぶせているだけだということは分かっているので、最高裁がNHKを勝たせるために「番組内容を変更しないという合意がある場合のみ」という限定の仕方をしてくるのではないかという予測もした。それが現実的な予測だということも分かっていた。

 しかし、この事件を普通にながめたら、控訴審での事実認定によると、①政治家の意向を反映した編集がなされた、②通常の放送過程では考えられないような段階での編集がなされた(編集した後、放送用のきれいなテープを作ったら、もうその後は編集されることはないにもかかわらず、そのテープを直接ぶつぶつカットした)という特異な事実があることが浮き上がってくる。

 ここまで特殊なケースは通常考えられない。

 他方、政治家に圧力を加えられた編集権を守る必要はなく、NHKを負かせることこそがNHKの番組編集の自由を実現することになるということも明らかだ。

 そういう価値判断のもとで、上述の①と②の条件をうまく使えば、期待が法的に保護される基準を絞り込みつつも、今回の事件では、NHKの責任を問うことができる…そういう期待も密かにしていた。

 結果的には冷静に予測したとおりの判決とは言えるが、その予測は「今の最高裁ならば」という条件付きの予測であり、素直にこの事件を判断した場合には、何らかの形でNHKに責任を負わせるべきだったことは間違いない。

 報道機関の内部的自由(現場記者・スタッフの表現の自由)の保障への途を大きく切り開くことができる事案だっただけに、本当に残念だ。実はこの内部的自由に関連するコメントがあるかどうか、あるとすればどのようなものになるか、個人的にはそこに最も関心があった。

 新聞の黎明期にあって、有力実業家が大阪毎日新聞を「政治的に中立な実業新聞」として発刊する際、政治的に一家言を持つ柴四郎(冒頭の写真)を主筆に招くにあたって、経営陣と主筆間で、主筆の編集権を限定しつつ保障する特約を結んだという(「『中立新聞』の形成」より)。

 黎明期の多事争論ぶりがうかがえるエピソードであるとともに、今回の最高裁判決の水準を示すエピソードだともいえるのではないだろうか…。

 さぁ、新しい週を迎えたし、頑張んべ!



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12 コメント

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Unknown (元キシャ)
2008-06-16 11:49:31
「報道機関の内部的自由」というのは、被取材者と言う「報道機関の外部」の存在の期待によって動かせる・または動かしていいもの、なんですか?

政治家に限らず、民間放送であればスポンサーなど番組に「ご意見」してくる有力者は常々存在するもんですよ。
その「ご意見」に屈従するのか忖度するのか聞き流すのか、その判断を自律的にするのが編集権と言うものでしょう。

被取材者の期待なんかをテコにしようとするのがお門違いなんです。
こんなモンをテコにすることが許容されたら、例えばハコモノ行政の無駄遣いを追及するドキュメントなんかで対象組織を口八丁手八丁で口説いて取材に応じさせたときなんか、どういう事態が引き起こされると思ってるんですか。記者稼業やってた人が、想像できないわけではないでしょう?
公権力に批判的な報道をしようとしたら「当事者には一切取材せずに原稿を書く」しかなくなりますよ。

NHK内部に、時の政府与党からの「圧力」に対する抵抗力が(通常視聴者が報道機関に「期待」するほどには)備わっていない(と思料される)ことを、こんな形で「是正」できることを期待するなんて思慮が浅すぎます。
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追及する場合にはあてはまらない… (ヤメ蚊)
2008-06-16 21:32:23
高裁判決の全文を読んでからコメントしてください。追及するべき場合は除かれるような判決になっています。
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これは (アズキ)
2008-06-16 22:07:42
母の言っていたことですが、社会は100年単位でしか動いていかない、と。今回の結果は非常に残念でしたが、きっとまた、似たような事案がもちあがるであろう、、、その時には、今回戦ったことがきっといい材料になるはず。今回は、最高裁まで戦えたことが、大きな進歩なのだと、、、。60近い女の言うことですが、お伝えしました。。。
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くさってるわ~~ (たえこ)
2008-06-17 00:25:33
元記者くんは
根っから腐ってるのか
つかって腐ったのか

どちらにしても
ゴシップ記事専門の記者なんじゃないの~

国民の意思は あんたに駄目だしよ。
釣りなら うまいけどね~
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Unknown (元キシャ)
2008-06-17 10:51:18
「追究」なのか、疑問を追っかけていった「結果として」そうなったのか、どこで線引きするんです?実態を反映しない空論を振りかざさないでいただきたいですねえ、記者としての実働経験があるのなら。

単純にドキュメントの体裁を採っていても、テレ朝の所沢ダイオキシン訴訟で最高裁が示したように「全体として視聴者の受ける印象」がどうなるかは別論ではないですか?大上段振りかぶって「追究」になる番組、どのくらいありますか。
デイリーのニュース、小企画であっても「期待」が生じて、それがマスコミの「編集権」に介入できる口実になりうるのだとしたら、こんなに危なっかしい話はないですけど。

最近では自民党、テレ朝の夜ニュースのキャスターの物言いが気に食わないといって同社の取材を一部締め出してますよねえ。
同じように口実なんかどうとだってつくでしょうに。「我々が受けた取材は『追究』ではない、そうとは聞いていない。第一『追究』なら取材には応じなかった」と攻め込まれたら、マスコミはどうするんですか。
そういう『水掛け論』に引きずり込まれるリスクが、既に一つの躊躇要因ですよ。

GPの輸送基地無断立ち入り&荷物無断持ち去りのときもそうだったけど、同じ論理構造で反対側から攻撃を受けるリスクを過小評価するクセは治したほうがいいですよ。記者経験があるなら知ってるんでしょ、『権力』側はそんなに甘いもんじゃないってことくらい。
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? (PAT)
2008-06-17 14:07:02
特にこの裁判長が色々な判決の内容から見ても 権力側に有利になる傾向があるので この人がなった時点でこうなるというのはある程度予想していました 1994年から社会保険庁長官を務めた人でもあり この責任もどうなるのでしょうね。
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元記者さん… (ヤメ蚊)
2008-06-18 05:55:49
控訴審全文を読んでからコメントしてください、と書いたのは、私のコメントに直接反論してください、という意味ではありません。

控訴審にはあなたの疑問に答えている部分があります。お読みになったのならおわかりだと思います。そこを「引用」した上で「控訴審に反論」してみてください。
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Unknown (元キシャ)
2008-06-18 12:22:52
「控訴審に反論」?一切その必要を認めません。
それを破棄し原告請求を退けた上告審判決の理由を私は妥当とし、支持しているのですから。
さらに言えば私が「疑問」を抱いているのはヤメ蚊さん、あなたに対してであって「判決」にではありません。論点をすりかえて逃げを打つのはおよしなさい。

NHKが、政治家からの「意見」に流されて番組内容をいじったこと自体は、報道機関としては自殺行為であり不見識極まるとの批判は当然です。
しかし、あなたも報道機関に属していた経験があるのなら当然承知のことと思うが、そのような「内容変更」を行うか否かも含めての「独立」ですよ。

民間媒体であれば、スポンサー企業の「お願い」を受け入れて報道のトーンを落としたりニュース化しないと決定するのか、それともスポンサー企業が広告出稿を引き上げるという経営上の不利益を甘受してでも当初方針のまま突き進むのか。そういう判断自体が「編集権」です。

政治家の介入はNGだが「か弱き民間人」なら介入してOKなどと言うダブルスタンダードは、ありえません。
まして「取材を受けたこと」をテコに「編集権」に介入を試みるなど、お門違いも甚だしい。

政権与党に対して極端に弱腰なNHKの体質への異議申し立ての必要性と、その際選択する戦術・戦法の妥当性・適切性はまったく別個の事柄です。
目的は、手段を正当化しません。
GPJが運送会社の敷地に勝手に入り込んで、無断で貨物を持ち出すことが不適切手法であるのと、同じことです。
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ついに巨悪がテレビに映りました (こやぶ)
2008-06-18 13:53:59
最高裁の長官 島田にろうが謝ってましたね。
信頼の回復を~~~

お前がやめることが一番の信頼回復だよ、悪いことばっかりやりやがって。 これ以上不正裁判やるなよ。 今までの悪事も白状しろ、悪い奴だな~
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Unknown (偽PC)
2008-06-18 15:31:56
元キシャさんはいい加減このブログに粘着するのやめたらどうだ?

あんたが国や政府の奴隷に自ら進んでなるのは勝手だけど。押し付けられても困るんだよ。
税金でクジラのお土産を喜んで自ら払い、GPの小さな窃盗だけを叩くことに専念すればいいさ。
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