tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

王道を外れたアベノミクス

2018年06月01日 11時14分40秒 | 経済
王道を外れたアベノミクス
 最近アベノミクスという言葉もあまり聞かれなくなってきましたが、これも安倍政権の経済政策がジリ貧になってきているからでしょうか。

 日銀のアメリカに倣った金融緩和で円レートを正常値に戻し、経済活動正常化のベースを作った2013~2014年は、アベノミクスは確かに光り輝いていたようです。
 大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略、の三本の矢だったでしょうか。

 その後も新三本の矢、地方創生、規制改革、安心できる社会保障などが出され、今回は働き方改革が最重要法案で、それが通ればカジノに注力という事のようです。

 有難い事に、日本経済は民間企業の活躍で、ある程度の前進は続いていますが、今一つ本来の力強さが出てきません。

 何でこんな状態になっているのか、振り返って考えてみますと、アベノミクスは、旗印は王道を行く如く見えますが、現実にやることは王道には程遠いポピュリズム、弥縫策に終始してきたようなこれまでの政治姿勢に原因があったのではないでしょうか。

 異次元金融緩和は、プラザ合意による強いられた超円高の是正という意味では、経済政策の王道だとの主張も可能ですが、その後のマイナス金利を含む超長期にわたるその継続は経済・金融政策の王道には程遠いでしょう。

 機動的な財政政策の旗印の下に行われたのは、選挙を意識した消費増税の延期、その際は財政再建目標には影響ないと言いながら、今回の2020年PB(プライマリー・バランス)回復の先延ばしです。
 良薬は口に苦くても、服用し財政を健全化して、国民の将来不安をなくすることこそ財政の王道でしょう
 
 民間投資の喚起は、民間企業の努力でそれなりの進捗は見ていますが、目立つのは外国企業M&A にも見られる日本企業の海外への投資です。
 政府の関わるものでは、原発関連の後ろ向きの投資、もんじゅの撤退などなど、残念なものが多く、地方創生、規制緩和は、総理の知人のプロジェクトに矮小化、結果は「李下に冠を正した総理」にかかわる1年を超える国会の混乱です。

 こうした「王道から逸脱」した政策の積み重ねが、アベノミクスへの国民の信頼を失くしたのでしょう。
 政府は信頼できないから、自分の生活は自分で守らなければと国民に思わせ、世界トップクラスの個人貯蓄を持ちながら(拡大する貯蓄格差もあり)、国民は将来不安に備えて財布の紐を締めた結果が経済成長の足を引っ張る個人消費の低迷でしょう。

 この貯蓄志向は、結果として経常収支の大幅黒字を生み、「何かあれば円買い(円高)」という困った状態を引き起こし、日銀の正常な金融政策を困難にするといった悪循環に繋がっているのです。
 今の日本経済の状態は、王道を踏み外した経済政策の末路のように思えるのです。