tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

なぜ物価は上がらないのか:4 特に日本ではあまり上がらないのでは

2017年12月21日 13時33分54秒 | 経済
なぜ物価は上がらないのか:4 特に日本ではあまり上がらないのでは
 日米ともに2%というインフレ・ターゲットを決めて、物価を上げようとしたのですが、どうも思うように上げらないというので、前3回、「思うように上がらないのはこうした状況のせいではないでしょうか」という事を書いてきました。

 残された問題は、では「これからも物価はなかなか上がらないのか」という問題でしょう。
 結論から先に 言ってしまえば、私は、先進国と途上国の関係、社会の雰囲気、庶民の感覚、労働組合の態度などによって変わると思っていますが、現状は、急には変わらないでしょう。特に日本は、その傾向が強いと思います

 冗談から真面目な話しまでになりますが、消費税を2%上げれば消費者物価は2%上がります。しかしそれは話が違うという事でしょう。
 資源価格が上がって輸入インフレが起き、消費者物価が2%上がった。これはどうでしょうか。資源価格は上がったり下がったりします。これもダメですね。
 生鮮食品の値段が悪天候で上がったというも同じでしょう。

 2%インフレというのはどのように物価が上がることを想定しているのでしょうか。多分、景気が良くなって、自然に毎年消費者物価が2%ほど上がるというのが正解でしょう。

 どうすればそういう事が起きるのでしょうか。主要な条件は2つあると思います。1つはコストが毎年2%ほど上がって、値上げしないと採算が取れないという売り手、もう1つは、値段が2%上がっても買いますよという買い手、その双方が揃って、初めて成立するのでしょう。

 日本経済で言えば、コストは輸入物価(太宗は 資源価格)あとは国内の 生産要素の価格、つまり人件費と金利です。
 資源価格の問題は先ほどの通りです。金利が恒常的に上がり続けるという事はあり得ません。上げり続ける可能性があるのは人件費、つまり賃金だけです。

 しかし賃金が上がっても、生産性が上がればコストアップにはなりません。コストアップになるのは、生産性以上に賃金が上がった部分です。
 そして、この場合は、賃金が上がって、買い手の所得も上がっていますから、値上げの条件(消費者物価の上昇の条件)が揃います。

 2パーセントのインフレ・ターゲットというのは、例えば、賃金が3パーセント上がって、生産性が1パーセント上がって、その結果、消費者物価が2%上がって、賃上げ3%のうち1%は実質所得増となり、生活水準が1%向上するのを目指しているのでしょう。

 ならば、アメリカは2%インフレ・ターゲットですが、超高齢化を控えた日本では、インフレは1%にして、賃上げを2%、生産性向上1%という組み合わせでもいいのです。物価上昇で年金が目減りする高齢者にはその方が歓迎かもしれません。
 連合はこの辺りの事は良く知っています。だから大幅賃上げ要求はしません。

 残る問題は、インフレ率がある程度高い方が生産性を上げやすいかどうか、物価安定ムードより、物価も賃金も上がった方が、庶民は楽しい(年金生活者はつらいですが)、などといった問題でしょう。
  最終的にまとめれば、現代の経済社会では、物価問題というのは「物価は賃金と生産性の関係」で決まるという事を関係者が理解しているかどうかで決まります。
(ここまでの前提は、為替レートが安定していること、あるいは固定相場制です)

 1960年代以降の先進国は、その理解が不足していたため、賃金さえ上げれば生活が良くなるという考えが主流で、インフレからスタグフレーションという経済運営の失敗を重ね、その窮状から脱出するために、国際競争力の低下を、最終的に「変動相場制」で解決してきたという事なのでしょう。

 生産性と賃金の関係を早期に理解した日本(日本の労使)この失敗を避け「ジャパンアズナンバーワン」とまで言われましたが、 変動相場制の中で、円高の本質(恐ろしさ)を理解しなかったため、プラザ合意で円高を認め、この30年ほどはその結果の超長期不況に苦しんだという事でしょう。

 賃金と生産性の関係を理解し、変動相場制(自国通貨の切り上げ)の本質を知った日本は、もう、失敗はしないようにしたいものです。