tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

企業における人件費支払能力測定の実務:第4回―必要となる経営比率とその計算式―

2017年02月16日 13時49分51秒 | 経営
企業における人件費支払能力測定の実務:第4回
―必要となる経営比率とその計算式―
 成長目標:付加価値生産性、体質改善目標:自己資本比率の基本的に重要と指摘しましたが、先ずは、こうした目標を具体的な数字として設定するときに、何を基準・参考にして決めるかが当然問題になります。

 これからの十数個の経営指標が企業経営上のネットワークの形で出てきますがそうした「鍵」になる経営数値の目標を決める際に検討しなければならないのが、第一に、それぞれの数字についての、わが社の過去の実績値です。
 わが社の実績値の時系列比較・分析(time series analysis)は、出来れば過去5年ほどの経営指標の推移を現実の経営実体との関連で、理解していくことが大事です。

 第二は、同業他社(ライバル企業など)が現在どのような数字であるかを調べ(横断比較=cross-section analysis)、わが社が遅れているのか、進んでいるのか、なぜそうなのかといったことを考慮し、状況に応じて判断をしていくことです。

 勿論時系列比較も横断比較も共に大切ですが、矢張りより重要なのはわが社の実績分析です。わが社にはわが社の事情があります。事情により数字は違います。問題はわが社の健全な発展の計画ですから、わが社の過去の数字の動きを現実の経営と照らし合わせて克明に分析し、そこから将来の進路を見出すことがまず大切です。

 では、この2つの経営指標としての目標数値を実現するために関連して検討しなければならない必須の経営指標を、それらの重要性なども考えながら順番に挙げておきましょう。

① 付加価値率
② 付加価値生産性
③ 1人当たり人件費
④ 付加価値構成比(人件費(労働分配率)、課税前利益、金融費用、賃借料、租税公課、減価償却費)
⑤ 減価償却率
⑥ 自己資本比率
⑦ 有利子負債比率
⑧ 金利水準
⑨ 配当率
⑩ 総資本回転率
⑪ 資本生産性
⑫ 労働の資本装備率

 これらの比率の計算式は別紙に掲げますが、B/S、P/L、SS(正味資産計算書)から引っ張ってきます。

 これだけの比率について、過去5年間の動きを分析します。勿論そのためには、それぞれの比率(経営指標)意味をよく理解していなければなりません。
 当然、人事労務担当者と、経理財務担当者の共同作業(PT)になるでしょう。過去(例えば5年間)の数字の動き、実績分析は、過去5年の企業の現場の動きの反映ですから、本当は、各部門の動きを知悉している担当者数人のPT(プロジェクト・チーム)が必要なのでしょう。

 大事な事は、これらの数字は全て有機的に関連しているという事です、実績値の中でも、資本装備率はこの程度だったから付加価値率がこの程度だった、といった関連がすべての指標にあるはずです。

 従って、計画値を計算する場合も、1つの数字だけ勝手に変えることはできません。全体がネットワークになっていて、その相互関係の中から、求める適正な労働分配率、1人当たりの人件費が出てくることになるのです。

 次回から、各比率についてのその意図する意味とその関連、そして実績を踏まえての計画手順について進めていきたいと思います。
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<別紙>
・12の比率算出(計画段階も含む)に必要な勘定科目等
純売上高、人件費、課税前利益、金融費用、賃借料、租税公課、減価償却費、有形固定資産、総資産(総資本)、自己資本、資本金、負債総額、有利子負債、株主配当、役員賞与、従業員数

・各比率の計算式
① 付加価値率=付加価値/売上高 (%)
② 付加価値生産性=付加価値/従業員数 (円)
③ 1人当たり人件費=人件費/従業員数 (円)
④ 付加価値構成比=人件費+課税前利益+金融費用+賃借料+租税公課+減価償却費:各項目の構成比の合計=100%
⑤ 減価償却率=減価償却費/償却前有形固定資産  (%)
⑥ 自己資本比率=自己資本/総資本(+割引手形) (%)
⑦ 有利子負債比率=有利子負債/負債総額(+割引手形)  (%)
⑧ 金利水準=支払金利/有利子負債  (%)
⑨ 配当率=株主配当/資本金  (%)
⑩ 総資本回転率=総資本(+割引手形)/売上高 (回)
⑪ 資本生産性=付加価値/有形固定資産 (円)
⑫ 労働の資本装備率=有形固定資産/従業員数 (円) 
(注)付加価値はここでは粗付加価値を使う
   無形固定資産が原価償却対象の場合は、有形固定資産に加える(以上)