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ビリ脱出!徳島県の巻き返しが始まった/奈良新聞「明風清音」第24回

2019年08月27日 | 明風清音(奈良新聞)
毎月1~2回、奈良新聞「明風清音」欄に寄稿している。8月22日(木)付で掲載されたのは《徳島の「秘めた宝」》だった。毎年の都道府県別宿泊客数、ビリは徳島県で、奈良県はビリから2番目だった。しかし徳島県は昨年9月から「ビリからの脱出」をもくろんでいる、という話である。まずは全文を以下に貼っておく。

徳島の「秘めた宝」
令和元年版『観光白書』(観光庁編)を開いて、ホッと胸をなでおろした。開いたページは「都道府県別の延べ宿泊者数」(資料編)で、最下位は徳島県の221万人、奈良県はビリから2番目の229万人だった。「ビリでなくて良かった」というのは何だかさもしい話だが、これには理由がある。徳島県では昨年9月から官民挙げて、ビリからの脱却に取り組んでいるのだ。

観光業界の専門誌「トラベルニュースat」のサイト(5月8日付)によると《徳島県では宿泊団体や旅行会社、交通機関、県ら官民が一体となって「『♯徳島あるでないで』プロジェクトチーム」を結成し、取り組んできた成果が実を結び始めた。同プロジェクトチームは、2018年9月から首都圏をはじめとする県外宿泊者数の全国最下位脱却に取り組んでいる。「あるでない」とは徳島の方言で「あるじゃないか」の意味で、旅行会社、航空会社、JR、宿泊業界、オンライントラベルエージェント(OTA)らが集まる全国でも珍しい集合体として注目されている》。

そのため同チームは、ウェブサイトやインスタグラムを使った情報の受発信、商談会、観光セミナーなどを行っているという。

一方8月14付本紙「奈良市 入込観光客1700万人超」によると、平成30年の奈良市は入込客数は増えたものの宿泊者は6万8000人(3.8%)も減った。県内での宿泊者の7割以上は奈良市に泊まっている。それが約7万人も減ったのだ。

冒頭の観光庁統計で宿泊者数の内訳を見ると、奈良県と徳島県の差は外国人宿泊者数の差である。奈良県の37万人に対し徳島県はわずか11万人だ。しかし奈良県は安住していてはいけない。7月18付本紙に「急増 外国人お遍路さん10年間で2%→15% 遍路宿も人気」という記事が載っていた。歩き遍路に占める外国人のシェアが7倍以上になっているという。

 
 
平成22年秋、私は巡拝団に参加し、バスで高知県の第29番国分寺から徳島県の第1番霊山寺までお参りした(逆打ち)。このとき2つのサプライズがあった。1つは「地元産小麦のうどん」。

徳島県中部の山間地でランチタイムになった。山の中にぽつんと立つ食堂では、地元の主婦たちが給仕していた。「ここは何もないところです。ちらし寿司と地粉を使ったきざみうどんをお出しします。うどんはおかわり自由ですので、どんどん召し上がってください」。「地粉のうどんがおかわり自由」と聞いて鳥肌が立った。椎茸、錦糸玉子、ちりめんじゃこの載ったちらし寿司は昔懐かしかったし、少し茶色っぽいうどんは小麦粉本来の香りがしてとても美味しい。軽く3杯は行けそうだったが腹も身のうち、2杯で我慢した。

もう1つは「阿波踊り」。5泊の巡拝団の最後の宿は徳島市内だった。夕食が出揃ったところで年配の女中さんが「ヨソと違って、徳島はこんな料理しか出せません。お詫びに私たちが阿波踊りを踊ります」と言うや否や、2人の女中さんが三味線の伴奏で阿波踊りを踊り始めた。それまで見たこともない軽快な踊りで、拍手かっさいがまき起こった。



「おもてなし」は何も特別な仕掛けが必要なのではなく、地元の生活文化を感じてもらえれば良いのだ。そんな「秘めた宝」を持つ徳島県、来年の観光白書では逆転されているかも知れないと、ひそかに恐れている。


奈良県は、とかく何事も徹底しない。奈良市など、JR奈良駅前を中心にホテルの供給は増えているが、それに見合うお客を集客できていない。県民はホテルが建つと「これで宿泊客が増える」と喜ぶが、そんなことは経済学の教科書のどこにも書いていない。供給(ホテルの施設数や部屋数)が増えると、なぜ自動的に需要(宿泊者)が増えると考えるのだろう。大阪でも京都でもホテルは増えているから、むしろお客の取り合いになっている。

いっそ奈良県は一度、ドン尻になるのが良いかも知れない。「ドン尻からの脱出」、令和2年度の観光テーマはこれになりそうである。

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