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「田原総一朗さん お辞めになっては?」(毎日新聞「特集ワイド」)

2024年05月13日 | 日々是雑感
毎日新聞夕刊(2024.5.7付)に〈卒寿・田原総一朗さん お辞めになっては? 「傲慢」反省でも直言はやめぬ〉という見出しの大きな記事が出ていた。確かに田原総一朗さんは少し耳が遠くなり、議論がかみ合わないシーンが多くなった。頑固さも増している。

しかしご本人はやる気十分だし、この記事も過激な見出しのわりには、最後は〈傲慢に堕することなく、まだまだ元気にジャーナリストとして走り続けてほしい〉で締めくくっている。私は以前、書評を書いたことへのお礼状も、いただいたことがある。皆さんは記事全文をお読みいただき、ご判断いただきたい。

卒寿・田原総一朗さん お辞めになっては? 「傲慢」反省でも直言はやめぬ
評判がよろしくない。ジャーナリスト、田原総一朗さんである。「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日系)でおなじみだが、傲慢にも映るその司会進行ぶりに批判が集まっているのだ。人間は引き際が肝心。もうお辞めになっては? 4月に卒寿を迎えた田原さんに会いに行った。

田原さんは常連である。 何の? メディアの「辞めてほしい司会者」アンケートである。「フラッシュ」電子版(2月2日)の「早く辞めたほうがいいと思う大物司会者」で、あるいは「女性自身」電子版(昨年12月8日)の同様の調査でも上位に名前を連ねてしまった。理由は「朝生」の司会ぶりにあるようだ。

昨年10月20日の放送では、国民民主党代表の玉木雄一郎氏の話をさえぎり「黙れ!」と怒鳴り、視聴者から大ブーイング。今年2月23日には、企業献金を問題視した共産党の山添拓参院議員に「共産党は企業は敵だと思っている」と決めつけ、これまた批判にさらされた。
番組を盛り上げる田原さんの「芸風」ではあるのだろうが、最近のあれこれ、さすがにあんまりでは?

「炎上は大歓迎ですよ。番組のプロデューサーにもそう言っている。世論に意識されるほうが無視されるよりよほどいい。ですが……」「黙れ!」と怒鳴られるかと思いきや、田原さん、意外に殊勝である。

「『朝生』は深夜の番組でしょう。深夜は相当に刺激が強くないと視聴率は取れない。刺激が強いというのは何か。今の常識をひっくり返すこと。政府の言っていることでもひっくり返してケンカする。そういうところからスタートした。パネリストには本音を言わせ、ウソや中途半端な釈明は許さない、という原則を自らに課したんだ」

相手の発言をさえぎって問いただすのもそのためのパフォーマンスということだが、「ただ(怒鳴ったり「傲慢だ」といった批判は)、その点は深く反省しなければならないです」とも。

だが、田原さんの「反省」はこれまでもあった。例えば「サンデープロジェクト」(同、1989~2010年)の打ち切りである。卒寿を機に出した新著「全身ジャーナリスト」(集英社新書)で、真相の一端を初めて明かした。田原さんの司会のもと、多くの権力者を追及し、時に首相を退陣に追いやった討論番組である。著書には「傲慢になりすぎた」とある。どういうことか。

田原さんは「僕が政府批判をがんがんやる。『テレビ朝日首脳部が田原を管理できなくなった。だから番組をやめてほしい』と言われました」と述懐するが、傍らにいた三女でマネジャー役を務める和田真理さんは「それはパパに配慮して『良く』言ってくれているのであって、実情は違う」と解説する。

「自分が番組を、いや日本を動かしている、という感覚があったんです。番組スタッフにもすごく横柄でね。何か気に入らないことがあると『それなら俺は出ない!』とか。一体、何を考えていたんでしょうね、と思うぐらい傲慢だった」(和田さん)

実の娘による厳しい田原評である。テレ朝がというより、現場サイドが田原さんに不信感を抱いた、ということか。「サンプロ」に出演していたジャーナリスト、高野孟さんによると「出演者を呼んでおいて、『黙れ』とか『帰れ』とか狼藉(ろうぜき)じみたことが何回かあった」という。

田原さんは「確かに傲慢になっていた。スタッフとの信頼関係は何より大切だ、と痛感した。番組打ち切りは本当に挫折でした」と反省しきりだが、あれから十数年、「傲慢」という印象はあまり変わっていないのは、冒頭のアンケートなどからうかがえる。

著書に詳しいが、田原さんはテレビに出るようになってから、スタジオ外でも政治家らと頻繁に会うようになった。歴代首相の「指南役」でもある。毎日新聞の「首相日々」を見ると、岸田文雄首相にすでに7回会っている。

「ジャーナリストなのに権力の側に回った」と見る向きもある。そのあたりも「傲慢」の一因では?

「そうじゃない。先日も森喜朗、小泉純一郎の両元首相、中川秀直元官房長官と食事をしました。2、3カ月に1度、彼らとは会っている。与野党の幹部とも、公私ともに会います。テレビで時の首相や政治家を批判したり、追及したりするだけでは、日本は良くならない。僕のジャーナリズムは、三つの柱がある」

いわく「再び日本に戦争をさせない」「言論・表現の自由を守り抜く」「野党を強くして民主主義を強固にする」――という。 「戦争をしないためにどうすればいいか、ジャーナリストとして積み重ねた知見を首相に伝える。あるいは言論の自由を守るため、メディアに圧力をかけようとする自民党や政府要人にも会う。そして野党幹部とも会い、野党を強くするために何をすべきかを話す。私心はない」

著書にはあまたの政局で演じた自身の立ち回りもつづられている。亡き安倍晋三元首相に菅義偉氏を次期首相に推し、これに安倍氏が同意した、ともある。実は安倍政権時代の20年7月に田原さんに取材した時、「超オフレコだが、次の首相はもう決まっている。菅さんだ」と聞かされ、2カ月後に実現したことに驚いたことがある。

「政権批判をやめて政権擁護に転じたわけではない。この国を良くしたい。そのために首相や要人に進言する。それに尽きます」

「朝生で死ぬのが夢」
90歳である。耳も遠くなった。物忘れも増えているらしい。本人も自覚している。何度か田原さんにお会いしているが、そのたびに名刺をいただく。手元を調べたら、とりあえず4枚出てきた。

「何年か前に補聴器を使い始めてね。昔はちょっと抵抗があったんだけど、知人の鳥越俊太郎さん(ジャーナリスト)から『ジャーナリストなんだから話が聞こえたほうがいい。自分も入れている』とすすめられた」という。

だがそれでも最近の「朝生」では受け答えがかみ合わない場面もちらほら。「老害」なんて悪口もある。そろそろ隠居生活はいかが?「いや。ジャーナリストは生涯続く仕事だからね。老いた身でないと分からない、見えないこともある。こういうジャーナリストがいてもいいんじゃない? 朝生の途中で死ぬのが僕の夢だから」

48年前のテレビ東京ディレクター時代、若き田原さんが医学専門誌「心と社会」に寄稿した一文を見つけた。所用でNHKを訪れたら、ガードマンに冷たくあしらわれ、「NHKのバッジをつけている人間以外は良識を持っているはずがない、と思い込んでいるよう」とつづり、「大NHKの傲慢さ」に激しく怒っていた。傲慢に堕することなく、まだまだ元気にジャーナリストとして走り続けてほしい。【吉井理記】


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