tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

観光事業者さん、「インバウンドに優しいおもてなし認定証」制度を利用されては?/観光地奈良の勝ち残り戦略(137)

2023年08月31日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
一般社団法人インバウンド全国推進協議会(大分市 会長 二宮謙児氏)は2023年3月から、「インバウンドに優しいおもてなし認定証」の申請受付および認定を開始した(同協議会は、インバウンド推進協議会OITAから名称変更)。さらに同年7月、訪日外国人向けメディアを運営する株式会社MATCHA(東京都中央区 代表取締役社長 青木優氏)と包括連携協定を締結した。
※トップ写真は、観光経済新聞(2023.8.23付)から拝借

1.インバウンドに優しいおもてなし認定証(同協議会のHPより)
海外を訪れるとき、最も大切なことは『安心』です。旅行者からみてひと目で安心を担保できるとすれば、それは何より大きな魅力となります。インバウンド推進協議会OITAは、インバウンドの受入体制として重要なサービスにおいて、様々な認定基準をクリアする事により獲得できる「インバウンドに優しいおもてなし認定証」の交付を開始しました。

海外から訪れる観光客にとって「インバウンドに優しいおもてなし認定証」をもつ観光施設は、意識の高い安心したサービスを受けられる証しとなるため、大いに活用いただけるよう願っています。

インバウンドの受入体制として重要な「多言語」、「案内」、「飲食」、「健康・安全」、「意識向上」、「設備」の6つの分野で、認定基準合計20条のうち、業務上該当する項目において70%以上を満たす場合は認定されます。是非この認定を通して、インバウンド対策の現状認識と更なる改善に取り組みましょう。

認定された事業者の方へは「認定証」及び「HAND BOOK」を交付します。「認定証」はインバウンド観光客にサービスの付加価値や細心の心配りがより伝わりやすいツールとしてご活用いただき、また、上記6つの分野における具体的な改善例やすぐに使えるアプリ等をたくさん紹介する「HANDBOOK」は常にお手元に置いて、現場対応に役立てられることをお勧めします。

認定料は1事業者あたり5,000円(認定証はB5サイズ、フレーム付き、ハンドブックはA4サイズ全14P)。当協議会会員の場合は税込3,000円となります。ご希望の方はこの機会に是非認定申請されることをお勧めします。認定証の詳細及び申請フォームはこちらへ 。

2.MATCHAとの包括連携協定(観光経済新聞より)
訪日外国人向けメディア「MATCHA」を運営する株式会社MATCHA(本社:東京都中央区、代表取締役社長:青木優)と、「インバウンドに優しいおもてなし認定証」制度を全国展開する一般社団法人インバウンド全国推進協議会(大分県、会長:二宮謙児)は、訪日外国人旅行者の受入体制と情報発信の強化を全国的に連携して取り組むための「包括連携協定」を締結しました。

訪日・在日外国人向けメディアを運営する株式会社MATCHAは、令和4年9月より、MATCHAに多言語で記事やスポットを無制限で投稿できる「MATCHA Contents Manager(MCM)」を自治体や観光事業者向けに全国展開し、地域の多言語情報発信を支援しています。

大分県を本拠地とする一般社団法人インバウンド全国推進協議会(旧:インバウンド推進協議会OITA)は、令和5年3月より訪日外国人客の受入体制の成熟度を測る「インバウンドに優しいおもてなし認定証」の申請受付を始めました。その後、大分県内のみならず、他県からも申請者が現れたため、組織と名称変更を行い本格的な全国展開を目指しています。

今回、両者の強みである「受入体制の強化」と「多言語情報発信」を相乗効果的に促進することを主たる目的として、インバウンドに関する包括連携協定を締結することになりました。具体的には、協議会が認定した施設を「MATCHA」で紹介し、外国人客の誘致促進を図ります。また、併せて、認定施設にはMATCHAの自動多言語化投稿システム「MCM」を無料で提供し、利用者数の拡大を図ります。


これはよく考えられたスキームだ。インバウンドに長じた事業者が認定を受け、しかもその事業者の情報が多言語に自動翻訳され、世界に発信される。外国人観光客は、安心してその事業者のサービスを受けられるのだ。

二宮謙児氏は大分県由布市の温泉旅館「山城屋」のご主人で、当ブログでも紹介させていただいたことがあるし、2019年に開催された南都銀行主催の「第12回観光力創造塾」の講師も務めていただいた。

一昨日(8/29)、当ブログで「インバウンド再燃!適正価格で高付加価値サービスの提供を」という話を紹介した。奈良県内の観光事業者さん、この円安で予想される外国人観光客の増加に合わせて、このようなスキームを利用されてはいかがですか?



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田中利典師の「父母の年忌」

2023年08月30日 | 田中利典師曰く
今日の「田中利典師曰く」は、「父母の年忌」(師のブログ 2013.7.3 付)である。10年前は、師のご父君の13回忌、ご母堂の3回忌だった。と言うことは、今年はそれぞれ23回忌と13回忌ということになる。ご父君がお亡くなりになったとき、師はご母堂に「10年間は絶対葬儀を出さないからね」と告げ、ご母堂はそれを守るかのように10年と3ヵ月後に亡くなったのだそうだ。

2017年6月、師は『父母への追慕抄』という小冊子(全36頁・300部)をお作りになった(=トップ写真)。ご父君の17回忌・ご母堂の7回忌の合同法要に際して制作されたもので、過去に「金峯山時報」などで綴られた9編が収録されていた。私にも一冊、ご恵送いただき、「そうか、こんな親孝行の仕方もあったのだな」と反省した。私は何の文章も残していなかったのだ、毎日のようにブログを書いていたのに…。では「父母の年忌」の全文を紹介する。

父母の年忌
今月13日に亡父の13回忌を迎える。早いものである。実は母も今年の10月に3回忌を迎える。それで昨日、母のをちょっと早めて、合同で2人の年忌法要を、身内だけでささやかにおこなったが、このところ、なにかにつけて、両親のことを思い出している。

その中でも、とりわけ、父が死んだときに、母に告げた自分の言葉が思い出される。私は通夜の席で、父の亡骸に寄り添っている母に「10年間は絶対葬儀を出さないからね」と言ったのである。母は黙ってうなずいていた。

父の葬儀を終えて、その後、半年くらいはなにかにつけて体調を崩し、父の死によって身も心もすっかり弱ってしまった風だった。ところが、1年もしないうちにすっかりぴんしゃんして、父の介護から解放された自由さと、気ままな生活を得たような感じで、すこぶる元気になった。

母はそれから7年くらいは元気に暮らしてくれていたが、亡くなる前の2年半は病がちで、最後は病院での10ヵ月に及ぶ闘病生活の末、一昨年に亡くなった。ちょうど父が死んで、10年と3ヵ月を生きたことになる。息子の言った「10年は葬式を出さない」という約束を守ってくれたのだった。

母と父は10歳違いだったので、享年はともに86歳。なんと月命日も同じ日であった。こんなことなら10年といわず、15年とか20年とか言えば良かったなどと、今更ながら、悔いたりもしている。

「父母がこの世を去りてふと想う我に帰すべき故郷はありや」。ーこれはこの春、ふいに浮かんだ私の駄作の歌だが、父母を失う喪失感というか、寂寥感は、年月を追う毎に深くなるようにも感じる。充分な親孝行をしてやれなかった後ろめたさの、裏返しなのかもしれない。

そんなせいか、昔はお盆や彼岸以外はあまりお墓参りなどしなかったが、ここ数年、よくお墓にもいくようになった。もう取り戻せない情愛が、人生の儚さを改めて教えてくれているようにも感じるこの頃である。

『父母(ぶも)恩重経』に曰く「父母の恩重きこと、天のきわまりなきが如し…」というが、亡くしてから気づく愚かさに今更ながら、愚禿(ぐとく)の身を恥じている。
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インバウンド再燃!適正価格で高付加価値サービスの提供を/観光地奈良の勝ち残り戦略(136)

2023年08月29日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
今回も、NPO 法人「スマート観光推進機構」理事長の星乃勝さんからいただいた情報を紹介する。観光経済新聞(2023.8.15付)「VOICE」欄に掲載された「観光は物見遊山かーコロナを経て思うこと」で、執筆者はJR東日本企画常勤監査役・日本観光振興協会顧問 の久保田穣氏である。星乃さんは、

日本は「気候」「自然」「文化・歴史」「食」に恵まれた国だ。これらの資源を活かし、日本の観光はGDPの5%を占め、「訪日外国人旅行消費額」は自動車産業、化学産業に次ぐ第3位の輸出産業となった。しかし日本の観光は、国内旅行をターゲットとしてきたため、団体旅行などマス経済から脱却できていない。ドル高、ユーロ高を背景とする中、インバウンドが欲する観光の姿が多様化しているので、高付加価値、高単価を目指さなければならない。

とコメントされている。奈良県のGDPに占める観光業の割合は5%までは行かないだろうが(観光消費単価が低いため)、新しい宿泊施設が続々と誕生している今、高価格で高付加価値の観光サービスの提供が求められている。では、久保田氏の記事全文を紹介する。

価格見直しの最良のチャンス
観光資源は「気候」「自然」「文化(歴史)」「食」の4要素からなるといわれています。これらは、日本に、各地に固有(天賦)であったり、先人たちが守り育ててきたもので、観光産業側からは利用対象であるとともにビジネスの元手でもあり、産業全体でとらえれば「資本」(無形もありますが)と位置付けることもできます。

故宇沢弘文教授は「ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を安定的に維持する」社会的装置を「社会的共通資本」としましたが、観光資源はまさにそのようなものだと思います。

実際、4つの観光資源を元手にインバウンドを誘致し、効率的経営で地域を豊かにすることによって、日本の観光はGDPの約5%を占めるに至り、外国人が日本のサービスを購入するので経済的には輸出と同列で、「訪日外国人の観光消費」は「自動車産業」「化学産業」に次いで第3位の輸出産業となって日本経済の一翼を担ってきました。昨今の円安下では、さらにその重要性は高まっています。

コロナ禍を経て、借入金の増大によるバランスシートの悪化、人手不足による収益機会の逸失、エネルギーコストをはじめとする原価高騰などにより、引き続き厳しい経営を強いられている中、売価の適正化(値上げ)に取り組んでおられる企業も多いと思います。現下においては、売価の適正化(値上げ)は喫緊のテーマだと思います。

これまで、観光分野に限らず価格競争、薄利多売、非正規労働者によるコスト削減等によって経営を維持してきたわけですが、観光の政策目標である高付加価値化の方向に照準を合わせる意味でも、高価格化は必然でしょう。

特に、昨今の円安下では円ベースで50%値上げしてもドルベースでみればコロナ前と大差なく、逆に値上げしないならば円安による利益を海外に流出させる結果になるわけです。今こそが、価格見直し(値上げ)の最良のチャンスでしょう。

日本は世界に十分通用する観光資源を備えているので、中長期的なインバウンド需要は十分確保できると思います。そのうえで、観光産業の経営の安定(高付加価値なサービスと価格、良い雇用環境、適正な利益と納税、健全な財務状況で必要な再投資など)を図り、その経済効果を、観光の「資本」である観光資源(社会的共通資本)の維持・整備、投資による拡充・魅力アップに反映させていく、といった国内側の大きな経済循環を確実にしていくことこそが持続可能な観光振興ではないでしょうか。
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田中利典師の「祝!富士山世界遺産登録」(2013年)

2023年08月28日 | 田中利典師曰く
今日の「田中利典師曰く」は、「祝!富士山世界遺産登録」(師のブログ 2013.6.23 付)。この前日に、富士山は見事、世界文化遺産への登録が決定した。今年(2023年)は奇しくも登録10周年の年にあたり、6月22日(木)には「富士山世界文化遺産登録10周年記念式典」が開催され、講演会やパネルディスカッションも行われた。富士山世界文化遺産協議会の公式HPによると、
※トップ画像は、「富士山世界文化遺産登録10周年記念ロゴマーク」

富士山世界文化遺産登録10周年記念式典(令和5年6月22日)
令和5年6月22日、富士山が世界文化遺産への登録が決定してから10年の節目の日を迎えました。これを機に、富士山世界文化遺産協議会、山梨・静岡両県の共催で、東京国際フォーラムにて記念式典を開催し、国会議員や静岡・山梨両県関係者、一般公募客など約350人が出席し、登録10周年をお祝いしました。 

式典では、静岡・山梨県の両県知事が、「富士山の普遍的価値を守り伝えながら地域の発展を目指す」との富士山世界文化遺産登録10周年共同宣言に署名するとともに、登録10周年を記念して作成した7分間の記念動画を公開し、基調講演や専門家を招いてのパネルディスカッションを行いました。
・日時:令和5年6月22日(木) 13時30分~16時10分
・場所:東京国際フォーラム ホールB5


利典師は何度か、富士山の世界遺産登録に向けた講演会やシンポジウムに登壇されていて、2008年の〈富士山世界文化遺産国際シンポジウム「世界遺産と富士山の象徴性」〉は、当ブログでも紹介させていただいた。金峯山寺は「富士山登拝修行」まで行って、「信仰の山」としての富士山の復興を祈念している。では、師のブログ記事全文を紹介させていただく。

祝!富士山世界遺産登録
パソコンをゆっくり触れなくて、遅くなりましたが、富士山の世界遺産登録、おめでたいです。見事に三保の松原の復活登録、素晴らしいです。関係者の努力に敬意を表します。少し文章を書きました。読んで下さい。

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ユネスコの世界文化遺産への登録を目指していた「富士山」は昨日無事カンボジアのプノンペンで開かれていた世界遺産委員会で登録が決定した。ICOMOS(国際記念物遺跡会議)の勧告で、登録を外されつつあった三保の松原(静岡市三保半島)も、見事復活登録された。実は何度も書いているが、私は過去数度にわたって富士山の世界遺産登録へのお手伝いとなる講演会やシンポジウムに出していただいた。それだけに今回のニュースは同慶の至りである。

最初に関わったのは5年前に静岡県で開催された富士山世界遺産登録推進の国際シンポジウムだった。紀伊山地の霊場と参詣道の世界遺産登録活動で知り合ったICOMOSのI先生に請われて、日本代表のパネリストとしてスピーチしたのだった。内容の一部を以下、紹介する。

「吉野大峯地域はここ20年くらいで環境が急速に壊れてきた。世界遺産は自然と文化を保護・保全するもの。吉野地域は世界遺産になりえる価値があると思ったし、もしならなくても登録活動を通じて、環境保全が良い方向に向かえばいいと思い活動を始めた。」

「 日本の多くの世界遺産は保全する主体者がいないが、ぜひ富士山は、浅間神社の関係者や地元の人、役所の人たちがICOMOSのいうカストーディアン(第1の門番)となってほしい。世界遺産の登録はゴールではなく、保護・保全のスタートと位置づけ、明治以前の日本人が持っていた霊性、感覚を取り戻す、霊山富士の復興に繋がるような活動にしてほしい…」といった内容である。

先月5月にも富士宮市の浅間大社での講演会に招請された。そこで語ったのは、「霊山としての富士山の世界遺産登録でなくては意味がない。世界遺産登録が実現したことで観光開発ばかりが進んでしまって、富士山におわします浅間の神様がお嘆きになるような事態に陥ってはならない…」と繰り返しお話しをしてきた。

昨年金峯山寺で「富士山登拝修行」を行ったのも、そういった霊山富士、信仰の山富士の復興を願ってのことだった。明治の修験道廃止という法難を乗り越えて修験道の法統を守り続けてきた吉野修験だからこそ、富士山の信仰の山復興に力を果たせるお役目があるのだと思っている。

今年も8月末に富士山登拝を計画しているが、ただ口でいうばかりではなく、身を以て行じていきたい。そう願っている。富士山世界遺産登録の年だからこそ、われわれ修験者の登拝を富士の諸神は待っておられるにちがいないと確信する。

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今年の私たちの富士山登拝修行は8月30日~9月1日を予定しています。
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「御墳印」で、奈良の古墳をPRしよう!/観光地奈良の勝ち残り戦略(135)

2023年08月27日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
NPO 法人「スマート観光推進機構」理事長の星乃勝さんから、こんな情報をいただいた。「御朱印」や「御城印(ごじょういん)」は聞いたことがあるが、最近は「御墳印(ごふんいん)」なるものも登場したそうだ。星乃さんは、
※トップ写真は、河合町が発行する「御墳印」

私が「御墳印帖」を見たのは、埼玉県行田市のブラタモリ(2023年7月15日)だった。今や〇〇印帳がブームだが、古墳を巡る「御墳印帖」のブームもじわりと始まっているようだ。全国の古墳が連携すれば大きな可能性に繋がる。著名な古墳は行ったことがあっても、著名ではない古墳は訪れる人も少ない。これをきっかけに大きなブームになって欲しいものだ。

奈良県内では河合町が2021年6月に4種類の「御墳印」と、地域の古墳を表紙にデザインした「御墳印帖」を製作、現在は御墳印を20種類まで増やしたそうだ。また上牧町、王寺町、広陵町にも呼びかけ、今年4月からは3町でも独自の御墳印を発行しているという。これについては、産経新聞(8/23付)が詳しく報じている。記事全文を紹介すると、

古墳めぐりで「御墳印」ブームじわり 郷土愛も育み全国へ波及
寺社を巡り授かる「御朱印」ならぬ、古墳を訪れて集める「御墳印」が広がりを見せている。名古屋市内の古墳紹介施設が令和2年に始めた取り組みだが、人気ぶりを受け、独自の御墳印を発行する自治体も出てきた。新たな観光誘客とともに、地域住民らに地元の歴史遺産を再認識してもらうことで、郷土愛の育成にもつなげたい考えだ。

御墳印を初めて発行したのは、名古屋市の「体感!しだみ古墳群ミュージアム」。令和2年9月、「尾張三大古墳」と呼ばれる白鳥塚(名古屋市守山区)と断夫山(だんぷさん)(同市熱田区)、青塚(愛知県犬山市)の各古墳の管理者と協力し、それぞれの古墳の御墳印を出した。松井致也子館長らが、御朱印と並び全国の城好きたちの間でブームになっていた「御城印」をヒントに、思いついた。

屋外で楽しめる古墳巡り
はがきサイズで、古墳名ともに各古墳の形状や出土品などをイメージした印をプリントし、ミュージアムと各古墳近くで1枚300円で販売。松井館長は「新型コロナウイルス禍で観光客が減る中で、古墳巡りは屋外で楽しめるため、たちまち評判になりました」と振り返る。

これに着目したのが、奈良県河合町だ。町内には4~6世紀の古墳が約60基点在し、有力豪族が被葬者とみられる大塚山やナガレ山など全長100メートル以上の古墳も8基ある。

3年6月に第1弾として4種類の御墳印と、地域の古墳を表紙にデザインした御墳印帖を製作。町内の書家や篆刻(てんこく)家も協力し、現在は御墳印を20種類まで増やした。対象となる町内の古墳を訪れて写真に撮影し、画像を町中央公民館で提示すると1枚100円で交付される。



「御墳印」の収集で古墳を巡る親子=奈良県河合町のナガレ山古墳

町の担当者は「見過ごされがちな歴史遺産を地域の人に再認識してもらい、郷土愛を育む目的もある」と説明。同町山坊(やまのぼう)の主婦、服部和揮子さん(46)も「御墳印の収集が趣味となり、小学生の子供2人と町内の古墳巡りを楽しんでいます。町の成り立ちに思いをはせるきっかけにもなった」と笑顔を見せる。

岡山や埼玉でも
河合町は、同じ北葛城郡内の上牧、王寺、広陵の各町に呼びかけ、今年4月からは3町でも独自の御墳印を発行。御墳印に関連する郡内の古墳や史跡を紹介する共通の「ほっかつ(北葛)御墳印帖マップ」も作製した。さらに各町のイメージキャラクターを表紙にあしらったオリジナルの御墳印帖も発行し、王寺町の担当者は「周辺エリアが協力して御墳印の普及を盛り上げていきたい」と意気込む。

一方、岡山県では「桃太郎伝説」ゆかりの岡山、倉敷、総社、赤磐の4市でつくる協議会が、全長350メートルで全国4位の規模を誇る造山(つくりやま)古墳(岡山市)や、墳丘の円状列石が有名な楯築(たてつき)遺跡(倉敷市)など県内7古墳(遺跡)にちなんだ御墳印を作り、各古墳に近い5施設で無料で押せるようにした。埼玉県では6月から行田市を中心に県内7市町で22種類の御墳印を1枚300円で販売している。

松井館長は「愛知から広がった取り組みが全国に普及するのは大歓迎。今後は各地で連携して古墳の周遊観光の拡大につながれば」と期待を寄せた。(西家尚彦)
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