よれよれ日記

谷晃うろうろ雑記

手巻きの目覚まし

2005年01月26日 | Weblog
去年の春引っ越したとき以来片づけていない荷物をのぞいたら、手巻きの目覚まし時計、トラベルクロックが出てきた。

いつ何のために買ったのか、それとももらったのか、どういう経緯でここにあるのか、全然思い出せない。三つ折りにして畳むと手のひらに入る大きさの赤い小箱になる。どう見ても女持ちのもので、先年亡くなった義母のものか、何か大事な用事の旅行、大学受験かのために、この大きさのものがこの色しか手に入らなかったのか、とんと思い出せない。

ゼンマイを切りきりまくと、コチコチと音を立て始め、電話の時報で時刻を合わせてみる。クオーツ時計でもないし、秒針もないのだからあまり意味はないのだが。

コチコチという音の、コチとコチの間に時間があるわけで、遠い昔子どもの頃布団の中で、家人が皆寝息を立てているのに、私だけ寝付くことが出来ず、そのころは両手で持ち上げるほどの大きさの目覚まし時計のコチコチをいつまでも聞いていたことを思い出した。

故知、東風。

その音を聞きながら、やがて自分も死ぬ、ということが大きく感じられ、胸が苦しくなり耳鳴りもするのだが、自分が死ぬ前に父母も死んでしまい、そしたらこの広い宇宙のどこかでまた巡り会うことが出来るのだろうか、宇宙ではどちらが上でどちらが下なのかしら。自分は落ちているのか浮かんでいるのか、わからなくなる。

朝ふいに我に返ると、コチコチはちいさくなり、台所から朝の音とにおいと寝床の外の冷気が伝わってくる。

どちらが本当の世界なのか、長い間考えてもみなかったが、なんだか声にならない声、音にならない音が、遠く近く呼んでいるような気がする。

コチコチ、こっち、こっち、、、。
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