田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『プリシラ』

2024-04-08 10:48:35 | 新作映画を見てみた

『プリシラ』(2024.4.5.オンライン試写)

 1959年、西ドイツで暮らす14歳のアメリカ人少女プリシラ(ケイリー・スピーニー)は、兵役中のエルビス・プレスリー(ジェイコブ・エロルディ)と出会い、恋に落ちる。

 やがて彼女は両親の反対を押し切って、テネシー州メンフィスにあるエルビスの大邸宅(グレースランド)で一緒に暮らし始める。これまで経験したことのない華やかで魅惑的な世界に入ったプリシラにとって、エルビスと共に過ごし、彼の色に染まることが幸せだったはずだが…。

 ソフィア・コッポラ監督が、プレスリーの元妻が1985年に発表した回想録『私のエルヴィス』を基に、世界的スターと恋に落ちた少女の波乱の日々を描く。

 バズ・ラーマン監督の『エルヴィス』(22)もそうだったが、これまで“エルビス伝説”の中で描かれてきたプリシラはあくまでも脇役として。自分にしても、彼女のイメージはアーカイブ映像や後に『裸の銃を持つ男』シリーズでレスリー・ニールセンの相手役を務めた際のものでしかない。

 ところが、この映画の主役はプリシラで、逆にエルビスが脇役になるところが新たな視点として興味深く映る。しかも、プリシラが体現する60年代のファッション、ヘアスタイル、女性特有の美意識や恋愛感、独特の色使いなどは、ガーリー(少女的)カルチャーの雄、ソフィアならではの素材だったと言えよう。

 この映画のエルビスにとってのプリシラは、人形かペットのような存在に映る。そんな現実感のない結婚生活が早晩破綻することは火を見るよりも明らか。やがてプリシラはアイデンティティーを発見し、エルビスから自立していくという流れになる。

 一方、エルビスのマザコンやロリコンぶり。あるいは精神世界、宗教、ドラッグへの依存。ウルスラ・アンドレス、ナンシー・シナトラ、アン・マーグレットら共演女優と浮名を流すプレーボーイぶりといった要素も描かれるが、どちらかと言えば、孤独な甘えん坊、大きな子どもという印象を受ける。

 また、『エルヴィス』でも描かれていたが、エルビスはくだらない映画に仕方なく出続けながら、実はちゃんとした俳優になりたいと渇望していたことがこの映画でも描かれる。プリシラと一緒にハンフリー・ボガート主演の『悪魔をやっつけろ』(53)を見て、『波止場』(54)のマーロン・ブランドやジェームズ・ディーンのようになりたいと本音を語るシーンが印象に残る。

 音楽はフランス出身のロックバンド「フェニックス」が担当。劇中で肝心のエルビスの曲をほとんど流さず、「ベイビー・アイ・ラヴ・ユー」(ラモーンズ)、『ヴィーナス』(フランキー・アバロン)、「アイ・ウィル・オールウェイズ・ラブ・ユー」(ドリー・パートン)など“別の曲”で時代や心情を表現するところは、ちょっとあまのじゃくだが面白い。

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「午後のロードショー」『ウォール街』

2024-04-08 08:04:26 | ブラウン管の映画館

『ウォール街』(87)(1991.1.19.ゴールデン洋画劇場)

父よあなたは強かった

 どちらかと言えば、オリバー・ストーンの映画はあまり好きではない。それは、映画を利用して自らの主張を強く押し出し過ぎるので、見ているこちらは辟易させられるからだ。

 例えば、同じように社会派や告発映画を撮り続けながら、そうした嫌味を感じさせないシドニー・ルメットらの作品と見比べてみれば一目瞭然である。

 だから、この映画も公開当時の大ヒットを知りながら、今まで見ずにいた。お得意のベトナム物ではないにせよ、金融界の裏側を描いたと聞いて、またもやえげつない暴露話や持論を聞かされる気がして敬遠していたのだ。

 ところが、実際に見てみたら、これが結構面白かったので困った。映画を見て、面白くて困ったというのも妙だが、オリバー・ストーンという監督を手放しでは認めたくない、褒めたくないという、こちらの変な意地がそう思わせたのだろう。

 とはいえ、この映画の畳み掛けるようなテンポの良さは素直に認めなければならないと思うし、この映画でアカデミー賞を取ったマイケル・ダグラスも、映画自体の出来の良さに随分と助けられたところもあったのではないかと思う。

 だが、実はこの映画に引かれた理由は、オリバー・ストーンでも、マイケル・ダグラスでも、若手のチャーリー・シーンでもなく、マーティン・シーンの存在にあった。

 予告編を見た時には、何だか売れっ子の息子のチャーリーに引っ張られただけの出演のように見えて、情けないなあ、などと勝手に思っていたのだが、何の何の、この映画で一番光っていたのは彼であり、この見事なしっぺ返しに拍手しながら見終わった気がする。まさに「父よあなたは強かった」であった。

 さて、先に見た『ワーキング・ガール』(88)にしろ、この映画にしろ、今やアメリカ人も、日本人のように夜も日も明けず、寝る間も惜しんで働かなければビッグにはなれない、ということが描かれている。われわれ日本人がアメリカをうらやむ時代は終わった、ということなのだうか。

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「BSシネマ」『エアフォース・ワン』

2024-04-08 07:10:47 | ブラウン管の映画館

『エアフォース・ワン』(97)

ついに大統領にまで出世したハリソン・フォード
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0d9267bfabd2336dd77879f6da1a57bc

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