田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ポケット一杯の幸福』(61)

2015-11-30 08:31:22 | All About おすすめ映画

人々の善意が心に染みる映画



 この映画は、『或る夜の出来事』(34)『スミス都へ行く』(39)『素晴らしき哉、人生!』(46)など、数々の名作を残したフランク・キャプラ監督の最後の作品です。

 キャプラといっても、若い方にはなじみが薄いかもしれませんが、私は、現在作られている“ハートウォームもの”と呼ばれる映画やドラマのほとんどが、彼の映画の影響下にあるといっても過言ではないと思っています。

 彼の映画は、主人公を絶望的なピンチに立たせながら、ラストで奇跡を起こしてそれを救うという非常に分かりやすいものが多いのですが、その奥には鋭い人間観察の目が光っています。ですから夢物語なのに現実味や説得力があるのです。

 では、この映画のあらすじをご紹介しましょう。

 ニューヨークの貧しいリンゴ売りの老女アニー(ベティ・デイビス)は、スペインに留学している娘に「自分は貴婦人だ」と嘘をついていました。ところが、娘が伯爵家の御曹司の婚約者を連れて帰国することになったからさあ大変。

 そんなアニーを救うためにお人好しのギャング(グレン・フォード)が、仲間や知り合いを集めて彼女を貴婦人に仕立てる大作戦を敢行します。

 初めは果たして作戦は成功するのか? というところに興味がいくのですが、やがてアニーのために右往左往する人々の善意が心に染みてきます。作戦の成否は見てのお楽しみです。

 『刑事コロンボ』のピーター・フォークをはじめとする脇役たちの演技にも注目してみてください。

 なおこの映画は、キャプラにとっては『一日だけの淑女』(33)に続いて2度目の映画化(原作はデイモン・ラニアン)でした。彼はこの話がとても好きだったそうです。

 ジャッキー・チェンも『奇蹟』(89)としてリメイクしているので、見比べてみるのも楽しいでしょう。

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【ほぼ週刊映画コラム】『007 スペクター』

2015-11-28 18:36:29 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

ダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドの集大成
『007 スペクター』



詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1026304
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「田中オヤジがおすすめするお正月映画2016」

2015-11-27 09:30:43 | レッツエンジョイ東京

レッツエンジョイ東京
「田中オヤジがおすすめする2016年お正月映画」公開中



ラインアップは

相変わらずボンドは大忙し
『007 スペクター』

久々の三役揃い踏み
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』

事実は小説よりも奇なり
『ブリッジ・オブ・スパイ』

巨匠に好かれる二宮和也!
『母と暮せば』

とぼけたオーウェン・ウィルソンがいい!
『マイ・ファニー・レディ』

ディカプリオがやりたかったのでは…
『ディーン、君がいた瞬間(とき)』

ボンドは6代目、ロッキーはスタローンの一代年寄
『クリード チャンプを継ぐ男』

詳細はこちら↓
http://www.enjoytokyo.jp/feature/newyear/movie/

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【インタビュー】『劇場版 びったれ!!!』田中圭

2015-11-25 10:22:24 | インタビュー

11月28日公開の『劇場版 びったれ!!!』に主演した田中圭にインタビュー取材。

ここ↓
http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1023254



 コミックが原作でテレビドラマから発展した本作は、「お人好しで頼りないシングルファーザー」「切れ者の司法書士」「元極道」という
“三つの顔”を持つ伊武努が主人公のリーガルドラマ。

 「びったれ」とは広島弁で小心者を意味するらしい。田中圭が一人三役を演じて頑張っている。ロケ地となった広島の湯来温泉に行ってみたくなった。

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【ほぼ週刊映画コラム】『美術館を手玉にとった男』『キャノンフィルムズ爆走風雲録』

2015-11-21 20:15:03 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

ユニークなドキュメンタリー
『美術館を手玉にとった男』と『キャノンフィルムズ爆走風雲録』

 

詳細はこちら↓
http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1025355
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『ファイナル・デッドブリッジ』

2015-11-21 09:00:32 | 映画いろいろ



 予知夢を発端として、死の運命に取り付かれた若者たちの恐怖を描く『ファイナル・デスティネーション』シリーズの第5弾。飛行機、高速道路、ジェットコースター、サーキットと来て今回はつり橋ときた。

 このシリーズは、登場する若者たちは決して死の連鎖から逃れられないという設定だから、突然彼らに訪れる死の瞬間の突飛さが見せどころとなり、おー、そう来るのかと感心させられたりもするのだが、それはあくまで他人事として見ているからに過ぎない。

 このシリーズを見ていると、日常の中に“死の原因”はいくらでも転がっていると感じさせられ、1日が無事に終わること自体が奇跡なのかもしれないとさえ思えてくるからだ。メビウスの輪のような最後の落ちも怖かった。

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『FOUJITA』

2015-11-19 09:00:59 | 新作映画を見てみた



 小栗康平監督が、画家の藤田嗣治の半生を、華やかなパリ時代と帰国後の戦中の日本時代に焦点を当てて描く。パリ時代はデカダンな雰囲気を出すためにフェリーニのようなタッチを狙ったと思われるシーンもある。

 藤田に扮したオダギリジョーは、風貌やフランス語のセリフも含めて健闘しているのだが、フランスの俳優(エキストラ)たちとの間が合わず、何ともちぐはぐな印象を受ける。これは演出の不備によるものではないか。

 この映画を見ていると、藤田の持つ不思議さは何となく分かるのだが、猫と女の画を得意とし「乳白色の肌」と称されたパリ時代から帰国後の精緻な戦争画への転換の謎など、何故?という核心にはほとんど触れていない。というか、あえてぼかして描いたのだろうが、何だかはぐらかされたようで見ていてすっきりしない。

 また、セリフを削ぎ落として絵で見せるという手法は、後半の戦中の日本が舞台になると生きてくるが、全体的には暗い画面も手伝ってもやもやとした印象を受け、こちらも成功しているとは言い難い。

 そんなこの映画は、東京国際映画祭で見たのだが、残念ながら途中で席を立つ外国人の姿が目立った。

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『コードネームU.N.C.L.E.』

2015-11-18 11:23:53 | 新作映画を見てみた



 ロバート・ボーン、デビッド・マッカラム共演のテレビシリーズ「0011ナポレオン・ソロ」のリメーク版。舞台は1960年代の米ソ冷戦時代、敵対するCIAのソロとKGBのクリヤキンがコンビを組んで、スパイチームを結成するというもの。テレビシリーズでは描かれなかった2人の前日談を創造し、60年代のしゃれたファッション、音楽、車や貴金属といったアイテムやアクセサリーを散りばめながら描く。

 ソロ役は『マン・オブ・スティール』(13)(スーパーマン)のヘンリー・カビル、クリヤキン役は『ローン・レンジャー』(13)のアーミー・ハマー。スーパーマンもローン・レンジャーももともとはテレビシリーズだから、スーパーマン+ローン・レンジャー=ナポレオン・ソロということになる。テレビ時代には考えられなかった組み合わせだ。

 というわけで、テレビシリーズに親しんだ者にとっては何ともうれしい映画なのだが、『シャーロック・ホームズ』シリーズのガイ・リッチーが監督しているだけに、ビクトリア朝のホームズとワトソンを、60年代のソロとクリヤキンに置き換えたようにも見える。ところで、これもまた序章映画。シリーズ化を見越したラストシーンを見ながら、もともとテレビシリーズだから仕方ないか、と無理矢理自分を納得させた。

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【ほぼ週刊映画コラム】『ローマに消えた男』

2015-11-14 19:42:37 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

真実とうその境界線はどこにある?
『ローマに消えた男』



詳細はこちら↓
http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1024330
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『ファール・プレイ』

2015-11-11 09:00:52 | 映画いろいろ

 久しぶりにテレビで見直す機会を得た。初めて見た79年の公開時に書いたメモを。



 この映画の監督であるコリン・ヒギンズが脚本を書いた『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』(71)に続いて、 『大陸横断超特急』(76)を見た時に、面白い映画作家が出てきたと思い、陰ながら注目していたのだが、監督デビュー作のこの映画を見て、あらためてその非凡さを知らされた。ブライアン・デ・パルマがヒッチコックのサスペンス面での後継者だとすれば、このヒギンズはユーモア面での後継者だと言えるだろう。ちなみに、ファール・プレイとは“反則”の意。

 この映画は、山あり谷ありのストーリー展開、ヒロインのゴールディ・ホーンの魅力もさることながら、ユーモアに加えて、ちょっとしたサスペンスがあり、おまけに『ブリット』(68)をほうふつとさせるサンフランシスコでのカーチェイスや、オペラ(「ミカド」)の挿入もありとサービス満点。

 バージェス・メレディス対レーチェル・ロバーツの珍妙なカラテ合戦や、怪しい指揮者役のダドリー・ムーアのずっこけぶり、妙な日本人夫婦といった脇役たちも大活躍。最後は、ヒッチコックの『知りすぎていた男』(55)のパロディを経て、めでたしめでたしのハッピーエンドで一件落着。いやはや楽しい映画でした。

【今の一言】今から30年余り前に書いた何とも稚拙な一文だが、当時、コリン・ヒギンズに期待していたことだけはよく分かる。そのヒギンズは、この映画の後『9時から5時まで』(80)を監督し、好評を得たが、88年にエイズのため47歳の若さで亡くなっている。それにしても、我ながら、主役のチェビー・チェイスについて全く触れていないのはいかがなものかと思う。

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