田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

「午後のロードショー」『デンジャラス・ラン』

2024-02-29 07:16:18 | ブラウン管の映画館

『デンジャラス・ラン』(12)(2012.8.13.東宝東和試写室)

 前作『アンストッパブル』(10)でベテラン機関士として新米のクリス・パインをしごいたデンゼル・ワシントン。今回は逃亡中の元CIA敏腕諜報員のフロストとして、ライアン・レイノルズ扮するCIAの“隠れ家”の新米管理人マットをしごく。

 彼らが巻き込まれる事件には大きな陰謀が隠されているという展開も両作は似ている。プロデューサーも兼ねるワシントンだが、今の自分を生かす役を考えるとこうしたパターンに落ち着いてしまうのだろうか。

 原題は「Safe House=安全な家(隠れ家)」で“果たして管理人のマットは重要人物のフロストを安全な家まで連れていくことができるか…”という意味。彼らの運命が交錯し、逃亡が始まるところでは期待が高まる。

 ところが、ここからの撮り方がなんとも雑で、アクションや映像は一見派手なのだが、肝心の追跡劇、逃亡劇としては甚だ緊迫感に欠けるのだ。

 しかも、この手の映画の最大の面白さは、例えば『手錠のまゝの脱獄』(58)『48時間』(82)『ミッドナイト・ラン』(88)のように、性格が異なるコンビの呉越同舟の中から生まれる友情という点にあるのだが、この映画では、フロストとマットの関係の描き方が中途半端で、バディ(相棒)ムービーとしても盛り上がらない。というわけで、全体的にはちょっと困った感じの映画という印象になってしまった。

By The Way:アウトロー的なイメージが強かったサム・シェパードが、すっかり老けて体制側の最たるCIAの副長官を演じているのが皮肉っぽくて面白かった。


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「BSシネマ」『敦煌』

2024-02-29 07:11:47 | ブラウン管の映画館

『敦煌』(88)(1988.8.20.日比谷スカラ座)

 11世紀、中国・宋の時代。科挙の試験に落ちた趙行徳(佐藤浩市)は、新たな希望を求めて新興国・西夏へと向かう。道中、西夏軍漢人部隊を率いる朱王礼(西田敏行)に徴用され同行することになった行徳は、人々との出会いや戦いを経て、敦煌の文化遺産を守るため奔走することになる。

 舞台は中国、シルクロード、砂漠と聞いて、『アラビアのロレンス』(61)のことを思い出し、果たして「ロレンス」のように自然の景観に負けない映画に仕上がっているのかという危惧が浮かんだ。

 加えて、この映画と同じく井上靖の原作を映画化した『天平の甍』(80)を見た際に感じた、中国人に扮した日本の役者が、日本語でセリフを語ることに対する違和感を覚えずに済むかということ。この2点が見る前に引っ掛かっていた。

 そして、見終わった今、そうした危惧が全て解消されてはいなかったが、この壮大なストーリーを、“大作職人監督”佐藤純彌がそつなくまとめていたし、日本映画も金さえ懸ければそれなりのスペクタクルシーンが撮れることも証明された。

 さらに、『アラビアのロレンス』のモーリス・ジャールを思わせるような、佐藤勝のスペクタクル音楽の良さも併せると、多少の不満は残るものの、スタッフ、キャストの健闘をたたえたくなった。

 何より、この映画は、戦乱と文化、無常観とロマンという、相反しながらも共存する歴史の持つ二面性を、原作の味を損なうことなく描いたところが見事だった。

 戦うことに命を懸けて散っていった朱王礼をはじめとする名もなき男たちと、敦煌の文化を必死に守り抜こうとした趙行徳ら無名の男たちを主役にし、実際に歴史に名を残した李元昊(渡瀬恒彦)や曹延恵(田村高廣)を脇役として描いているから、歴史の持つ皮肉や二面性を強く印象付けることができたのだと思う。そして、その背景には中国の壮大な国土や自然、長い歴史があり、それらが無言の内にこの映画を支えたのだ。

 ベルトルッチの『ラストエンペラー』(87)、スピルバーグの『太陽の帝国』(87)、そしてこの映画と、今や中国は映画の舞台として格好の場所になりつつつある。

【今の一言】30数年前は中国に対して、可能性を感じて、いいイメージを抱いていたのだ。

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『おとなのデジタルTVナビ』2024.4月号

2024-02-28 14:22:28 | おとなのデジタルTVナビ

『おとなのデジタルTVナビ』(2024.4月号)

「劇場へ行こう!」(新作映画紹介)

「BS松竹東急」

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「午後のロードショー」『エイリアン』

2024-02-28 07:20:24 | ブラウン管の映画館

『エイリアン』(79)

「宇宙ではあなたの悲鳴は誰にも聞こえない」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b85a56c2fda85004ad3662997d8f607f

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「BSシネマ」『ザ・ファーム 法律事務所』

2024-02-28 06:20:23 | ブラウン管の映画館

『ザ・ファーム 法律事務所』(93)

「惜しいんだな、これがっ」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/67ae1d7fa5a73764d22b0103c374a58a

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SCREEN ONLINE「コロンビア・ピクチャーズ100年のあゆみ」

2024-02-27 09:01:12 | SCREEN スクリーン

「SCREEN ONLINE」に「アカデミー賞作品賞最多受賞スタジオ! コロンビア・ピクチャーズ100年のあゆみ」がアップ。

https://screenonline.jp/_ct/17684836

コロンビア・ピクチャーズと共に時代を彩ったスター&監督たち!
https://screenonline.jp/_ct/17686477


本誌はこちら

https://x.gd/Xhvh3

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『コヴェナント 約束の救出』

2024-02-27 07:16:40 | 新作映画を見てみた

『コヴェナント 約束の救出』(2024.2.26.オンライン試写)

 2018年、アフガニスタン。タリバンの武器や爆弾の隠し場所を探す部隊を率いる米軍曹長ジョン・キンリー(ジェイク・ギレンホール)は、不承不承アフガン人通訳のアーメッド(ダール・サリム)を雇う。

 だがアーメッドは優秀で、部隊の危機を救う。その後、キンリーの部隊はタリバンの爆発物製造工場を突き止めるが、大量の兵を送り込まれ、キンリーとアーメッド以外は全滅してしまう。キンリーも瀕死の重傷を負うが、アーメッドが必死の思いで100キロ先の米軍基地まで運び、キンリーは本国への帰還を果たす。

 しかし自分を助けたためにアーメッドがタリバンから狙われ、身を隠していることを知ったキンリーは、彼を救うため再びアフガニスタンへ向かう。

 ガイ・リッチー監督が、アフガニスタン問題とアフガン人通訳についてのドキュメンタリーに着想を得て撮り上げた社会派ドラマ。

 この映画がユニークなのは、極限状態を共に生き抜いた戦友とも呼ぶべき特別な関係から生じる、日本的とも思える義理や人情、恩義に報いることを描いているところ。エンディングにも、コヴェナント=契約、ボンド=絆、プレッジ=誓い、コミットメント=約束という字幕が出る。
 
 そんなキンリ―とアーメッドの関係を見ていると、カンボジア内戦を舞台に、アメリカ人ジャーナリストとカンボジア人通訳の友情を描いた『キリング・フィールド』(84)を思い出すが、西部劇によく見られる、白人と白人に味方するインディアンの通訳との関係にも似ている気がする。

 例えば、西部劇的に言えば、この映画の場合はタリバンが憎きインディアンの役割で、悪いのは彼らの方なのだから、自分たちの身を守るためなら彼らをいくら撃ち殺しても構わないということになる。

 そしてインディアン=タリバンの追手から逃れる逃亡劇が繰り広げられ、最後は騎兵隊=米軍が現れるという仕組み。

 リッチー監督は、実はこうしたアメリカの短絡的な思考を揶揄したかったのかもしれない。だから、この映画の場合は、美談や感動的な話ではなく、決して気分は晴れず、むしろ苦い話としての印象の方が強くなるのだ。

 ところで、この映画のオープニングにアメリカの「名前のない馬」が流れる。ベトナム戦争下の72年のヒット曲だ。アメリカはイギリスで結成された3人組のバンドだが、3人とも父親はロンドンに駐留するアメリカの軍人だった。ガイ・リッチーもイギリス人。だからアメリカ合衆国から見たら”異邦人”が「砂漠」を歌ったこの曲を使ったのか。


『キリング・フィールド』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0860c425ec7cb9666ac58675b8e76c8b

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「BSシネマ」『グリーン・デスティニー』

2024-02-27 06:46:57 | ブラウン管の映画館

『グリーン・デスティニー』(00)(2005.12.19)

 

 チャン・イーモウの『英雄 HERO』(02)もそうだったが、アン・リー監督のこの映画も、面白そうなストーリーなのにワイヤー・アクションの使い過ぎで興醒め。チャン・ツィーよりもミシェル・ヨーの方がいい感じ。これでアカデミー外国語映画賞受賞はちょっと誉めすぎだろ。


『HERO 英雄』

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/85203b5c567dff9a82ba0eecd2574df5

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『映画の森』「2024年 2月の映画」

2024-02-26 15:55:18 | 映画の森

共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)2月25日号で、『映画の森』と題したコラムページに「2024年2月の映画」として、5本の映画を紹介。独断と偏見による五つ星満点で評価した。

投資や株に関する知識がなくても楽しめる
『ダム・マネー ウォール街を狙え!』☆☆☆

名作がミュージカルとして生まれ変わった
『カラーパープル』☆☆☆

ビクトル・エリセ、31年ぶりの新作
『瞳をとじて』☆☆☆☆

上野介の身代わりが主人公の“ニュー時代劇”
『身代わり忠臣蔵』☆☆☆

石川県の復興への“応援映画”に
『レディ加賀』☆☆☆

クリックで拡大↓

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【インタビュー】「SHOGUN 将軍」アンナ・サワイ

2024-02-26 11:41:51 | インタビュー

 徳川家康をはじめとした歴史上の人物にインスパイアされたジェームズ・クラベルの小説をドラマシリーズ化した「SHOGUN 将軍」が、2月27日からディズニープラスの「スター」で独占配信される。

 戦国一の武将・吉井虎永(真田広之)と、その家臣となった英国人航海士のジョン・ブラックソーン(後の按針=コズモ・ジャービス)、2人の運命の鍵を握る謎多きキリシタンの戸田鞠子が繰り広げる壮大な叙事詩だ。本作で、鞠子を演じたアンナ・サワイに話を聞いた。

「今回は女性のキャラクターが考えていることもきちんと描かれています」
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1423858


『SHOGUN 将軍』(24)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e309bef5cf171638bfef8c483c173ae0

「SHOGUN 将軍」ジャパンプレミア
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4f1d99f9fd34a691fc1da1d5126f2417

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