共同通信エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』
今週は
遺骨を通して生と死を見つめる『アイ・アム まきもと』『マイ・ブロークン・マリコ』
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『ほぼ週刊映画コラム』
今週は
遺骨を通して生と死を見つめる『アイ・アム まきもと』『マイ・ブロークン・マリコ』
『舞妓Haaaan!!!』(07)(2011.9.18.チャンネルNECO)
舞妓フェチ男が主人公のハチャメチャ映画(旧ブログ「お気楽映画談議」から)
夫:この映画は、京都や舞妓に関するガイド的な面白さはあるけど、主人公の妄想や漫画的でめちゃくちゃな展開を心底楽しめる人は少ないと思うな。
妻:若い人たちはにはウケるのかしらね。
夫:この映画の脚本を書いたクドカンや三谷幸喜は、やっぱり舞台の人で映画向きではないと感じたよ。くどいし、映画のテンポじゃないんだよななあ。
妻:たたみかけるようなセリフはお芝居のようだし、でも時々スローの映像が入ったりして…。
夫:これが遺作となった植木等から伊東四朗、阿部サダヲへと、喜劇人の継承をしたかったのかな。
妻:難しいことは分かりませんが、私は数年前に京都で舞妓さんの完全コピーのコスプレをして写真撮影したことがあります。舞妓LOVE。
夫:俺は舞妓フェチじゃないよ。
『シコふんじゃった。』(92)から30年後。卒業と引き換えに廃部寸前の相撲部に渋々入部した“崖っぷち”大学生の森山亮太(葉山奨之)は、たった一人の部員で、相撲一筋の大庭穂香(伊原六花)と出会う。
ディズニープラスで10月26日から配信開始のドラマ。傑作! 総監督は周防正行。
https://www.youtube.com/watch?v=6b1zISB7INY
『シコふんじゃった。』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/2eec70c151635bf89258350deb0b8848
エンディング曲は、先日亡くなったおおたか静流の 「林檎の木の下で」
https://www.youtube.com/watch?v=RlDFI_uOnaw
周防正行監督作品
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/823a0e97b2f7c37c01039d5142b55128
『マイ・ブロークン・マリコ』(2022.9.27.オンライン試写)
鬱屈した日々を送るOLのシイノトモヨ(永野芽郁)は、テレビのニュースで親友のイカガワマリコ(奈緒)が自殺したことを知る。突然の出来事にシイノはうろたえるが、自分ができることを考えた末、マリコを虐待していた父親(尾美としのり)から遺骨を強奪して逃亡。マリコの遺骨を抱いて旅に出る。
平庫ワカの同名コミックをタナダユキ監督が映画化。『川っぺりムコリッタ』『アイ・アム まきもと』に続いてまたも遺骨絡みの話が展開する。もはやこれは単なる偶然ではなく“不思議な流行”とでも呼ぶべき流れなのか。
世をすねたように生きるシイノと、親や恋人からの虐待に遭い、精神的に壊れていくマリコが主人公だけに、話は暗く、重苦しいのだが、乱暴な言葉遣いの割に、根は優しくたくましいシイノの姿に救われる思いがする。
そして、シイノが旅先で出会ったマキオ(窪田正孝)の「もういない人に会うには、自分が生きてるしかないんじゃないでしょうか。あなたの思い出の中の大事な人と、あなた自身を、大事にしてください」という言葉が、この映画のキーワードだろう。
永野と奈緒が、これまでのイメージを一変させるような好演を見せるが、女性の心理や行動原理という点では、これは男性の監督では撮れない映画だったのでは、という気もするが、そんなふうに言うと、今は“性差別”ということになるのかな。
『アイ・アム まきもと』(2022.9.26.オンライン試写)
『舞妓 Haaaan!!!』(07)『なくもんか』(09)『謝罪の王様』(13)の水田伸生監督と阿部サダヲが4度目のタッグを組み、英・伊合作の『おみおくりの作法』(13)を原作にしたヒューマンドラマ。
庄内市役所で、人知れず亡くなった人を埋葬する「おみおくり係」として働く牧本(阿部サダヲ)は、故人の思いを大切にするあまり、世間のルールを無視し、周囲に迷惑を掛けてばかりいた。
そんなある日、新任局長の小野口(坪倉由幸)が「おみおくり係」の廃止を決定。孤独死した老人・蕪木(宇崎竜童)の案件が最後の仕事となった牧本は、蕪木の身寄りを探すため、彼の友人や知人を訪ね歩く。
そして、蕪木の人生をたどり、彼の知られざる思いを知った牧本自身にも少しずつ変化が起こり始める中、蕪木の娘・塔子(満島ひかり)と出会う。
几帳面で誠実だが孤独で変わり者という牧本のキャラクター設定は、オリジナルのジョン・メイ(エディ・マーサン)と同じだが、水田監督と阿部のコンビ作ということで、多少コメディーの要素も入れ込んでいる。
『おみおくりの作法』のウベルト・パゾリーニ監督にインタビューした際に、「脚本のきっかけは、実際の民生係の仕事についての記事を読んだこと。そこに、孤独、死、人と人とのつながりについての普遍的な問題が含まれていると感じた」と語っていたが、そうしたテーマも概ね踏襲している。
ただ、両作の大きな違いは、イギリスと日本との埋葬や葬儀の仕方や制度にあるだろう。イギリスでは、孤独死した人は何人かが一緒に同じ穴に埋葬され、墓標はなく番号だけが表示されるというが、日本では火葬された遺骨をどうするのかが焦点となるからだ。
その点、この映画は、やはり引き取り手の無い遺骨が登場する『川っぺりムコリッタ』との共通性もあり、今の日本が抱える問題の一つとして提起している。
また、死者に思いを込め過ぎる牧本に対して、小野口局長に「葬式というのはね、結局遺族のためのものですよ」「死んだら何も残らない。それでおしまい」という現実的な意見を言わせるところも効果を上げている。
その分、牧本が自分が弔った人々の写真を丁寧にアルバムに収めていくシーンが、オリジナル以上に印象に残ることになる。それは亡くなった人たちの生きた証しであり、人は決して無名でも無縁でもないことを表しているからだ。そしてこれがファンタスティックなラストシーンへとつながる。
パゾリーニ監督は『おみおくりの作法』を作る際に、黒澤明監督の『生きる』(52)や小津安二郎監督の諸作を参考にしたと語っていた。そう考えると、この映画は一種の“里帰り映画”となるのかもしれないと感じた。
【インタビュー】『おみおくりの作法』ウベルト・パゾリーニ監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/7ff913335cd760488f4af395aea73349
12月16日から全国公開される『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の公開に先駆け、9月23日から2週間限定で『アバター:ジェームズ・キャメロン3D リマスター』が劇場公開されている。
「配信で見るのと、スクリーンの3Dとでは、全く違う体験だ」
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1351269
ルイーズ・フレッチャーといえば、何といっても『カッコーの巣の上で』(75)でのラチェッド看護師長役に尽きる。
ジャック・ニコルソンをはじめ、精神病患者を演じたくせ者俳優たち(ウィリアム・レッドフィールド、ブラッド・ドゥーリフ、クリストファー・ロイド、ダニー・デビート、ウィル・サンプソン、マイケル・ベリーマン、スキャットマン・クローザース、ビンセント・スキャべリ、ポール・ベネディクト)らを向こうに回し、独りで憎まれ役に徹した名演で、見事にアカデミー主演女優賞を受賞した。(確かにこわもてではあるが、よく見れば個性的な美人なのだが…)
その後は、博士役を演じた『エクソシスト2』(77)、『カサブランカ』(42)のイングリッド・バーグマンのパロディを演じた『名探偵再登場』(78)などが印象に残る程度だったが、たとえ1本でも、歴史に残るような代表作を持てたことは、女優としては、幸せだったのではないかと思う。
ロボトミー手術『カッコーの巣の上で』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c370145c9da4bf44aa5f59e5a16ecff7
ミロス・フォアマン監督が亡くなった
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/3900eba684df6aee4636ce212d91f0b5
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結婚や夫婦生活に関する“あるある”が満載の『犬も食わねどチャーリーは笑う』
ユニークなビートルズ秘話『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』
詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1351253