田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

「ひよっこ」と『抱きしめたい』

2017-06-29 10:23:27 | ビートルズ

 朝ドラの「ひよっこ」、今週のサブタイトルは何と「ビートルズがやって来る」だ。

 昭和30~40年代を舞台にしたこのドラマは、これまでも、加山雄三の「恋は赤いバラ」を海で歌うような、いいシーンがあったが、今週は1966年の6月末から7月初頭にかけてのビートルズの来日にまつわる騒ぎを描いている。

 ドラマーでもあるシシド・カフカが「私はリンゴが好き」と語る楽屋落ちも楽しい。それにしても、チケットの抽選に応募させるために、ライオン歯磨きは相当儲けたのだろうなあ。

 で、ビートルズが宿泊したのが、赤坂の東京ヒルトンホテル(後のキャピトル東急ホテル)。そうか、それでヒロインのみね子(有村架純)が働く場所を赤坂にしたのか。

 そのビートルズをこよなく愛する、おかっぱ頭の“変なおじさん”の宗男を演じている峯田和伸がいい味を出している。

インタビュー記事は↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1113548

 そんな展開を楽しく見ながら、この2年前の64年に、ビートルズが初渡米した際の騒動を描いた『抱きしめたい』(78)というキュートな映画があったことを思い出した。



 初見の際のメモを。(1982.8.12.自由ヶ丘武蔵野推理劇場.併映は『レット・イット・ビー』)

 昨日のトビー・フーパーの『ポルターガイスト』(82)に続いて、スピルバーグがプロデュースした映画を見た。ロバート・ゼメキスの『抱きしめたい』である。

 1964年、ビートルズの渡米からエド・サリバン・ショーへの出演までのアメリカの狂乱ぶりを、何とか彼らを見に行こうとするニュージャージー州の田舎町の若者たちの姿を中心に、明るくコミカルに描いている。

 ジョージ・ルーカスの『アメリカン・グラフィティ』(73)同様、ベトナム戦争が激化する以前のアメリカの青春の一断片として見れば、ほほ笑ましい気さえする。

 ここではビートルズの足(もちろん偽物)しか映らないが、この時期の彼らのファンの大多数は若い女性で、まだアイドル扱いされており、後に彼らが、音楽的、思想的に大きく変わっていくことなどは想像外だったろう。

 狂乱の主役たちも、今では中年となり、親となって子供に説教しているなんて人も少なくはないはず。そんな彼らが、この映画を見たらどんな思いを抱くのだろうか。などと、ちょっと意地悪な感慨を持った。

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半村良の“嘘部三部作”

2017-06-27 09:53:18 | ブックレビュー

 1970年代に書かれた半村良の“嘘部三部作”『闇の中の系図』『~黄金』『~哄笑』を再読。



 このシリーズは、嘘つきの天才、浅辺宏一を主人公に、日本の歴史を裏から操りつづけてきた謎の一族・嘘部の暗躍を描いている。

 『闇の中の系図』は、しがない工員の浅辺が、秘密組織「黒虹会」の一員となるピカレスクロマン、『~黄金』は、邪馬台国伝説を軸に、嘘部にだまされる側の視点から描いた伝奇ロマン、『~哄笑』は、政界の暗部を軸に、ホテルに集うさまざまな思惑(嘘)を持った人々を描いた群像劇、と、それぞれ趣が異なる。久しぶりに読んだのだが、相変わらず面白くて、一気に読んでしまった。

 ところで『闇の中の系図』の解説として、奇術研究家として著名な松田道弘氏が「うそとまことのタイトロープマン」という一文を書いている。映画を引用した箇所も多く、いまさらながら興味深いものがあった。
 
 まず「うそも相手に合わせてつく必要がある」として『スター・ウォーズ』『未知との遭遇』(77)を比較している。

 「日本では『スター・ウォーズ』の、いきなり惑星間戦争という空間的に飛躍したウソの世界についていけず、とまどいを見せた人か多かった。対照的にスピルバーグの『未知との遭遇』は何気ない日常の生活描写から、次第に非現実の世界へと観客をスムーズに抵抗なく誘導することで支持を得た」として『闇の中の系図』における半村良の筆致との共通点に挙げている。

 また「うそのつき方は難しい。ひとつ計算を間違えると思いがけない結果が生ずる」として、相手の切先とわが身との微妙な間隔をとっさに見極める「見切りの太刀」という剣法の技術になぞらえて、オーソン・ウェルズ作のラジオドラマ「火星人襲来」が全米にパニックを引き起こしたのは、見切りの太刀に狂いがあったからだと説く。

 最後に、火星に送り込まれたはずの宇宙飛行士は、NASAの陰謀で地球上にある撮影所に閉じ込められ、そこからテレビ中継されていた…という『カプリコン・1』(77)を引き合いに出し、「アメリカにも腕のいい嘘部が大勢いるのかもしれない」と結ぶ。

 この解説を読んで、なるほど映画作りは嘘部が最も得意とする分野かもしれない。だからこの三部作を読んでいると映画を見ているような気分にさせられるのだと納得させられた。

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『LOCO DD 日本全国どこでもアイドル』の公開が決定!

2017-06-26 13:41:25 | 新作映画を見てみた

3人の監督が3組の地方アイドルを描いたオムニバス映画『LOCO DD 日本全国どこでもアイドル』の公開が決定!



コメント掲載中。
http://www.locodd.com/pc/about.html

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【ほぼ週刊映画コラム】『ジーサンズ はじめての強盗』

2017-06-24 15:18:41 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

後期高齢者応援ムービー
『ジーサンズ はじめての強盗』



詳細はこちら↓

https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1114493
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ジム・クロウチのこと

2017-06-24 08:44:24 | 映画いろいろ



 先日見た『ローガン/ROGAN』のガソリンスタンドのシーンで、懐かしの「アイ・ガッタ・ネーム」が流れた。

 最近ではタランティーノの『ジャンゴ 繋がれざる者』(12)でも使われたこの曲は、もともとはジェフ・ブリッジス主演の『ラスト・アメリカン・ヒーロー』(73)のテーマ曲だった。
https://www.youtube.com/watch?v=9NXe-QuyBMg

 歌っているジム・クロウチは、なかなか芽が出ず、建設現場などで働いた苦労人。やっと歌手として注目され始めた矢先の1973年9月20日、大学でのコンサートに向かうために乗っていた小型飛行機が墜落し、相棒のギタリスト、モーリー・ミューライゼンらと共に、30歳の若さでこの世を去った。

 その事実については、翌年、ラジオ関東の「全米トップ40」で、湯川れい子さんが、クロウチの「タイム・イン・ア・ボトル」が全米1位になったことを伝える際に教えてくれた。

 確か「もし瓶の中に時間を貯めておくことができるなら…」と歌う「タイム・イン・ア・ボトル」と、「だから僕は、歌にたくして愛しているって言うんだよ」と歌う「歌にたくして=I'll Have To Say I Love You In A Song 」の詩の内容を紹介しながらだったので、何だか悲しくなって余計に記憶に残った覚えがある。

 つまり、オレたちがジム・クロウチの曲に接したのは、彼が亡くなった後だったのだ。それは、同時期に『燃えよドラゴン』(73)を見た際に、すでにブルース・リーが亡くなっているのを知った衝撃と悲しさにも通じるものがあった。

 この二つの出来事は、当時、いたいけな?中学生だった自分に、少しばかり人生の無常や不条理を感じさせたのかもしれない。

 今、改めて映像を見ると、クロウチに影のように寄り添うミューライゼンがいい味を出していると感じてちょっと切なくなる。
https://www.youtube.com/watch?v=YcqauC49Xmc

 ジムの息子のA.J.クロウチは、幼いころに病気で視力を失ったそうだが、フリスクのCMに使われた「Hung Up (On You)」などでミュージシャンとして活躍しているという。
https://www.youtube.com/watch?v=kK8geObqyfg

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ジョン・G・アビルドセン追悼3『パワー・オブ・ワン』

2017-06-23 08:00:23 | 映画いろいろ

『パワー・オブ・ワン』(94.10.4.)



 アパルトヘイト体制下の南アフリカを舞台に、1人の少年(スティーブン・ドーフ)がボクシングを通して人種の壁を越えて成長していく姿を描く。

 公開当時は『ロッキー』(77)『ベスト・キッド』(85)のアビルドセンが撮った“第三の格闘技物”として扱われていたし、こちらも最初の『ロッキー』と『ベスト・キッド』以降のアビルドセンには裏切られ続けてきたもので、異を唱えることもなく見逃していた。ところが今回見てみたら、これが結構頑張っていたのである。

 リチャード・アッテンボローが撮った『遠い夜明け』(87)以前の南アフリカの姿が、こうして映画として公に示されたのは初めてのことではないかと思う。事実、黒人のみならず、白人たちの中でさえも階級が分かれ、あからさまな差別が存在していたことなどを、この映画で初めて知らされた。その点では、大きな意義がある。

 ただ、この映画は社会派メッセージ物ではないから、主人公がボクシングを通して成長していく姿や、ラストの処理などが、いわゆるご都合主義的に見えてしまうところもあるのだが、大上段に構えるのではなく、娯楽映画の中にそうしたテーマを巧みに盛り込んだアビルドセンの技を評価したい気がした。

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ジョン・G・アビルドセン追悼2『ベスト・キッド2』

2017-06-22 08:09:52 | 映画いろいろ

 『ベスト・キッド2』(1986.10.21.日本劇場)



 この映画のような続編物は、製作側が前作のヒットを受けて柳の下の二匹目のドジョウを狙った物が多く、得てして前作よりも出来が悪いし、下手をすると前作のイメージを壊してしまう物すらある。

 それが分かっていながら見てしまうのは、どこかの作家先生の本の題名にもあったが、ひとえに“ラストシーンの後の夢追い”(余韻に浸って登場人物たちのその後に思いをはせてしまうこと)に他ならない。

 この映画の場合も、前作は『ロッキー』(77)の小型版というイメージを抱かせながらも、ハリウッド映画としては珍しく、日本人(ノリユキ・パット・モリタが演じるミヤギさん)がまともな人格を持った人物として登場し、孤独なアメリカ人の少年ダニエル(ラルフ・マッチオ)が、ミヤギさんとの心のふれあいの中から成長していくというテーマが爽やかに描かれていた。

 それが同じ日本人としては喜ばしくもあり、誇りを持って見られるような映画だ、と好感を持つことができたのだ。それ故、その後の二人の動静を描いたこの映画も気持ち良く見られるだろう、と思ったのが大間違い。

 今回は舞台を沖縄に移しているのだが、まるで日本のB級映画のようなストーリーと、アメリカ人の目から見たエキゾチックな沖縄の風俗、習慣の描写が多く、見ていて情けなくなってしまうほどだった。前作では日本人をきちんと描いていたのに…。やはりいまも日本のイメージはゲイシャ、フジヤマの世界に過ぎないのだろうか。

 この映画のラストを見ていると、どうやら3が作られる可能性も高そうだが、何とか最初の“心”に戻ってほしい。あの『ロッキー』が撮れたアビルドセンならできるはずだと思うのだが。

【今の一言】30年前か。この映画を見たマリオンの日本劇場もなくなるのだとか…。

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ジョン・G・アビルドセン追悼1『ロッキー』

2017-06-21 10:57:45 | 映画いろいろ

 ジョン・G・アビルドセン監督が亡くなった。彼の代表作はといえば、やはり『ロッキー』(77)『ベスト・キッド』(85)になるのだろう。だが、そのために格闘技映画専門の監督のように見なされてしまったところがあるのがちょっと残念だ。

 例えば、ピーター・ボイル主演の『ジョー』(70)、ジャック・レモン主演の『セイブ・ザ・タイガー』(73)、ポール・ソルビノ主演の『ふたりでスロー・ダンスを(78)、ジョン・ベルーシ主演の『ネイバース』(81)と、さまざまな形で中年男の姿を描いてきた佳作の監督というのが本分なのに、そのことが忘れられてしまった感があるからだ。その意味では、遺作が『ヴァン・ダム in コヨーテ』(00)というのも悲しい気がする。

 彼の監督作に関して残っているメモを転載し、追悼の意を表したいと思う。

『ロッキー』(1977.6.4.東劇)



 監督のジョン・G・アビルドセンは、タイトルマッチに至るまでのロッキー(シルベスター・スタローン)や周囲の人々の生活、心情を実に丁寧に描いている。

 恋人のエイドリアン(タリア・シャイア)、その兄貴のポーリ―(バート・ヤング)、老トレーナーのミッキー(バージェス・メレディス)はまだしも、ロッキーに肩入れする高利貸しのガッツォ(ジョー・スピネル)まで、きちんと描いているところが胸にぐっとくる。

 だからこそオレたちは陽の当たらない生活を送る彼らの純情に共感し、その代表たるロッキーのファイトに夢を託すことができたのだ。

 そんな彼らの思いが集約されたタイトルマッチ。絶対的なチャンピオンのアポロ(カール・ウェザース)と15ラウンドを闘い抜くことで、負け犬ではないと証明したいと考えたロッキーは、何度もダウンを喫しながらも、あきらめずに立ち上がる。そのひたむきな姿が見る者の心を打つ。ビル・コンティ作曲の力強い音楽も、ロッキーの不屈の闘志を盛り立てる。

 嗚呼、今から40年前か。「エイドリアン!」

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スカイツリー下の「シネ・マッド・カフェ」へ

2017-06-19 08:21:01 | 俺の映画友だち
「映画の仲間」と押上のイタリアンレストランで会食後、
スカイツリー下の「シネ・マッド・カフェ」に立ち寄り。



「祝 ジョン・ウェイン生誕110年記念 大ポスター展」開催中です。
http://www.cine-mad-cafe.com/2017/04/110.html
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【インタビュー】『レイルロード・タイガー』池内博之

2017-06-16 20:52:16 | インタビュー



 ジャッキー・チェンとディン・シェン監督が3度目のタッグを組んだ『レイルロード・タイガー』が公開された。ごく普通の男たちが、日本軍の物資輸送を阻止するため、橋の爆破計画に挑むという、鉄道を舞台にしたアクションコメディーだ。『イップ・マン 序章』(08)でのドニー・イェンに続いて、ジャッキー・チェンと共演した憲兵隊長山口役の池内博之にインタビュー。

https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1113526


 ところで、映画自体の出来は無残なものだった。まず、雑多な登場人物が整理されず、各々の役割がはっきりしない。これでは集団=チーム物としては失格だ。また、全体的にテンポが悪いので、肝心のアクションシーンが映えない。60を越えたジャッキーのアクションも見ていてつらくなった。

 加えて、コメディ仕立てなので、あえてそうしたのかもしれないが、日本軍の描写がめちゃくちゃ。特に中国人の“女優”が演じる、日本語が話せない日本軍の将校が出てきたのにはあ然とした。岡本喜八の「独立愚連隊」シリーズのような、無国籍な西部劇タッチの戦争アクションをわずかながらも期待したのが大間違い。いやはやなんとも…。

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