田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ペイルライダー』

2020-07-31 07:30:03 | 映画いろいろ
『ペイルライダー』(85)
 
 
 ゴールド・ラッシュ時代のカリフォルニア。非情な鉱山主一味が牛耳る小さな町にやって来た牧師の恰好をした流れ者のガンマンが、嫌がらせに耐える人々を助けて悪党一味との対決に挑んでいく。
 
 ちょっと『シェーン』(53)を思わせるようなクリント・イーストウッドの監督・主演作。『荒野のストレンジャー』(72)や、ジョン・ヒューストン監督の『ロイ・ビーン』(72)同様、実はガンマンはゴースト=幽霊なのではないか、と思わせるところがユニークで、暗い西部劇を作るイーストウッドらしいと感じさせる。
 
 思えば『許されざる者』(92)の主人公ウィリアム・マニーにも、どこか亡霊を思わせるところがあった。イーストウッドの西部劇の根底にはトール・テール的なものがあるのかもしれない。
 
 
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『映画の森』★名ぜりふシリーズ【前編】『風と共に去りぬ』「明日という別の日があるわ」転載

2020-07-30 23:50:55 | 映画の森

「KyodoWeekly」6月22日号から★名ぜりふシリーズ【前編】『風と共に去りぬ』「明日という別の日があるわ」共同通信のニュースサイトに転載



https://www.kyodo.co.jp/national-culture/2020-07-30_2978811/

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1960年代洋画ベストテン『アラビアのロレンス』

2020-07-30 07:08:34 | 俺の映画友だち
 さる映画同好会で1960年代洋画ベストテンのアンケート結果が発表された。最多得票を集めたのはデビッド・リーンの『アラビアのロレンス』(62)だった。(2019.10.6.)
 
『アラビアのロレンス』(62)(1980.10.23.渋谷パンテオン)
 
 
 この映画を初めて見たのは中学生の頃。多少難解なところもあったが、大きな感動を受けた覚えがある。今回は自分もある程度の年齢に達したし、また別の、というよりも、一歩進んだ見方ができたと思う。例えば、それは、ロレンス(ピーター・オトゥール)の持つ多面性(サディスト、マゾヒスト、ナルシスト)であったり、どうしょうもない民族性の違い、国家間の思惑、政治の暗躍などであり、この映画の持つ奥行きの広さを改めて感じることができた。
 
 そして、この映画のユニークなところは、休憩の前と後では全く違う描き方をしているところだ。だから、前半は、ただただ砂漠の美しさに見とれ、ロレンスの行動に打たれ、カメラワークの見事さに興奮し…といった具合で、いつの間にか喉がからからに乾いて飲み物が欲しくなるほど、映画に同化させられる。その結果、休憩中はコーラをがぶ飲みすることになった。
 
 ところが、休憩後は、段々と見方が変わっていく。ロレンスの行動に疑問が湧くようになり、砂漠の怖さや残酷さが見え始め、アラブ人の残虐性や粗暴さが現れ出し、自分でも客観的になっていくのが分かる。そしてロレンスの異常性が際立ち、映画と同じように彼を見放していくのである。
 
 砂漠を去るロレンスの横を一代のオートバイが過ぎていく。ここにファーストシーンでロレンスが乗ったバイクが転覆するイメージが重なる。つまり、砂漠を離れた時、彼は実質的には死んでいた、ということが暗示されるのだ。
 
 とにかく、いまさらながらカメラワークがすごい。砂漠の景観はもちろん、遠景で捉えたアリ(オマー・シャリフ)の最初の登場場面、シナイ半島横断の際の砂山に突然浮き出す巨大な船…。モーリス・ジャールの音楽は言わずもがな。 

『アラビアのロレンス完全版』(2009.1.8.新宿テアトルタイムズスクエア)
 
 
 映画館で見るのは中学時代の75年(渋谷東急レックス)、大学時代の80年(渋谷パンテオン)に続いて3度目。いろいろな意味で狂気の映画という印象が強まった。あのころは、同じくデビッド・リーンが監督した『ドクトル・ジバゴ』(65)のリバイバル上映(76年テアトル東京)もあったように、かつての超大作を大きな映画館の巨大スクリーンで見ることができた最後の時代だった。今回のテアトルタイムズスクエアは、どでかいスクリーンは懐かしかったが、無駄なスペース、硬くて狭い座席など、その他の施設はあまり良くない。夢よもう一度とはなかなかいかないもの。

 さて、これは以前から思っていたことだが、T・E・ロレンスの人生は源義経によく似ている。どちらもカリスマ性がある天才的な軍人で、自己顕示欲が強く、神輿として担がれるのだが、政治的な駆け引きには疎く(よく言えば純粋)、結局利用されるだけされてあっさり捨てられるからだ。
 
『アカデミー賞のすべて』
 

『外国映画男優名鑑』
 

『ビッグイシュー日本版』
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【ほぼ週刊映画コラム】『海辺の映画館-キネマの玉手箱』

2020-07-30 06:35:41 | ほぼ週刊映画コラム

共同通信エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は
根も葉もある絵空事の集大成 大林宣彦監督の遺作
『海辺の映画館-キネマの玉手箱』



詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/?p=1235224&preview=true

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『頭上の敵機』

2020-07-29 07:08:07 | 映画いろいろ

『頭上の敵機』(49)

 第2次大戦下、対独戦略爆撃の任務を受けたアメリカ軍部隊の実話を映画化した戦争ドラマ。製作ダリル・F・ザナック、監督はヘンリー・キング。

 イギリスに基地を置くアメリカ陸軍の航空部隊は、作戦に失敗し、大量の犠牲者を出す。新たな指揮官としてサベージ准将(グレゴリー・ペック)が赴任するが、厳格な規律と猛特訓で、隊員たちは不満を募らせていく。

 物語は、元副官のストーバルの回想という形で進行する。サベージと対立する温厚で人望のあるストーバルを演じたディーン・ジャガーがアカデミー助演男優賞を受賞した。

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ビデオ通話で西部劇談議

2020-07-28 09:29:02 | 駅馬車の会 西部劇Zoomミーティング

 コロナのおかげで会合ができないので、ビデオ通話を使って、気の置けない仲間と西部劇談議をしている。これがなかなか楽しい。これまでのラインアップは

 


 
4.2.『駅馬車』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f8029544871d694012cb314047202d2c
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/dfd4408f9a7f3bb0e32ee3dccda32aab

4.9.『荒野の誓い』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/21e1e2d1f476868739a7ba580c25efd2
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/9b91b9c038a27e59ee557ae376233911

5.23.『アラモ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/24c860ac76ab694113bb8a103aea8ac9

6.6.『ヴェラクルス』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/86de188612cd79c8c92d847e08b51d6f

6.20.『大いなる西部』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a1a46cfb235a9718c22d837a28d10f40

7.11.『天国の門』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/1f34980b493bc90fff77535d71b9993a
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/7b624b718b6e4aab90dcc45e39b79ec0

7.25.『荒野の七人』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a728ce84e41c33880e0d9a24953de1ab

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『映画の森』名せりふシリーズ後編 「人生は思うようにならない」(『ローマの休日』)

2020-07-27 10:18:12 | 映画の森

 共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)7月27日号で、『映画の森』と題したコラムページで「名せりふシリーズ後編」を紹介。

『映画の森』名せりふシリーズ前編 「明日という別の日があるわ」(『風と共に去りぬ』)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/98363e003f49f97e049927b2c1612b76

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東京生まれのオリビア・デ・ハビランド

2020-07-27 09:51:54 | 映画いろいろ

 東京生まれのオリビア・デ・ハビランドが、104歳で大往生。ハリウッドの名女優の一人だったと思う。

『いちごブロンド』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/9952ffa198c15d5ec8d415a972466b1f

『風と共に去りぬ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8d281dac8d3be0ae10bea71f54c57f07

『女相続人』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/7118d74297efd8d5275dbf98acd21616

『見知らぬ人でなく』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/1925fe6a7917b10c4b16713f055d4a24

『誇り高き反逆者』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/9ce70e604c57fb1b0a62cc3d005939ba

 

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『グラン・トリノ』

2020-07-27 07:00:12 | 映画いろいろ
『グラン・トリノ』(09)(2009.12.21.)
 
  
 
 
 クリント・イーストウッドがまるで“隠居したダーティハリー”のような、元自動車工の頑固じじいを演じる。時は流れたなあという思いもあるが、同時代にいたスティーブ・マックィーン、ポール・ニューマン、チャールズ・ブロンソンらが次々と世を去ったのに、彼はいまだに監督兼任で現役という息の長さには恐れ入る。
 
 イーストウッドが演じる頑固じじいはポーランド系でコワルスキーという名前。昔キラー・コワルスキーというプロレスラーがいたのを思い出したが、彼も確かポーランド系だった。前半は、この孤独な頑固じじいの人種差別丸出しのぼやきと日常生活が痛快で、これはコメディーか? と思わせるのだが、隣に越してきたラオス出身のモン族の少年タオとの交流が中心に描かれる中盤は、アジア人が白人にものの道理を教えるという、『ベスト・キッド』(84)の逆パターンになる。つまり白人のコワルスキーがアジア系のタオを一人前の男にしていくのだ。ここも結構面白い。
 
 ところが、後半の不良グループへの復讐と過去の自分に悩むコワルスキーの姿に やはりいつもの屈折と曖昧のイーストウッドで終わるのかと思いきや、今回はラストできっちりと片をつけていた。人生に自ら決着をつけるという点では、ジョン・ウェインの遺作『ラスト・シューティスト』(76)をほうふつとさせるところもある。そう言えば『ラスト・シューティスト』の監督はイーストウッドの師匠とも言うべきドン・シーゲルだった。また、先日、偶然ウェイン主演の『拳銃無宿』(47)を再見したので、この映画と併せて、改めて銃の存在や、報復の連鎖について考えさせられた。
 
【今の一言】コワルスキーが所有するたくさんの工具を見て、「何でこんなにたくさんの種類があるの」とたずねるタオに、彼はこう答える。「どの工具にもそれぞれにちゃんと役目があるからだ。どれもいざと言う時に役に立つ」。なかなかいいセリフなので、拙書『人生を豊かにするための50の言葉 名作映画が教えてくれる最高の人生の送り方』(10)でも引用させてもらった。
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『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』

2020-07-27 06:25:39 | 映画いろいろ

『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(11)(2012.2.29.シネマート六本木試写室)

 夫デニス(ジム・ブロードベント)に先立たれ、86歳になった元英国首相のマーガレット・サッチャー(メリル・ストリープ)は、孤独な晩年を迎え、いまだに夫の遺品を整理できずにいた。認知症を患ったマーガレットの幻想の中で夫はまだ存在しているのだ。そんな中、マーガレットはこれまでの激動の人生を振り返る。

 1979年、英国史上初の女性首相となり、経済再建やフォークランド紛争などさまざまな困難を乗り越えた“鉄の女”マーガレット・サッチャーをストリープが演じ、3度目のアカデミー賞を受賞した。

 最初は演技過多が鼻に付くが、段々と彼女の術中にはまっていくところは、他の映画と同様。今回は政治家としての強さ、頑固さと、認知症を患った孤独な晩年とのコントラストが彼女の演技の真骨頂だった。

 夫デニス役のブロードベント、若き日のマーガレットとデニスを演じたアレクサンドラ・ローチとハリー・ロイド、そして娘役のオリビア・コールマンもそれぞれ好演を見せた。

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