田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

ジョニー・マーサーとクリント・イーストウッド

2019-06-20 10:13:32 | 雄二旅日記
 
 神保町のジャズ・オリンパスで月に一度開催される「ジャズ・コレクターズ・クラブ」のコンサートで、キャピトル・レコードの設立者の一人としても知られるジョニー・マーサーが作詞した曲の特集を聴いた。マーサーは映画音楽の世界でも有名で、アカデミー賞も4度受賞しているが、日本未公開の映画も多い。
 
 代表曲は、フランク・キャプラ監督の『花婿来たる』(51)でビング・クロスビーとジェーン・ワイマンが歌った「In the Cool, Cool, Cool of the Evening=冷たき宵に」(作曲ホーギー・カーマイケル) 、ブレーク・エドワーズ監督の『ティファニーで朝食を』(61)の「ムーン・リバー」、同じく『酒とバラの日々』(62)、スターンリー・ドーネン監督の『シャレード』(63)の作曲はいずれもヘンリー・マンシーニだ。マルセル・カルネ監督『夜の門』(49)の挿入歌「枯葉」(作曲ジョセフ・コズマ)の英詞でも知られる。
 
 クリント・イーストウッドが監督し、マーサーの故郷サバナを舞台にした『真夜中のサバナ』(97)ではマーサーの墓や邸宅が映り、彼が関わった曲も流れる。さらにイーストウッドはドキュメンタリー映画『Johnny Mercer: The Dream's On Me』(09)の製作総指揮もしている。ジャズ通でも知られるイーストウッドは、マーサーに対する強い思い入れがあるのだろう。
 
 
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『マーウェン』

2019-06-20 08:45:53 | 新作映画を見てみた

 ヘイトクライム(憎悪犯罪)の被害に遭い、障害を負いながらも、独自の世界観で写したフィギュア=人形の写真でカメラマンとして認められたマーク・ホーガンキャンプ(スティーブ・カレル)が、創作活動を通して回復していく姿を描く。マークがミニチュアで作った第二次世界大戦中の架空の村の名前がタイトルになっている。
 
 監督のロバート・ゼメキスは、これまで『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ、『ロジャー・ラビット』(88)『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)『ザ・ウォーク』(15)などで、最新の映像技術を駆使しながら、ディテールにこだわり、時空を越えたり、過去を鮮やかによみがえらせたりしてきたが、今回は現実とマークの空想世界を交差させて描いている。
 
 そして、フィギュアに生を与え、観客をマークの空想世界に連れていくことに腐心した結果、CGではなくモーションキャプチャーを使って映像化したという。確かに映像的にはとても面白い。
 
 この映画の発端はマークを描いたドキュメンタリー映画にあり、そこにゼメキスがマークの空想の世界を映像化して入れ込み、二重構造とすることで、マークの内面(恨み、暴力性、フェチシズム)を浮かび上がらせたわけで、障害故に無垢なところがあるマークはフォレスト・ガンプともつながるところがあるのだが、この映画の場合は、現実と空想世界とのバランス感覚が独特でグロテスクな描写も目立つ。こうした部分への好嫌が評価の分かれ目となるのではないかと感じた。
 
 私見ではマークとホーギー大尉以外は、実物とフィギュアのつながりが弱く、両者が重なってこないところがこの映画の弱点だと思う。そこが、主人公以外の人物もしっかりと描いていた『フォレスト・ガンプ/一期一会』との違いだ。
 
 
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