田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『屋根の上のバイオリン弾き』ミリッシュ・カンパニー

2019-06-05 11:08:31 | 映画いろいろ
『屋根の上のバイオリン弾き』(71)(1981.8.10.月曜ロードショー)



 ウクライナ地方に暮らすユダヤ人のテビエ(トポル)は、娘たちの幸せを願い、彼女たちの恋愛に悩み、結婚を祝いながら、日々懸命に生きてきたが、やがてユダヤ人追放という事態に見舞われる。ロシア系ユダヤ人たちの受難を描いたミュージカル舞台劇の映画化。監督はノーマン・ジュイソン。

 解説の荻昌弘さんも「目で演技ができる人」と言っていたが、とにかく主人公のテビエを演じたトポルが素晴らしい。『フォロー・ミー』(72)の時もそうだったが、何ともいえぬ温かさが感じられ、見ていてほのぼのとした気分になる。演技がうまいからか? 否、きっと彼の人柄がにじみ出ているのだろう。特にこの映画では、老け役として、父親の情愛や、ユダヤ人としての誇りを見事に表現していた。

 せめて娘たちには豊かな暮らしをと望む父。娘たちはそんな父の愛を知りながら、やはり貧しい男のもとに嫁いでいく。娘が苦労することを分かっていながらそれを許す父…。そこに流れる名曲「サンライズ・サンセット」。こうした思いは日本の庶民にも当てはまる。だから素直に感情移入ができるのだ。

 また、ノーマン・ジュイソンの正攻法の演出にも感心させられた。優れた舞台劇の人物描写をきちんと踏襲しながら、舞台劇では描けない、広大な田園風景や自然、シベリア鉄道といった、映画の特質を生かした背景と見事にマッチさせていたからである。

「サンライズ・サンセット」作詞シェルドン・ハーニック、作曲ジェリー・ボック、編曲ジョン・ウィリアムズ
https://www.youtube.com/watch?v=zOsou7XiGFM
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『アメリカ上陸作戦』ミリッシュ・カンパニー

2019-06-05 09:08:58 | 映画いろいろ
『アメリカ上陸作戦』(66)(1986.12.14.)



 アメリカの小さな島に、座礁したソ連の潜水艦の乗組員が上陸する。彼らはボートを手に入れたいだけだったのだが、あっという間に「ロシア人が攻めて来た」という噂が広がり、島中がパニックに陥る。

 原題の「THE RUSSIANS ARE COMING, THE RUSSIANS ARE COMING,ロシア人が来た、ロシア人が来た」からも分かる通りの、東西冷戦と群集心理を風刺したブラックコメディ。監督はノーマン・ジュイソン。

 潜水艦乗組員(アラン・アーキン)、潜水艦長(セオドア・バイケル)、警察署長(ブライアン・キース)、作家夫妻(カール・ライナー、エバ・マリー・セイント)など、多彩な出演者の好演も見ものだ。

 中でも、艦長役のセオドア・バイケルは、『眼下の敵』(57)ではドイツ兵、『手錠のまゝの脱獄』(58)ではアメリカの保安官を演じた、という国籍不明の面白い俳優。実際はオーストリア、ウィーン出身のユダヤ系ドイツ人だそうだ。

 スピルバーグの戦争コメディ『1941』(79)は成功作とは言えなかったけれど、多分この映画の線を狙ったのだろう。
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