~ それでも世界は希望の糸を紡ぐ ~

早川太海、人と自然から様々な教えを頂きながら
つまずきつつ・・迷いつつ・・
作曲の道を歩いております。

グインの言葉

2021-12-26 14:53:50 | 日常
昨日(12月25日)は “ 納めの天神 ” でありました。
持病や小さな怪我に悩まされつつも、
まずまず無事に過ごさせて頂いたことへの感謝を捧げに、

名古屋天神・上野天満宮を参拝してまいりました。

境内に建つ〈晴明殿〉には、御覧の通り、
その昔この周辺地域に祀られていた神々が合祭されていて、
そこには「琴比羅・秋葉・猿田彦」といった社名も見受けられます。

名古屋市・丸の内に歴史を刻む〈桜天神〉の境内摂社にも、
琴比羅(金比羅)・秋葉・猿田彦の三神が祀られており、
かつては村々において広く崇敬されていたのでありましょう。

今年は「丑年」ということもあり、
確か当ブログの年始めに掲載した写真は、
こちらの “ ウシ ” の像であったかと記憶します。

過ぎてみれば、一年とは速いもの。
思えば地球の公転速度は時速およそ11万kmでありました。
春夏秋冬の移ろい、心情に訴えられるその変化の速さは、
太陽の周りを時速11万kmで駆ける、この惑星の速さ、
そのように言えるのかも知れません。

今年もコロナ禍に明け、コロナ禍に暮れてゆきます。
それでも年の瀬を迎えますと、

「来年はきっと良くなる」との希望が芽生えてくるもの。

ただ残念ながら、その希望に根拠はありません。
この「根拠無き希望」が “ 正常性バイアス ” と呼ばれるもので、
そこには客観的判断の欠如という危うさが在ることは承知の上で尚、
人間たるもの、
この「根拠無き希望」の一灯を絶やしてはなるまいと、
そのようにも思うのであります。

栗本薫先生(1953~2009)の一大長編小説「グイン・サーガ」。
その第1巻では、クリスタル国の若き王女リンダと、
その弟レムスとが相次ぐ危難に襲われ、その度に、
豹頭の超戦士グインに助けられるのですが、時は戦乱の世、
遂には、グインでさえ死を覚悟せざるを得ない事態に・・・。
リンダは敵兵の手に落ちるくらいなら潔く死ぬと言い、
その時が来たら、自分を一思いに刺してくれとグインに告げます。

リンダの切羽詰まった発言の中に、
凛として生きる人間だけが持ち得る “ 誇り ” を観たグインは、
そんな事を考えるのは、まだ早いと言い、こう言葉を続けます。

『これでもう百の中 さいごのひとつまでも望みが絶えた、
 というそのときまでは、いや、たとえそうであろうとも、
 息絶えるその瞬間までは、希望しろ、そして戦え。
 それが本当の誇りというものだ 』
(引用元:栗本薫「グイン・サーガ」第1巻 / 早川書房)

               

今年一年、
当ブログを御訪問いただきまして、ありがとうございました。
皆様、良いお年をお迎え下さい!




               








楽聖は鉛中毒だった?

2021-12-19 14:38:46 | 音楽関係
去る12月16日は、ベートーヴェン(1770~1827)の誕生日でした。
生涯の大部分を難聴と消化器疾患に苦しめられつつも、
数多くの名曲を生み、その死後200年に亘って聴き継がれ、
これからも人々の心に明かりを灯し続ける大師匠でありますが、
その病因については諸説あり、難聴や消化器疾患の症状が、
何に由来するのかは未だ特定されていません。

“ BRAIN and NERVE ” Vol.73 No.12(2021年12月号)では、
「芸術家と神経学」という特集が組まれています。
特集の中に掲載された、
東京大学大学院・総合文化研究科教授:酒井邦嘉先生による、

「ベートーヴェンの病跡と芸術」

を読ませていただき、
ベートーヴェンの病因として有力なものの一つが、
「鉛中毒」であることを知りました。

『しかし、近年の議論で興味深いのは、
 「鉛中毒(鉛毒, lead intoxication)」の可能性である。
 ベートーヴェンの遺髪と頭蓋骨頭頂部の両方から、
 通常の40倍を超える高濃度の鉛が検出されたからである。
 鉛の長期摂取による慢性症状には、
 肝毒性や胃腸疾患(激しい腹痛に下痢や嘔吐)に加え、
 稀に中枢神経系の損傷や感覚障害(視覚障害や進行性聴力損失)
 などが含まれる。当時の安物のワインには、
 苦み消しのため鉛を添加することが違法に行われており、
 ベートーヴェンがそうした低品質のワインを長期にわたり
 常飲することで、大量の鉛を摂取してしまった可能性がある。』
 (引用元:酒井邦嘉「ベートーヴェンの病跡と芸術」/
      BRAIN and NERVE Vol.73 No.12 / 医学書院)

『難聴と消化器疾患の両方を説明できる病因として、
 鉛中毒が最も有力である。』(引用元:同上)

               

『当時の安物のワインには、
 苦み消しのため鉛を添加することが違法に行われており、
 ベートーヴェンがそうした低品質のワインを長期にわたり
 常飲することで、大量の鉛を摂取してしまった可能性がある。』

大師匠ほどの方であれば、
「安物のワイン」を飲まずとも高価なワインが飲めたはず・・・、
と思うのは浅薄に過ぎるというもの。
確かに晩年にかけては高額な作曲収入もあったようですが、
遺品の中には、食料品店Aのチラシ、食料品店Bのチラシがあり、
どちらが安く買えるのかを検討していた?とも伝わります。

いつの時代も、音楽だけで食べてゆくには、
経済的な不安定が付き纏うということであり、
早川は身につまされるのでありますが、それはそれとして、
知らぬ間に「鉛中毒」とは恐ろしい話。

現代では、食品衛生法を始めとする様々な管理によって、
「食の安全」は保たれているものと信じたいのですが、時折、
「この食品は、なぜこれほど安価に市場提供できるのか?」
と疑問を感じる場合があります。
流通ノウハウや企業努力によるものなのかも知れませんが、
原材料の生産量と製品の生産量との間に、
明らかな乖離があるケースも散見されます。
例えば蜂蜜。
養蜂場での生産量に比して、
市場に出回る製品としての蜂蜜量が多過ぎるのだとか。
そうであるのならば、店頭に並ぶ、ほとんど全ての蜂蜜には、

「純粋蜂蜜」

と銘打たれていますが、果たして本当に「純粋」なのかどうか?
気になるところであります。また先日の報道によりますと、
食料品ではありませんが、「100%カシミヤ!」を謳い文句に、
安価なマフラーを販売した業者3社に行政勧告が下されたとのこと。
「100%カシミヤ!」どころか、
ほとんどカシミヤは使われていなかったそうです。

良心的な業者も多い反面、いつの時代も、
悪徳商法・不当表示・詐欺・抜け道・カラクリ・謀り事・・・、
総じて悪意に基づく商行為が絶えることはありません。

話が随分と逸れてしまいましたが、
かのベートーヴェン大師匠が苦しんだ難聴と消化器疾患、
その病因が、違法な混ぜ物による安価なワインの長期摂取による、
「鉛中毒」とする説には、なるほど・・・という納得感と共に、
どこか切なさを覚えるものであります。




              









組曲 “ AQUA SCAPE ”

2021-12-12 15:59:51 | 音楽
先週日曜日(12/5)20:00~の放送に引き続き、
本日(12/12 )20:00~、
FMラジオ番組 “ Presidentstation ” において、
新藤清子さんと成宮俊雄氏の対談が放送されます。

本日の放送では、
早川が作曲し、新藤さんに命を授けて頂いたところの、
組曲 “ AQUA SCAPE ~ 水の巡礼 ” がオンエア予定とのこと。

組曲 “ AQUA SCAPE ~ 水の巡礼 ”


組曲 “ AQUA SCAPE ~ 水の巡礼 ” は、
2010年秋、杉並公会堂において、新藤清子さんを始めとする、
フルムス・オーケストラの皆様によって演奏して頂きました。
今以て感謝申し上げております。 

               

組曲 “ AQUA SCAPE ~ 水の巡礼 ” は、

「水よ、水よ」

と全編に亘り水を讃える楽曲で、その3曲目においては、

「水は、時に雲になり、
 水は、時に雨になり、
 水は、川に、
 水は、海になり、
 この星の全てを、
 循環(めぐる)、移動(つなぐ)、産霊(むすぶ)」

と歌われます。
おこがましい限りとは存じますが、
早川が生涯をかけて扱うテーマの一つが、

“ 水 ”

であります。

早川は、
武蔵野市吉祥寺・井の頭池の近くに青春を送り、
30代は、東京都大田区内を流れる多摩川の岸辺に住み、
その後20年近くを千葉県市川市を流れる江戸川のそばに暮らし、
現在は気ノ池の畔に露命を繋いでおります。

“ 水 ” の風光が好きなのであり、
“ 水 ” から離れるのが不安なのでありましょう。

               

“ 水 ” とは、まことに不思議なもの。
“ 水 ” の本体、“ 水 ” の変容、というものに思考を凝らせば、
自ずと心に湧き、自身の内界に広がってくるのは、
《大宇宙・大自然・大生命》への畏敬、讃仰、思慕の念。

また惑星探査における最大の関心事と言えば、
探査対象の天体に “ 水 ” が有るか無いか?ということ。
もし “ 水 ” が存在すれば “ 命 ” が存在する可能性が高まり、
近年では、土星の第2衛星 “ エンケラドス ” の内部に、
大量の水が蔵されていることが判明し大きな話題となりました。
つまるところ、

“ 水 ” = “ 命 ”

この “ 水 ” = “ 命 ” というところに想いを巡らせますと、
“ 水 ” に固態・液態・気態の三態があるように、
“ 命 ” にも又、固相・液相・気相の三相があると考えて、
さほど間違いではないような気がします。

気態としての “ 水 ” が、目には見えずとも、
大気の中に遍満して私たちを養っているように、
気相としての “ 命 ” も又、網膜には映らずとも、
そこかしこに在って私たちを支えているようにも思います。

               

野村恵一監督「二人日和」(2004)は、
京都で神官の装束を作ることを家業としてきた、
〈神祇装束司〉の当主とその妻との老年期を描いた物語。
夫婦は穏やかな日々を過ごしていたものの、
ある日、妻が “ ALS(筋萎縮性側索硬化症)” を発症。
日に日に筋力が低下し、やがて日常生活も困難な状態となり、
妻は心を閉ざしてゆきます。
どうにかして妻の心を明るく出来ないものかと悩む夫、
夫婦を取り巻く人々、神祇装束、京都という場所・・・等々、
様々な色彩の縦糸と横糸とが紡がれてゆきます。
映画のラスト、
妻に先立たれ、すっかり力を落としている夫は、
ある朝、夫婦にとって、また神祇装束作成にとって、
かけがえのない場所〈梨木神社〉の境内に湧く、
“ 染井の名水 ” に水を汲みにゆきます。

水を汲みながら、ふと亡き妻の気配を感じたのでしょうか。
夫は “ 染井の名水 ” の上方へ視線を転じ、
驚きと安堵とが混じり合ったかのような、
感に堪えないという表情で呟きます。

「なんや、そんなところにおったんか・・・」

“ 水 ” は “ 命 ” であり、
“ 命 ” は巡り続けるものと信じます。




              








Spirit of YAMAGATA

2021-12-05 15:27:00 | 音楽
先ずは告知をさせて頂きます。
早川が関東在住時、大変お世話になりましたところの、
ソプラノ歌手・新藤清子さんが、
本日(2021年12月5日)午後8時から、
以下URLのFM放送に御出演なさいます。

https://presidentstation.com/

FM放送は全国放送で、スマホ・PC等からも聴けるとのこと。
YouTubeに上げられた予告編によりますと、その放送内容は、
新藤さんと成宮俊雄氏(ミュージカル・プール代表)との対談。
とても楽しみであります。
放送予定は以下
1回目:本日5日(日)20:00〜 / 2回目:12日(日)20:00~

               

昨年(2020)9月に開催、配信された、
陸上自衛隊・東北方面隊、創隊60周年記念コンサート動画。
本日は、こちらの動画を共有させて頂きます。

プログラムの2曲目(1:37~)に、
“ Spirit of YAMAGATA ” を演奏して頂いております。

“ Spirit of YAMAGATA ” は、
J2・モンテディオ山形の公式アンセムとして、
2013年から御採用頂いている楽曲でありますが、
当初は管弦楽編成を念頭に置いて作曲し、その後、
吹奏楽編成のスコア(総譜)を書かせて頂きました。

只、その演奏を耳にする機会は無いままに幾歳月が過ぎ、
この度、上掲の演奏動画において初めて、
吹奏楽版 “ Spirit of YAMAGATA ” を聴かせて頂き、
その素晴らしい演奏に、心からの感動を覚えました。

自身の楽曲に感動を覚えたのではありません。
その素晴らしい演奏に、大きな感動を覚えたのであります。
なぜか?

それは濱中則昭先生と音楽隊の皆様による演奏が、
早川の想い描く “ Spirit of YAMAGATA ” そのものであったから。

この感動を表現するのは、筆力の乏しい早川には困難ですが、
敢えて言葉にするならば、それは例えば、
隊員お一人お一人の卓越した演奏力、
音楽隊の持つ高度なアンサンブル能力、
指揮者が設定する理想的なテンポ等々・・・といった、
優れた音楽的要素の数々、及び、
それら優れた要素の集合と集成という風にも言えます。
しかしながら、
優れた要素の集合と集成、唯それだけでは、
「感心」する演奏は生まれるかも知れませんが、
「感動」する演奏は生まれにくいものと思われます。

優れた要素の集合と集成を超えた “ 何か ” 。
優れた要素の集合と集成を支える “ 何か ” 。
優れた要素の集合と集成を統べる “ 何か ” 。

その “ 何か ” が備わり、その “ 何か ” が中心に据えられて、
初めて人は、心震える「感動」を覚えるのだと思います。

音楽隊による演奏を拝聴し、早川は「感動」を覚えました。
それは、先に述べた “ 何か ” に打たれたからであります。

“ 何か ” とは何でありましょうか?
それはもしかしたら、演奏の中から響いて来る、

“ 気組み・心映え・士気・情熱・精神・・・”

と呼ばれるものかも知れませんし、或いは、

“ Heart・Spirit・Soul・Mind・Passion・・・”

と称されるものかも知れません。
或いは又、音楽隊には歴史があると聞きますので、
長きに亘り培われ、受け継がれてきた、

“ 音楽魂 ”

と謂われるものかも知れません。

只、どのように呼び、どのように名付けてみたところで、
その “ 何か ” は、本来的に言語化できないものであり、
その “ 何か ” は、やはり “ 何か ” としか言いようのないもの。

「音楽」は、その “ 何か ” を、
空気の振動、空気の疎密波に乗せて伝えることが出来、
それゆえにこそ「音楽」は尊いのであると申せましょう。

今回、陸上自衛隊・東北方面隊、
創隊60周年記念コンサート動画を視聴し、
「音楽」にとって大切な “ 何か ” を、あらためて教わりました。
濱中則昭先生と音楽隊の皆様に、
心からの敬意と感謝の念を捧げるものであります。


山形に向けて、愛と祈りと魂を!