足元に気配を感じて見てみれば・・・
カマキリでありました。
カマキリと言えば〈蟷螂拳(とうろうけん)〉。
今を去ること、およそ350年ほど前の中国大陸は山東の地、
「王朗」なる武術修行者がカマキリの動きにヒントを得て
創始したと伝わっています。
もっともこれは歳月の中で盛られた伝説であり、
王朗老師が実在したかどうか定かではありません。
「老師」と書きましたが、中国武術の世界において、
入門は「拝師」という儀式なり手続きを経て行われ、
どれほど指導者が年若くとも「老師」と呼ぶのが決まり。
それゆえ50代60代の門下生が、20代30代の先生を、
「老師」と尊称して教えを乞う光景は珍しくありません。
一般的に蟷螂拳は北派長拳系にカテゴライズされますが、
この「北派・南派」という分け方は単純に過ぎるもの。
例えば日本各地における〈お月見団子〉でさえ、ひと頃までは、
中部地方を境に東日本と西日本とで団子の形が違うなどと、
まことしやかに語られていましたが、調べてみれば、
幾種類もの団子が各地に点在し、その分布は複雑に入り組み、
東北地方の団子と同じものが九州地方で食される等々の事が
確かめられるようになりました。
また名高き〈出雲そば〉のように、
出雲(現 島根)で蕎麦の食文化が栄えるようになったのは、
江戸期に信州(現 長野)の蕎麦打ち職人たちが、
出雲へ移住したことが起源であることは周知の事。
文化・風習は流動的で、固定化されたものなどあり得ません。
況や中国武術をや・・で、古くから「南拳北腿」と謂われ、
大陸南方の武術は両足を踏ん張って拳技主体、
比して北方のそれは腿(あし)技を得意とする・・などと、
分類されてきましたが、実際には人事交流の歴史を反映して、
脚技主体の南派あり、拳と掌しか用いない北派ありで、
「南拳北腿」等の明確な線引きは出来ません。
さて蟷螂拳の特徴は何と申しましても「蟷螂手(とうろうしゅ)」
カマキリの鎌を模したと伝わる上掲の蟷螂手は、
親指・人差し指・中指を合わせたスタンダードなもので、
七星・梅花・秘門といった蟷螂拳各派で用いられるもの。
これ以外にも流派によって様々な蟷螂手があります。
中国武術では「套路(とうろ)」と呼ばれる
いわゆる「型」の反復練習が重視され、
一定の姿勢・呼吸・動作を長年にわたり繰り返すことで、
「功」を生み「功」を養い「功」を育てます。
「功」とは、
幾星霜の中で丁寧に培われる〈修行力・修養力〉の総称で、
「功名・功績」等の言葉から想像されるものとは異なります。
「功」あらば「武」なれど、
「功」なくば「舞」に過ぎません。
蟷螂拳も然りで、
例えばワタクシめの如き「功」の乏しい人間が、
たとえもし速く正確に套路の動作を行い得たとしても、
それは只のカマキリ踊りなのであります。
皆様、良き日々でありますように!
カマキリでありました。
カマキリと言えば〈蟷螂拳(とうろうけん)〉。
今を去ること、およそ350年ほど前の中国大陸は山東の地、
「王朗」なる武術修行者がカマキリの動きにヒントを得て
創始したと伝わっています。
もっともこれは歳月の中で盛られた伝説であり、
王朗老師が実在したかどうか定かではありません。
「老師」と書きましたが、中国武術の世界において、
入門は「拝師」という儀式なり手続きを経て行われ、
どれほど指導者が年若くとも「老師」と呼ぶのが決まり。
それゆえ50代60代の門下生が、20代30代の先生を、
「老師」と尊称して教えを乞う光景は珍しくありません。
一般的に蟷螂拳は北派長拳系にカテゴライズされますが、
この「北派・南派」という分け方は単純に過ぎるもの。
例えば日本各地における〈お月見団子〉でさえ、ひと頃までは、
中部地方を境に東日本と西日本とで団子の形が違うなどと、
まことしやかに語られていましたが、調べてみれば、
幾種類もの団子が各地に点在し、その分布は複雑に入り組み、
東北地方の団子と同じものが九州地方で食される等々の事が
確かめられるようになりました。
また名高き〈出雲そば〉のように、
出雲(現 島根)で蕎麦の食文化が栄えるようになったのは、
江戸期に信州(現 長野)の蕎麦打ち職人たちが、
出雲へ移住したことが起源であることは周知の事。
文化・風習は流動的で、固定化されたものなどあり得ません。
況や中国武術をや・・で、古くから「南拳北腿」と謂われ、
大陸南方の武術は両足を踏ん張って拳技主体、
比して北方のそれは腿(あし)技を得意とする・・などと、
分類されてきましたが、実際には人事交流の歴史を反映して、
脚技主体の南派あり、拳と掌しか用いない北派ありで、
「南拳北腿」等の明確な線引きは出来ません。
さて蟷螂拳の特徴は何と申しましても「蟷螂手(とうろうしゅ)」
カマキリの鎌を模したと伝わる上掲の蟷螂手は、
親指・人差し指・中指を合わせたスタンダードなもので、
七星・梅花・秘門といった蟷螂拳各派で用いられるもの。
これ以外にも流派によって様々な蟷螂手があります。
中国武術では「套路(とうろ)」と呼ばれる
いわゆる「型」の反復練習が重視され、
一定の姿勢・呼吸・動作を長年にわたり繰り返すことで、
「功」を生み「功」を養い「功」を育てます。
「功」とは、
幾星霜の中で丁寧に培われる〈修行力・修養力〉の総称で、
「功名・功績」等の言葉から想像されるものとは異なります。
「功」あらば「武」なれど、
「功」なくば「舞」に過ぎません。
蟷螂拳も然りで、
例えばワタクシめの如き「功」の乏しい人間が、
たとえもし速く正確に套路の動作を行い得たとしても、
それは只のカマキリ踊りなのであります。
皆様、良き日々でありますように!