~ それでも世界は希望の糸を紡ぐ ~

早川太海、人と自然から様々な教えを頂きながら
つまずきつつ・・迷いつつ・・
作曲の道を歩いております。

辰・振・震

2024-04-21 13:03:39 | 神社仏閣
過日、久しぶりに名古屋市は大曽根、山田の地に鎮座する、

山田天満宮を参拝してまいりました。

日頃の感謝を捧げると共に、
文教の祖:菅原道真公の神徳に肖り、
多少なりとも頭の巡りが良くなることを祈願します。

加えて、長らく身近に帯びていた御守りを納め、
新しい御守りを授かってまいりました。

拝殿に向かって左側に大書されている通り、
本年の干支は “ 辰(たつ)” 。

「辰」に手偏(てへん)を添えれば「振」。
「辰」とは何か?については諸説あるものの、
ここはザックリ「辰」すなわち “ 龍 ” と観想してみますと、
“ 龍 ” とは、
振るえるもの、振るうもの、振るわせるもの・・・と、
何らかの特殊な振動体のように感じられます。

特殊な振動体と言えば “ 楽器 ” も其のひとつ。
筝(琴)は、その各部名称からして、
龍頭・龍額・龍角・龍眼・龍口・
龍舌・龍甲・龍腹・龍趾・龍尾・・・と、

楽器そのものが “ 龍の写し身 ” 。

古代、忘我入神の境に入った奏者が筝をツマ弾けば、
筝弦の振るえは龍の琴線を振るわせ、
干天に慈雨を、或いは雨天に陽光をもたらしたとも伝わります。


「辰」に雨冠(あめかんむり)を載せれば「震」。
「辰」すなわち “ 龍 ” とは、やはり震えるもの。

辰年の側面を証すかのように、
今年は元日から北陸地方で大きな地震が起き、
その後も各地で大小の地震が頻発。
去る4月17日(水)の夜遅くには、
豊後水道を震源とする地震が発生し、
愛媛県では震度6弱の揺れが観測されました。

地震に遭われた方々には、
さぞや御不安のこととお察し申し上げます。

いにしえの人々が長きに亘る経験則に基づき、
“ 地龍 ” と呼んで畏敬したものの正体は、
現在に謂うところの「活断層」でありましょうか。
地中に在ってエネルギーの蓄積と発散を繰り返し、
時に威を振るい人心を震えさせるものを恐れつつ、
大きな自然災害が起こらぬことを祈ります。


“ Princess KONOHANA SAKUYA ”
~ まもりたまえ、さきわえたまえ ~

皆様、良き日々でありますように!


               








気ノ池、気ノ森の桜 2024

2024-04-14 14:42:55 | 自然
皆様がお住まいの地域では、
桜の開花散花はいかがでありましょうか。

早川が住まう場所では1週間前頃が花期の盛りでした。



気ノ池のほとり



池畔に華やいだ桜も、



本日(2024年4月14日)時点では、

おおよそ葉桜へと移ろっています。

というわけで動画内の桜は、全て今春(2024年4月)のもの。
関東在住時に作曲しました組曲「うつろい」から、
“ 桜の章 ” と共に、ひとときお楽しみ頂ければ幸いです。


皆様、良き日々でありますように!


               










冬の寒さがあればこそ

2024-04-07 16:36:27 | 自然
当ブログでは何度か触れてまいりましたところの

「休眠打破」

桜は、その花芽を夏頃には付けるものの、
開花を抑制する植物ホルモンの一種、
“ アブシシン酸 ” が樹葉から供給されるため、
花芽は花芽のまま秋冬を迎え休眠状態へ。

冬の寒さに一定期間さらされることで、
寒冷刺激が “ アブシシン酸 ” の開花抑制を解除し、
そこに加えて春の気温上昇を感受すると、
こんどは花芽(蕾)の中で作られる開花促進ホルモン、
“ ジベレリン ” が分泌され、一気に花を咲かせるというのが、
「休眠打破」の大まかな機序と伝わります(諸説あります)。

つまり、冬の厳しい寒さを通り越さないと、
“ アブシシン酸 ” の開花抑制が解除されず、
花は咲くに咲けないということなのでしょう。

いま桜の時期を迎え「休眠打破」という、
自然界の妙なる働きを目の当たりにしますと、
どうも桜樹と人間とが重なって観えてきて、
「冬の寒さがあればこそ」

そうだ、人の生涯においても、
冬の寒さにさらされるような時期にこそ、
意味が有るのだよなぁ・・・、
などと思われてくるのであります。

いや、こうした感想は前時代的な情緒かも知れません。
それでも「休眠打破」。

開花には “ 冬の寒さ ” が必須という桜の生態は、
失意、落胆、困難、逆境等々、
私たちが生きてゆく上で経験せざるを得ない、
言わば “ 冬の寒さ ” というものをして、
「それがあなたという花を開かせる・・・」と、
そんな視座を授けてくれるような気がします。


“ Cherry blossoms transform into the Dragon Ⅱ ”
~ 桜龍招福 ~

皆様、良き日々でありますように!


               








名古屋市西区の宗像神社

2024-03-31 15:11:30 | 神社仏閣
名古屋市西区に鎮座する宗像神社に参拝してまいりました。

住宅街の中に建つ鄙びた佇まいには、
氏子の方々が守り伝えてきた歴史が滲みます。

境内には、
明治26年3月に記されたと思しき説明文があり、
それによりますと、創建の年は応永5年(1398)とも、
宝徳2年(1450)とも謂われ明らかではないそうです。
只、史伝 “ 尾張誌 ” には宗像神社の修造記録が遺され、
少なくとも慶長年間(1596~1615)までには、
その創建を遡ることが出来ると記されていました。

さて御祭神でありますが、
上記の説明文によりますと、本殿中央に、
宗像三女神の内の一柱 “ 田心姫命(たごりひめのみこと)” 。
左側(向かって右)に、
“ 倉稲魂命(うかのみたまのみこと)” 。
右側(向かって左)に、
“ 源義直(みなもとのよしなお)” 。

明治の頃に書かれた説明文ということもあってか、
いささか分かりにくいのが “ 源義直 ” 。
同姓同名の武士が平安時代に実在していますが、
その方では無いはず。
“ 源義直 ” とは、諡(おくりな)を “ 源敬公 ” とする、
“ 徳川義直(とくがわよしなお)” のことでありましょう。
徳川義直(1601~1650)は、
徳川家康の九男(一説に十男)で尾張徳川家の祖。

今回参拝した宗像神社は名古屋城の近くに位置し、
元々は、広大な城地の一角に在ったものが、
明治期に現地へ遷座されたと伝わりますので、
そうした所縁から、
名古屋城の初代城主、義直が祭られているとも考えられます。
また義直という人は崇神の念に篤かった・・・、
いや、いっそ “ 神道オタク ” と呼べる人物だったようで、
日本各地の神社と祭神を調査考証し、
『神祇宝典』なる書物を編纂していますので、
そうした業績への顕彰という意味があったのかも知れません。

義直は義直として、
肝心の “ 田心姫命(たごりひめのみこと)” であります。
宗像三女神は、天照大神と須佐之男命によって行われた、
誓約(うけい・古代占術)により生まれた三人の女神。

生まれた順番が、古事記や日本書紀他でそれぞれ違い、
いわゆる「長女・次女・三女」といった考え方自体が、
あまり当てはまらないのですが、
福岡県宗像市の総本社:宗像大社では、
序列というよりは神祇の配列として、

沖津宮には “ 田心姫(たごりひめ)”
中津宮には “ 湍津姫(たぎつひめ)”
辺津宮には “ 市杵島姫(いちきしまひめ)”

を祀るとされています。

                 

「〇〇だよ、全員集合」ならぬ、
「日本だよ、神仏習合」ということで、
宗像三女神は、海を始め “ 水 ” との関わりから、
インド由来の “ 水 ” の女神:弁才天と習合しました。

中でも “ 市杵島姫(いちきしまひめ)” は、
全国に所在する厳島神社の御祭神。
一説に、厳島神社の “ 厳島(いつくしま)” とは、
“ 市杵島(いちきしま)” のこととも伝わりますが、
何にせよ弁才天と習合したことにより、
厳島神社は弁才天の聖地となりました。

「神仏習合」思想は、
「本地垂迹(ほんじすいじゃく)」思想を基調とします。
インド発祥の仏教に説かれる様々な尊格を「本地」として、
その「本地」たる仏尊が、日本の衆生を救済するため、
仮に神道の神々として顕現したとする、
ある意味 “ ぶっ飛んだ ” 考え方で、
「垂迹」とは「仮に顕われる」という程の意。
その辺りの消息というものを、
鎌倉期の浄土真宗僧侶:存覚上人(1290~1373)は、

『それ仏陀は神明の本地、
 神明は仏陀の垂迹なり。』(存覚「諸神本懐集」)

と簡明端的に説いています。

例えば “ 市杵島姫(いちきしまひめ)” の場合、
アマテラスとスサノオの誓約によって生まれた、
この日本の女神の正体、つまり「本地」は、
サンスクリット名を “ エーカダシャムカ ” 、
中国で “ 十一面観世音菩薩 ” と訳された仏尊。
この仏尊が “ 市杵島姫 ” へと変身、即ち「垂迹」します。
そこに加えて、
神々の性格性質、得意分野、御利益等々と、
仏尊のそれらとが比較検証され、
“ 市杵島姫(神)” と “ 弁才天(仏)”とは、
似た傾向や同じ特性を持つとして「神仏習合」が果たされました。

では今回訪れました宗像神社の御祭神、
“ 田心姫(たごりひめ)” の場合、
一体どのような仏尊が「本地」とされたのかと言えば、
これが “ 大日如来 ” なのであります。
言わずもがな、密教の根本仏。
やはり中世の想像力は “ ぶっ飛んで ” ます。

さて、本当はこの辺りを手掛かり足掛かりと致しまして、
江島(えのしま)神社が “ 金亀山与願寺 ” だったこと、
千葉神社が “ 北斗山金剛授寺 ” だったこと等々、
「カミ」と「ホトケ」の交流往来の謎について、
何よりも “ ぶっ飛んだ ” 理由とその背景について、
浅慮を巡らせたいのですが長くなりそうなので、
また機会を改めます。

最後に、名古屋市西区の宗像神社において、
“ 田心姫(たごりひめ)” と共に祀られている、
“ 倉稲魂命(うかのみたまのみこと)” 。

社伝には、
「伊勢の外宮に祀られる “ 豊受大神 ” と同体」
とあります。
実は「神仏習合」に限らず、
神と神とでも「習合」が行われてきました。
それが「神々(しんしん)習合」と謂われるもの。
当然のこと「仏々(ぶつぶつ)習合」もあるわけで、
もうこうなりますと「習合」にして「融合」。

宗像三女神は弁才天と習合し、
弁才天は宗像三女神と融合することで、
新たな世界が生まれました。
弁才天は音楽の神。

「音楽史を振り返ってみるがよい。
 違うジャンルの音楽同士が習合し、
 異なる領域の音楽同士が融合することで、
 いつも新たな世界は開かれてきた・・・」

去り際、ふと声なき声。


“ Cherry blossoms transform into the Dragon Ⅰ ”
~ 桜龍飛翔 ~

皆様、良き日々でありますように!


               







経世済民

2024-03-24 15:50:01 | 雑感
去る令和6年3月21日、
日本銀行の「資金循環統計」において、
個人金融資産が “ 2141兆円 ” と、
過去最高を記録した、との報道がありましたが、
その翌22日には、
内閣府が行った調査結果として、
日本の “ 6割を超える ” 人々が、
「経済的にゆとりがなく、将来への見通しが立たない」
と発表されました。

相反する二つの報告、大きく矛盾する二つの結果は、
日本社会が「格差社会」であることの証左でしょうか。

先日、或る経済学者が過去に放ったとされる、
「高齢者は集団自決した方が良い」
という発言が取り沙汰されました。
前後の文脈ということがありますので、
切り取られた文言だけをあげつらうことは控えます。

只、小心者の早川は、こうした文言に接しますと、
「確かに自分などは早く死んだ方がいいのかもなぁ」
などと、ひととき暗澹たる想いに沈みます。

とは言え、沈んでばかりもいられません。
そもそも経済学者が専門とする「経済」とは、
「経世済民(けいせいさいみん)」の略語。
「経世済民」とは、

『世の中を経(おさ)め、民を済(すく)う』

ことに他なりません。
つまり「経済」活動というのは、
物を売ったり買ったりすることではなく、本来的には、
『世の中を経(おさ)め、民を済(すく)う』活動。

『世の中を経(おさ)め』の『世の中』には、
新生児から高齢者まで幅広い年代の方々が命を営み、
『民を済(すく)う』の『民』には、
健康な人、病気の人、能力の有る人、無い人、
多種多様かつ多岐多彩な人々が含まれているはず。
それらの誰しもを余すこと無く、また洩らすことなく、

『経(おさ)め、済(すく)う』

ことを目指すのが「経済」学者の使命であり、
「経済」事象の根幹ではないのかと、
青臭くも個人的にはそのように思うのであります。

“ 持つ者 ” と “ 持たざる者 ” とが明らかな社会というのは、
人と人とが、和合よりも分断に傾いてゆく社会。
「格差社会」とは “ 角(かど)の立つ ” 社会、
“ トゲトゲしい ” 社会と申せましょう。
この辺りのことについて、
鴨長明(1155~1216)は記しています。

『自分が貧乏で、隣家が裕福であれば、
 朝晩、自分のみすぼらしさを恥じて、
 家を出入りするにも気兼ねしなければならない。
 自分の家族が金持ちの家庭をうらやむのを見たり、
 富裕な人々が自分を蔑む素振りを感じるにつけ、
 心は時々刻々に揺らいで、少しも休まることがない。』
(鴨長明「方丈記」~煩悩の俗世間より/早川意訳)

「方丈記」が書かれたのは、今を去ること約800年前。
「格差社会」は、今に始まったことではなかったんですね。

私自身、日々の労働によって生計を立てている以上、
広い意味で「経済」活動に従事する人間でありますが、
長明師の言葉を借りれば、
『自分のみすぼらしさを恥じ』ざるを得ない身の上。

『世の中を経(おさ)め、民を済(すく)う』

そのようなこと、出来るわけがありません。
それでも尚、
「経済」なる言葉の奥に仄めいているであろう、
『経世済民』の想いだけは、
心のどこかに灯し続けたいのであります。


“ Leaves transform into the Dragon ”
~ 樹葉、龍に変ず ~

皆様、良き日々でありますように!