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秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

田んぼアートの周辺

2014-08-03 23:11:48 | 津軽のいろいろ
葉や穂の色が違うイネ(稲)を使って、水田に絵を描く「田んぼアート」がある。
今は秋田県を含む全国各地で行われているが、その先駆けが、青森県南津軽郡田舎館村(いなかだてむら)。
1993年から行われている歴史あるものだが、そのレベルの高さが秀逸。田舎館の田んぼアートを見ずして、田んぼアートを語ってはいけないと思う。

※この記事では、田んぼアートそのものの写真はほとんどありませんので、あしからず。他のサイトやブログでご覧ください。アクセス方法などは参考になるかと思います。
※以下、田舎館村の田んぼアートのことを単に「田んぼアート」と表記します。

元々は、村役場横の田んぼ(約1.5ヘクタール)で行っていて、お城(かつてあった田舎館城がモチーフ)を模した役場6階の展望台から無料で見られた(任意の協賛金を募っていた)。アートの題材は毎年変わる。
その後、2012年からは役場に加えて、「道の駅いなかだて」の「弥生の里展望所」から眺める「第2会場」を設けて、第1会場とは別の題材の田んぼアートを実施。同時に、両展望台入場を有料化(200円)した。
2013年には、道の駅そばを通る弘南鉄道弘南線に「田んぼアート駅」という新しい駅が設置された。


僕は、田んぼアートは5年ほど前に見たのが最後。
今年は第2会場の題材が「サザエさん」ということで興味を持ち、7月下旬にわずかな時間で見に行ってみた。

※例年、夏休み中(特にお盆)は激しい混雑が発生し、待ち時間が長くなります。覚悟の上、おいで願います。(今年から、混雑時は時間指定の整理券を出している。昨年あった300円の両会場共通券は廃止された模様)
※来年以降は、状況が変わる可能性があります。また、村役場ホームページでの情報発信が不十分なため、訪れる際は、直接確認したほうがいいかもしれません。

両会場は直線で1キロ。役場前が県道268号(一部歩道がない狭い道)、道の駅はその南を並走する国道102号沿いにあり、車なら大した距離ではない。駐車場は役場や道の駅のものを利用。
では、公共交通の場合。道の駅は新駅を利用すればいい。30分~1時間に1本。
問題は役場。弘南鉄道弘南線の「田舎館」駅からは、かなり遠い。
弘南バスの弘前-黒石(-大川原)の路線で、「畑中」バス停下車が便利。ほぼ1時間に1本。
ほかに昼間は実質的に1往復しかないが、弘前-豊蒔・高田-黒石線という別経路の路線もあり、それは「公民館前」というバス停が田んぼアートの真ん前にあるようだ。

弘前からは電車が430円、畑中経由のバスが490円。
いずれも「津軽フリーパス(2日間有効・8%税込2060円)」のフリーエリア内(豊蒔・高田経由は除く)なので、使うと得な場合が多いでしょう。

役場と道の駅を結ぶ交通機関は通常はない。
しかし、田んぼアート開催中は毎日、無料のシャトルワゴン「たさあべ号」(定員9名)が、毎時1~2本運行されている。
※ダイヤは役場ホームページに掲載。変更されたり情報更新が遅れたりする場合があり得るので、よく確認の上、利用してください。


というわけで、弘前から弘南線で田んぼアート駅へ。※弘南鉄道に関してはこの記事も参照
終点・黒石の3つ手前で、弘前から13.4キロ・23分。冬期間は全列車が通過し、夏も8時台~17時台の列車しか停まらない。扱いは正式な駅のようだが、実質的には「臨時駅」的存在。
他の多くの駅と同じく、無人駅。弘南鉄道のワンマン電車では、無人駅では乗り降りとも前の車両のいちばん前のドアだけで行う(JRとは違って、乗り降りとも同じドア)。運賃支払い(またはフリーパス提示)は降車時に車内で運転士に行う。

降りたのは僕だけ。ドアが閉まって発車。
するかと思ったら、車両後方から女性グループがあわてて走ってきて、降りた。また、帰りの上り電車でも、黒石方面から来て降りそこねた男性が1人いた。
いずれも格好や言葉からして遠来の人たちではないが、ワンマン列車の降り方を知らなかったから、いつも乗っている人ではないのだろう。そういう人が列車で田んぼアートを見に来たのか、それともほかの用事だったのか。いずれにしても乗降客がいるということは、駅を作った意義はあることになる。
ちなみに、この駅は田舎館村が建設費用を全額負担したそうだ。秋田市の外旭川新駅も、四の五の言わずに造ったら…と思えてしまうが、JRの本線上であり、周辺整備も必要だからそう簡単ではないのだろうけど…

田んぼアート駅に停車する電車
駅は、単線上にホームが1本あり、屋根付き待合所とサントリーの自販機があるだけの、質素なもの。
ホームは2両分しかなさそう。(弘南線では、学校がある時期の朝は4両編成が運行される。どっちみちこの駅には停まらない時間帯だけど)外への出入り口は黒石寄りに1か所だけで、スロープ完備。
駅全景。奥が弘前方向
駅の周りは、道の駅関係各施設、国道のほかは田んぼやエダマメ(大豆)畑。国道の向こうには家があるが、隣の田舎館駅のほうが近いかもしれない。内視鏡関連の青森オリンパスの工場もある。
目を転じれば、遠くに岩木山と弘前市街地が見える。
ホームの弘前寄りから岩木山。奥を左右に横切るのが国道

ホームからまっすぐの南西方向が弘前駅。さくら野やイトーヨーカドー、(写っていないが)弘前大学が見えた

ここで、現在のGoogleマップでここを見てみる。
googleマップより。線路は下、道路は左が弘前市街方向
まず、駅の位置が少々ズレていて、正しくは少し下(線路を横切る道路の下)。
国土地理院「地理院地図」より。こちらは正しい位置に駅がある
そして、線路と国道の近くに世界地図がある?!

ご存知の方もおられると思うが、かつてはほんとうにこういうものが存在した。「地球池」という池があった。
この池を水田にして、田んぼアート第2会場になったので、以前の情報が残っていることになる。

地図を拡大して、現在の配置を加筆
道の駅敷地の西側が田んぼアートで、その南に展望所がある。それらのさらに南に駅があり、駅からは道の駅の裏に出入りする形。

駅名標と展望所

田んぼへ。部分的に色が違うので田んぼアートであることが分かる
田舎館の田んぼアートのすごい所は、高い位置から見ることを前提に、遠近法を計算してデザインされていること。
だから上から見て違和感のない図柄なのだが、その分、下から見るとおかしくなる。
間延びした波平さんとマスオさん(カメラでは遠近感が圧縮されてしまうのか、肉眼で見たほうがもっと間延びして感じた)
7月中旬頃から刈り入れまでは、いつでも楽しめるが、「8月中旬まで」を見頃とする情報もある。(それ以降は熟して色が変わるけど、見る分にはじゅうぶん楽しめると思うけど…)
今年は、10種類の違う品種のイネを使っている。初期は古代米など3種類くらいの限られた色だったが、今は観賞用品種も植えているのだろう。
 
訪れた時点では、品種によっては成長が遅いものがあり、「サザエさん」の文字の「ザ」が薄くてほとんど読めなかったり、サザエさんの胸の辺りの赤い部分が引っ込んで(背が低くて)いたりした。

なお、国道からは上下逆転するものの田んぼアートを見たり、鉄道写真が撮れたりしそうに思えるが、歩道がない(歩道は下)ためできないようだ。

【4日追記】田んぼアートのサザエさんのキャラクターは、正式なものであり、上から見た時は現行のアニメーションのキャラクターデザインとまったく同一の精巧なもの。

シャトルワゴン「たさあべ号」
イネの花、岩木山、お城、馬に乗った武士と「米こめくん」という米粒(?)のキャラクターが「よぐ来たねし!」と歓迎している。

ところで、「たさあべ」の意味。秋田の人には説明は不要だろう。
「た」は「田」、「さ」は助詞の「に」「へ」、「あべ」は「行きましょう」「Let's go」の意味。
僕は、津軽弁で「あべ」を使うイメージがあまりなかったから、津軽でこのネーミングに触れるのは、少々意外だった。

ところが、車体にはひらがなのほかに「Ta Survey Go!」ともある。
「Ta」は何語? 「Survey」は「(高い所などから景色などを)見渡す」という意味だから、掛けてあるネーミングなんでしょう。

道の駅本体。奥が田んぼアート、駅、岩木山。右が駐車場、国道
産直やコミュニティFMのスタジオがあった。

再び田んぼアート駅。
黒石方向。わずか400メートル離れた田舎館駅ホームが見える

7000系電車の黒石側「7012」の運転台
先頭車化改造ではないので、東急時代の運転台にワンマン機器を設置した程度しか手が入っていないはず。
沿線の「猿賀神社」の交通安全のお札。大鰐線ではどうなってるだろう?

「田んぼアート停車」という誤通過防止の表示札があった

自動放送の設定器には、
「田んぼ停車(時の放送用設定コード)」というシール
設定器は中央交通のバスと同じクラリオン「AGSコントローラー RCA-224」、放送装置本体(オートガイドシステム)は同「CA-1000A」(中央交通はCA-2010A )だった。


考えてみれば、「田んぼアート」というイベント名を駅名にするとは、斬新。
道の駅に隣接して鉄道駅が立地するケースとしては、青森県内では碇ケ関、浅虫温泉、秋田では岩城みなと【22日追記・羽後岩谷も】がある。しかし、そのいずれも、鉄道利用客のことはほとんど考えていない(宣伝とか特典とか)。上記3駅は、いずれも温泉が併設されており、鉄道で気軽に入浴に来られるのだが、そのことは知る人ぞ知る状態に近い。
道の駅はもともと道路利用者向けの施設だから仕方ない面もあるが、もうひと工夫すれば鉄道利用客も呼び込めるはず。道の駅いなかだてでも、もう少し何かできるのではないだろうか。(津軽フリーパス提示で、ソフトクリーム50円引きの特典はある)
コメント
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