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ぐるる車内

2013-09-18 23:55:44 | 秋田のいろいろ
9月20日はバスの日なので、ストックしていたネタから。この記事に続き、「ぐるる」車内について。
7月から新たな姿に変わった、秋田市中心市街地循環バス「ぐるる」の2台の専用車両は、小田急バスの中古で、中型バス・いすゞエルガミオの車体長が短いバージョン(現在は製造終了)。
小田急の中古がおそらく6台程度秋田に来ていて、ぐるる用以外の車は、現在は男鹿営業所のローカル路線や秋田市南西部の「豊浜ふれあい号」(秋田中央トランスポート所属)で使われている。

エリアなかいちでの展示の際は、「834」の車内も公開されていた(? たぶん)。「バスまつり」と同じ形だが、他に誰もいなかったので、じっくり観察することができた。


前ドアの銘板によれば、1999年9月製造の「KK-LR233E1」という型式。もう1台の「835」も同じ。
いすゞ自動車ホームページによれば、1999年6月の発売当時の東京地区での希望小売価格は、1千95万円。(ちなみに通常サイズはワンステップで1千240万、ノンステップで1千500万。エンジンはどれも225馬力の「6HH1-S」)
いすゞ自動車といすゞバス製造の2つの銘板があり、それぞれに製造番号が記載されているが、834と835で連番だった。製造以来、ずっと共に使われてきたということになる。

前から見た客席
幅は普通の中型バスと同じだけど、やはり短さが際立つ。
座席は写っているだけで全部。正面向き1人掛けが4つ、窓を背に座るロングシートが2名分(優先席ではなく「シルバーシート」のシールが残る)、床が高い後部は2人掛けが4つと最後列に5人。着席できるのは19名ということになる。
後ろから

車いすスペース
1人掛けのうち2席は、車いすスペース兼用の折りたたみ式。折りたたみでない普通の1人掛けの座席は2つしかなく、いずれもタイヤの上。以前も書いたけれど、この頃の小田急の座席は背もたれのクッションがとても薄く、座り心地は良くない。
【2014年8月5日追記】この座席は「天龍工業」製だった。一部の座席裏に「テンリュー工業」のシールが貼られていた。同社は秋田市営バスの分厚い座席など、多くの乗り物の座席を手がけているのだが、この車のは粗悪だ。

今まで気付かなかったけれど、吊り手(つり革)がとても少ない。運転席側に4つ、ドア側に2つの6つだけ。縦方向のポールも少ない。取り付けられる座席が少ないので仕方ないけれど。

窓ガラスの広告
窓ガラスのシール式広告は、「あきた駅前内科外科クリニック」と写真の中通総合病院などの「社会医療法人明和会」がスポンサー。予備車を含む3台すべてに、運行開始時から掲出されている。
「平成25年11月新病院オープン予定」とあるけれど、もうすぐ。そうしたら広告は貼り替えるのかな。(正確には「中通総合病院の新病棟オープン」じゃないだろうか)
【2014年1月25日追記】12月から新病棟が稼働。↑この広告も張り替えられ、病院創業60周年のシンプルなデザインのものになった。

中ドア
前ドアでは一般的な折り戸が中ドアにも使われる。30年くらい前のバスやその少し後でも大都市のバスでは、中ドアも折り戸だったが、今は引き戸が一般的。車体が短くて戸袋設置に制約があるためか。
「扉が内側に開きますので」「ご注意ください」という注意書きは、小田急時代からのもの。(表示がない車両もあったはず)
2017年には中ドアに広告が貼られた

【10月6日追記】この車両は、非常口(運転席側のいちばん後ろ)の幅がとても狭い。用が足りるか心配になるくらい。

取って付けたように整理券発行器が置かれている。それは当然のことで、今は中ドアは乗車口だけど、小田急時代は降車口だったわけで、秋田に来てから設置されたのだから。(それにしては配線など上手に処理している)
必ず整理券を取るよう「何卒ご協力のほど」などと掲示があるが、これは循環バスだけの掲示。均一料金だから乗客にしてみれば意味がない整理券だけど、秋田市やバス会社にしてみれば乗車人員や利用実態(乗車バス停)の把握のために整理券が必須だからでしょう。
発行器のメーカーは、中央交通標準の「小田原機器」製か(同社では「整理券機」と呼んでいる)。昔は濃すぎると手に付いてしまった赤や青のインク式だったけど、これは黒印字の感熱紙(サーマルプリンタ)式。

整理券の話が出たので、ワンマン運転に欠かせない「ワンマン機器」に注目。特記以外は、中央交通に来てから設置されたものだと考えられる。
運賃表示器
均一運賃の循環バスでは運賃表示器はいらないが、一般路線バス時代のものが残っている。
でも、専用塗装になってしまっては、もう一般路線に入ることはないだろうから、撤去してもいいようにも思う。(弘南バスの100円バスでは運賃表示器を「次の停留所名表示器」として使う車両もあるが、撤去された車両もある)
循環バスに使われるようになってからは、表示部を隠すように、運賃についての注意書きが張られている。
連絡先が「秋田市まちづくり整備室」とあるけれど、同室は5月で廃止された。同室の電話番号は、主要業務を引き継いだ企画調整課にぎわい創出担当に引き継がれたようだが、循環バスに関しては交通政策課に引き継がれているので、書き換えるべきだと思っていたら、この数日後、連絡先を交通政策課とした紙に替わっていた。【23日追記】連絡先変更と同時に、循環バス専用一日乗車券についての案内が書き加えられる等、文面も一部変更された。

運賃表示器は8セグメント【2014年1月12日訂正】7セグメントLED3ケタ【19日訂正】4ケタ×50コマで、(紙で隠れているが)左端に縦書きで運賃の変わる停留所名が表示されるタイプ。整理券番号は1~50。(弘南バスでも同型を使っているが、券番号は最初が「なし」なので最後は49番。他に「0」から49までのものも存在すると考えられる)
2002年まで「三陽電機製作所(ブランドはSLight)」という社名だった「レシップ」製で、「DFA-9000-5000」という型番だと思われる。本体サイズ250ミリ×746ミリ。
中央交通でも弘南バスでも、ごく最近製造されたこの型の運賃表示器は、枠が黒くて、券番号の書体が違うので、これは古いタイプのようだ。廃車から移設したのかも。

最近は液晶ディスプレイの運賃表示器が出現し、LED式の生産をやめたメーカーもあるようだが、レシップはまだ販売しているようだ。
ただ、中央交通では、レシップの液晶式に更新するつもりらしいので、LED式は徐々に減っていくと思われる。(まだ使えるんだから無理して替えなくてもいいのに)

運転席
【2014年7月13日追記】上の写真では、サイドブレーキ(パーキングブレーキ)のレバー類が見当たらない。昔のバスでは普通乗用車と同じ位置に同じ形状のものだった。2000年以降のバスでは「ホイールパーク」装備が義務付けられたため、それに対応してハンドル左側に上下方向に動かすレバーが付いている。しかし、この車では、ホイールパーク義務付け前の製造ためか、レバーが異なるようで、運転席右側(窓側)に従来のパーキングブレーキと似た形状で小型のレバーがあるようだ。エルガミオの中では珍しい仕様だと思われる。トラックでは現在もこのタイプのレバーが主流らしい。(以上追記)

運賃箱も、中央交通標準の小田原機器製のいちばん安いヤツ。(最近は、これが製造中止になったのか、同社製の薄型のものを設置した車両も存在する。)
両替は100円バスなんだから、100円玉だけ出せば良さそうなものなのに、実際には50円玉1枚と10円玉5枚も出てくるらしい。設定を変えられないのだろうか。

ハンドル左側
運転席には各種装置の設定器が並ぶ。
この車両に限らず中央交通のバスはゴチャゴチャと多い印象で、しかも車両によって位置が異なり、運転士は大変そう。
上の写真左側はオージ製の「全自動巻取機EM-92 MX・6」。行先表示器の設定をするもの。この車両は行先表示器が幕式だから「巻取機」だが、中央交通の多くのバスは幕式からLED式に交換されたため、それらには別の設定器が設置されている。テンキーの部分がだいぶ使い込まれているので、もしかしたら小田急時代からの装置(あるいは中央交通の他車からの移設)かもしれない。
下に「834号車方向幕」「06循環バス、07回送、08中央交通」という紙が張ってあるので、その数字を入力すれば自動的にそのコマで停止するようだ。なお、835のほうは各コマが「02、01、82」と数字が異なっている。

右上は小田原機器製の装置。整理券の設定器のようだ。
右下には「SLight」のロゴがあり、これは運賃表示器の設定器。

運転席の右側
中央のスイッチはドア開閉。前側の装置は自動放送の設定器、後ろ側は運行中に使う自動放送の操作スイッチ。いずれもクラリオン製。
昔の車内放送は8トラックのカセットテープをガチャガチャ入れ替えていたものだが、今はこの設定器に路線ごとに決められた数字を入力すればいい。
設定器
ラベルで隠れて見えないが、「AGSコントローラー RCA-224」のようだ。AGSとは「オートガイドシステム」。
中央交通では上の写真のように「臨海→駅 301011/駅→臨海 301012」というラベルが貼られている車が多いようだ。
おそらく、臨海営業所線を走る時はこの数字を設定すればいいのだろうが、なんでわざわざ本体に貼っているんだろう。回送代わりの同路線において、すぐに設定できるように?
ただ、ぐるるの車両は以前も含めて臨海営業所に所属したことがなく、同路線は走らないはず。臨海所属だった廃車から移設したのだろうか。
【2017年10月25日追記】2017年10月時点の臨海営業所所属の古い一般路線用中型車・秋田22い701では、この位置に駅~車庫間の設定番号が貼ってあった(書体は違う)。「車庫」とは秋田営業所のことだと考えられる。ということで、やはり、突発的に所属営業所でないほうの営業所と秋田駅西口を営業運行することになった場合、スムーズに対応できるようにしてあるのだろう(行き先表示はどうしてる?)。

運転席の天井近くには、
「オートガイドシステム CA-2010A」
これが自動放送の大元のようだ。現在は後継機種が出ている。
左側に音声データを入れたメモリーカードでも入れておくのだろう。車内と車外の音量は、ここで調節するらしい。

クラリオンの「オートガイドシステム」とは、車内放送を軸に、バス運行に関わる各種機器を自動で制御して、労力を軽減する狙いらしい。8トラテープの時代からあった概念のようだ。
テープを使っていた秋田市営バスや、今の中央交通では、始発で整理券や運賃表示器を正しく設定しておけば、運行中は放送に連動して変わっていく。「これより運賃が変わります」→ピッ!という風に。始発での設定と途中での放送を入れるタイミングを間違わなければ、便利な装置。
5年ほど前までの弘南バスでは、これらがまったく連動しておらず、運転士は走行中にも、整理券や運賃表示器を手動で変える操作をしなければならず、大変そうだった。現在は、クラリオンからOEM供給されたレシップブランドの同じシステムを採用しているようだ。

中央交通のやり方では、始発時に放送、運賃表示器、整理券、行き先表示と4つの設定をそれぞれしなければならない。
しかし、AGSをフル活用すれば、始発で放送装置だけをセットすれば、他の機器にも転送される仕組みになっていたり、ドア操作や速度に連動して、放送さえ自動で流れるシステムもあるらしい。

いすゞ自動車ホームページより
いすゞのエルガミオの紹介ページの運転席の写真は、左側のパネルに何もなく、すっきりしている。
撮影用仕様車だからということなのかもしれないが、クラリオン製AGSコントローラーらしきものは設置されている(赤矢印)。おそらく、AGSコントローラーに全機器が連動しているのだろう。

こんな装置は高そうだし、中央交通の場合は各機器のメーカーがバラバラなので、相性が悪くて連動させられないのかもしれない。

※昔のバスの車内や機器については、札幌市営バスの記事参照。

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4 コメント

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懐かしい計器 (FMEN)
2013-09-19 03:40:26
00年代前半までの雰囲気がします。
0番は市営にありましたね。
市営は3桁で25コマしかなかったからか移管するたびになくなりました。
最後のコマに始発は系統番号が出るやつ。
運賃箱が移管で新型から当時の茶色い箱に変わったのは不思議でしたが。
自動放送は声が嫌いなんです。
中央テープも市営も好きだったのに。
幕や系統装置、市営はもっと機械が複雑でした。
返信する
市営バスの機器 (taic02)
2013-09-19 22:12:27
市営バスの運賃表示器は「交通電業社」というメーカーのものでした。
それにしても、中央交通でも26コマ以上の運賃表示が必要な路線って、あまりないのではないでしょうか。(昔は長距離路線が今よりは多かったですが)
特に移管直後は、新屋方面しか走らない車両があったりしたので、譲渡時に運賃表示器を交換したのはもったいない気がしたものです。コマが多い分、文字が小さくて、見づらく感じました。

市営バスは運賃箱は中央交通と同じ小田原でしたが、1993年前後頃は今のレシップ製でした。ご指摘の新型です。
その装置を使って、バスカードの試験を行っていたので、当時はプリペイドカードの導入計画があったのだと思います。実現せずに終わったわけですが。
この運賃箱は投入口が少し小さく、回数券が中で詰まってしまうことがありました。中央交通で使い慣れないメーカーということもあって、敬遠されたのではないでしょうか。
放送の音声合成化は、現場の労力を考えれば、仕方ないのでしょうね。
返信する
すごい。 (住民)
2013-09-20 20:11:11
バスの運転手さん並に詳しいですね。大型二種持ってるんですか?
返信する
いえいえ (taic02)
2013-09-20 22:19:38
バスは客として関わるだけです。
永年の観察と、今はネットの情報もありますので。

現場の方々が見たら、的外れなことを書いているものもあると思います。
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