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桜と絵本と豆乳と

共感する心理に目を向け

2024年03月08日 | 読書
 先月下旬から読み進めた本は、それぞれに刺激的だった。常識とされている事柄を疑う習慣を忘れずにいたいと思ってきたが、ついつい流されている日常を省みる。


 Re20『街場の読書論』(内田樹 太田出版)。10年以上前のブログ記事などがもとに編まれた本。多くは既読のはずだが、理解不明な箇所も含めて読んでいて時折覚える心地良さがいい。文体が好きなんだろうと思う。中2国語教科書のために書き下ろした「学ぶ力」は、初読の頃に自分にとっての大きな示唆となった。




 天童荒太の小説はあまり読んでいない。Re21『君たちが生き延びるために』(ちくまプリマ―新書)。は高校での講演を基に、質問に応える形で文章化された内容だ。「ともかくまず生き延びよう」を核に置いて、高校生や教師、保護へ向けてのメッセージは、大方共感できるものだった。おっと感じたいくつかの考えがある。

 AI参入に不安を覚える問いに「AIが、労働の末端ではなく、社会の中枢、ことに政治や企業の意思決定の現場にこそ、どんどん入っていくべき」という考えを述べる。これは歴史を踏まえた人間の判断の愚かさに対する危惧だ。何度も繰り返す惨事を冷静に見つめれば、この潔さこそが大多数を救うのかもしれない。


 Re22『自粛するサル、しないサル』(正高信男 幻冬舎新書)。2020年から21年のいわゆるコロナ感染第3波までの社会の様子を、サル学の大家が解き明かした。覚えてはいても記憶の彼方に追いやられている出来事が多かった。それにしても「志村けん効果(イフェクト)」による自粛行動とは、納得の分析だった。

 学者の目から見た人間の行動分析は、やはり社会現象そのものを鋭くとらえ、広範囲に情報収集をしている。自分も若干の憧れを持つ『徒然草』を、先行資料をもとにこれほど暴いた(笑)のには気持ちよさを覚えるほどだ。そのものの批判ではなく、そこに共感してしまう人間心理を突く。そして次の一言に深く頷いた。

「共感は、社会に多様性を認めるうえでは、あまり助けになりません。」


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