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「中今」の精神を持つ

2024年04月05日 | 読書
 Re28『日記をつける』(荒川洋治 岩波アクティブ新書)。再読。岩波が2002年に始めた新たな新書企画の一冊で、2章の「日記はつけるもの」が印象深い。「書く」との違い…これは、その場限りではないニュアンスがある。形式が示す意味、書く者の意図、文学性まで考えが及ぶ。まあ、それより忘れないことだな。




 先月中旬、新聞記事の一行に目を奪われた。精神科医和田秀樹の語った「生きていれば何でも試してみることができます」。その向きでRe29『長生きにこだわらない』(矢作直樹 文響社)を読むと、延命にこだわれば他の試すことが減ることだ。つまり好きなこと、やってみたいことのために日々があるシンプルさ。

 「中今」(なかいま)という語は大型辞書にしか載っていない。初めて知った。「過去と未来の中間にある今。今の世をすぐれた世として、当世を賛美していう語」…社会を指すという考え方は当然あるが、個人にとっての現在を指すという捉えを強くするしかない。どんな世の中にあっても「中今」の精神を持つこと。


 久々に読んだドリアン助川の小説Re30『多摩川物語』(ポプラ文庫)。多摩川沿いに暮らす人々を描く連作短編集は、登場人物の心の襞を詳らかに描いている。川という自然が人に対して見せつけてくれる日常や非日常は、ドラマ性にあふれる。結末にそこに居る皆が幸せになってほしいと願うのは惹きつけられた証しだ。