楽しみに見ると裏切られるかなぁと思いつつ見たんだけど
まあ、想定外によくはないけど悪くもない映画でした。
映画の中のユングにむかつきっぱなし(笑)
このユング、いやな感じやなー、と思わない女がいるだろうか。
ホント、やな感じ、男前なんだけど(笑)
ユングとフロイトの話ですが、
ユングが途中からどうにもイヤなやつに見えてくるのです。
彼の女性関係も何もかも許してサポートしてくれる資産家の妻、
名声、美しい子どもたち、
何もかも持ってて、ひけらかすわけじゃないけど
にじみ出る尊大さが何ともねぇ・・・。
単に鈍いだけなんですよ、悪気はない。
フロイトの家での食事の時、客に最初に回ってくる料理を、
他の家族のことを考えずどっさりと取って、
まだ誰も食べてないのに一人気にせずさっさと食べ始めるとか。
フロイトとアメリカに行くとき、
妻がとってくれたので、と悪びれずに自分だけひとりで
一等船室にさっさと行ってしまうとか。
フロイトは自分の大先輩な立場ですから、この配慮のなさは
無邪気というより無神経。立派なKYです(笑)。
だから妻が、自分と子供のせいで彼のキャリアが
遅れがちになっているのではという引け目を持って
何でも許してしまうことにも、気づきはしない。
仕事や研究の心理学やカウンセリングで優秀でも、
目の前の人間を平気で傷付けてることには
気づかない、なんて人もいるものなんですねぇ。
患者であった、美しく聡明なザビーナに誘われて結局関係を持ち、
スキャンダルを恐れて一方的に別れるも、
結局もとのさやに戻り泣きつく勝手さ。
妻への罪悪感をいっとき感じても、
次のシーンでは妻からの贈り物のヨットに愛人と寝そべる無神経さ。
ちょっとしたエピソードで彼の無神経さを積み重ねて行く。
ああ、嫌な男、男前だけど(また)
でも、これらもユング本人の側からしたら、
全然別の話になっちゃうのだろうな。
自分が自分本位で無神経である自覚が全くないので、
ザビーナとのことも、真実の愛の苦悩として
高い次元の物語にしちゃうだろうし、
フロイトとの決裂にしても古い権威からの
苦渋に満ちた旅立ちのような物語になるのだろう。うげ。
自分は人より高い次元にいて人と違うことを知り悟っていると信じ、
一見冷静で中立的な正しい態度を見せ
人を気遣い助けるようにふるまいながらも、
実際は自覚のないだけの偽善者で
結局まわりのひとを無神経に傷つけるというような、
頭がよく繊細なくせに、他人に対しては鈍い人。
彼の中では、何か複雑な美しいものに変換されてそうな
ザビーナとの関係は特に、本当に彼の自分本位さを感じさせます。
映画の始まり部分ではかなり精神を病んで激しくて、
中盤で別れのあたりからはかなりヒステリックになる彼女に辟易もしたけど、
結局、彼女は傷つき学び成長するので、わたしは
最後までつくづく変わらないユングにあきれるばかりだった。
途中、重要な役なのにちょびっとしか出てこないヴァンサン・カッセルが、
ものすごく危険な感じで、ぞわぞわと胸騒ぎがします。
すばらしい。
見るからに危ない男。こわいくらい。
魅力ありすぎの、悪魔です。いや、天使なのか?
ユングの俳優さんも何度も書いたように男前で、
ムカつき始めるまでは楽しく見てたんだけどね。
(去年見た「ジェーン・エア」でロチェスターの役をしてた人だ!)
フロイトのヴィゴ・モーテンセンもいいし。
キーラ・ナイトレイがあまり好きでないけど、
精神を病んだ魅力的な患者、としての熱演はすばらしかったです。
でも、ぎすぎすしなくていいところまで、ぎすぎすしてる感じが。
痛々しいのがいいと言う、被虐性愛嗜好?の役ではあるので
演技としてはいいんでしょうけど。
ちなみに予告見て、ユングとフロイトと患者の
三角関係みたいに思ってたけど(そう見えない?)
フロイトは女性関係は関係ないです。
しかし、なんだかユングにムカついている間に、
映画自体をじっくり見るのを忘れてた・・・。
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