ハプスブルク家のとんでもない文化遺産の映画にうっとりしたあとで、
そういうヨーロッパの白い人たちが、つい数十年前まで他国でしていた
野蛮で極悪な植民地支配とその独立運動を潰す様子を描いた
「アルジェの戦い」を見て、もんもんとする。
ちょうど50年ほど前に作られた白黒映画のデジタルリマスター上映ですが、
評判通り映画として大変素晴らしい。驚きの完成度でした。
絵になるクールな構図、爆破シーンの迫力、
粒子荒い感じで、コントラストの強い黒白映像が緊迫感を高めるし、
登場人物とはある程度の客観的距離はおきながらもそれぞれ面白く撮ってあり、
群衆のシーンの迫力にはびっくりする。
このような抵抗時代の厳しい戦いの後にやっとアルジェリアが独立して、
それからわずか数年後に、この映画が撮られたことに、
制作者たちの熱意を思わないではいられない。
映画自体は完成に5年だったか、ずいぶん長くかかったようです、さもありなん。
内容的には、第2次世界大戦でナチスにひどい目にあわされたくせに、
そのレジスタンスの勇者たちを含むフランス軍が、
アルジェリアではそこのレジスタントを迷いなく潰してるという矛盾に呆れる。
そして独立後数年でこの映画が作られベネチアで賞を取った時に
反仏映画だと多くの映画人が席を立ったという反省と自覚のなさにもあきれ返る。
(トリュフォーは去らなかったそうです。素敵。さすが。)
創作に関わる人間が、いったいどういうことなんだ。恥を知れと思う。
ナチスと戦ったフランス人たちは、単に自分とフランスのために戦っただけで
正義や自由のために戦ったわけなんかじゃなかったのねと思ってしまう。
この時代のフランスに、ナチスをどうこう言う資格はないな。
でもフランスだけでなく、列強はみんな直接間接に植民地支配をしてて、
その後それがこじれにこじれて紛争の続く地域も多いのに、
今や自分たちのしたことをすっかり忘れているような白い人たちに腹が立つ。
また、テロというものがどういう状況で起こり、どう過激化していくかも
良くも悪くもリアリティを持って理解出来る映画です。
どういう状況でもわたしは暴力には反対したいし、
無差別テロはいかなる場合も決して容認できないと考えていますが、
その背景を知り、なぜそういうことになるのか理解するのは大事なことですね。
テロリストを一方的に悪と決めつけてすむような問題ではない場合が多いのです。
(とはいえ、個人的にはやはり容認できないという立場は崩したくないですが)
映画の中では、フランス人将軍は単純な悪人には描かれていません。
アルジェリア人を別に敵として憎んでいるわけではなく、
自分の戦いを勝つことが使命の軍人で、淡々と使命を果たしているだけの
軍人としては優秀な人ですね。
冷酷なこともするけど、やや複雑で興味深い人物に描かれているように思う。
一方で抵抗運動側の主役の一人で血気にはやり怒りに任せて行動するアリは
理想に燃える優秀な指導者のひとりとしては描かれていません。
このように単純な勧善懲悪を排除しているところもドキュメンタリーっぽいけど
これはドキュメンタリー映画ではなく
まだ生々しい戦いの記憶を、おそらく熱意によって、細密に再現した作品です。
この映画の中に記録映像は使われていませんが、
実際にこの時の独立運動に参加していた人たちも出演してるそうです。
映画としても、記憶すべき歴史を描いた記録としても名作。
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