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sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:ナイトクローラー

2015-09-04 | 映画


本当に、気持ち悪い男が主人公。
この、気持ち悪さをなんといえばいいのか。
この男を悪人という人もいるけど、そういう風には思わないんですよ。
だって彼には悪意はないんだもの。
人を陥れたり不幸にして喜ぶような悪意は全然ないの。
私怨とかもないし、妬みや怒りで動くこともない。
ただ、同じくらい善意もなく、そもそも人の気持ちが全くわからなくて
わからないことをなんとも思ってない。
良くも悪くも多くの人の持つ情緒的なものが欠落してるんです。
ひたすら自分の欲望と野望に向かって素直に邁進してるだけなんです。

詐欺や泥棒のようなことをして暮らしてた主人公が、ある日、
事故現場の動画撮影をして、それをテレビ局に売る人を見かけて
自分もやってみようと始める話。
空気を全く読まずに、ガンガン割り込むし、
自分を信じていて売り込むことに躊躇ないし、
息を吐くように嘘がつけるし、
売り込み先のテレビ局で似たような感性を持つ女性と知り合い利用し、
どんどん這い上がっていく。
人の命をなんとも思わないので、見殺しにするのも
あるいは自分が仕込むことさえ、平気で、特ダネを撮る。

ただ頭はまわるので、知られると糾弾されるということはわかってて
その辺のたちまわりはうまい。
でも、やっぱり悪人というカテゴリーには入らないきがします。
普通の倫理観がなく、共感能力がゼロなだけで、
自分が悪いことをしているつもりもないでしょう。
悪いこととも思ってない。なんでいけないのか、わからないんでしょう。

悪人というのを映画でも実際の事件などでも見たり知ったりすると
普通の倫理観や共感力のある人は、怒ったり憤ったりする気持ちになりますよね。
でも、わたしはこの男に怒る気持ちにはならないんです。
ただただ、気持ち悪い。
薄気味悪いという感じを100万倍くらい増幅させた、気持ち悪さ。
この男が触ったところは、じとっと湿ってるんじゃないかと思わせるような。
人間の皮を被った爬虫類だと思うと、すっきりするのかも。。。
そういえば、
この主人公って、けっこう几帳面にアイロンかけをしてるんですよね。
でも、すごく几帳面で神経質な人かというと、さほどでもない。
ここで、ストイックに同じ形の服しか着ないとか
家の中がものすごく片付いてて何もないとかまで行くと
よくある感じになっちゃうから
その辺の塩梅も、なかなかよかったかな。

まあそんな気持ち悪い主人公なので、画面に出てくるだけでぞっとするけど
サングラスをしてる時には、気持ち悪さがやや減ったので
外見的には目が気持ち悪いということでしょうね。
これだけ嫌な気分にさせるんだから、素晴らしい演技だと思います。

でも、この役を、見るからに感じが良くて善良な好感度高い若者がやったら
そっちも面白かったかも、と少し思う。
笑顔がさわやかで、誰でも信じてしまうような優しげな明るい青年が。
そういうのも見たい気がしました。

主人公を雇い、そのうち逆に利用されるようになる
野心家の女性の役が、レネ・ルッソ。
もう60歳なんですが、厚化粧で安っぽく、けばくて、どぎつい、
野心満々で押しの強いいやな女の役を、すごくうまくやってます。
この女性には気持ち悪さはなく、彼女は普通に、
イヤなやつと悪人の中間くらいのカテゴリーに入ると思います。
だから後半、主人公に利用されるときに、同情心がわかなくて
なんだか複雑な気分になります。
まあとにかくこの主人公二人、うまいキャスティングですね。

あと、まちなかの夜のシーンもいいですね。
うろおぼえの「タクシードライバー」を思い出したりします。

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