いや、これ、頑固なおじいちゃん兄弟の、ちょっととぼけてユーモアのある
ゆるふわほっこり映画かなぁと思うじゃないですか?
予告編見ると、最近よくあるこの平坦な感じのナレーションで
映画に付けられたコピーが
「ひつじを愛しすぎた老兄弟が巻き起こす、まじめでおかしな大騒動」で、
雄大な景色の中で淡々と静かに、でもそこはかとなくユーモアのある調子で
物語が進んでいき、最後は何十年も不仲だった兄弟が打ち解け、
失うものも大きかったけど忘れていた大事なものを思い出す・・・みたいな
そういう映画と思うじゃないですか?
・・・それが、どうも全然違ったみたいです。
いや、違ってないのか?ラストの描き方が過激に見えただけで
そういうほっこり話なのか???
と、ラストを見た時点で、頭の中が混乱しました。そういうラスト。
びっくりした。切実で壮絶、魂を揺さぶるようなラストですよこれは。
わかりやすいハッピーエンドを期待してたわけじゃないけど、
ハートウォーミングな大団円的終わりかただったら
ああ、ゆるふわ映画にしてはなかなか良かったな、くらいだったかも。
でもこのラストだからこそ、心に残る映画かもしれません。
ラストは展開の意外さとかよりむしろ、え?そう終わる?そこで終わるか?と
とにかく突き放されたような、不思議なショックが大きかった。
舞台はアイスランド。
厳しくも雄大な土地で、代々続く優良な地元の羊の血統を守りながら、
40年も口をきかずに断絶している兄弟。
どちらも独身のおじいさんですが、それぞれ牧羊をしていて
羊のコンテストでは毎年トップを競いあったりしている。
あるとき、兄の羊が伝染病にかかっていることがわかり、
伝染病根絶のため、村じゅうの羊の殺処分が決まる。
殺処分後も、それぞれの羊小屋など消毒解体焼却などの手を尽くした後、
2年は牧羊できないことになっていて、
国から補助金のようなものが出るようですが
(2年分の例年並みの売り上げは補償するとか、いろいろあった)
羊なしでこの土地で何をして生きればいいんだ?という人や
2年待って英国から輸入されたホルモン剤まみれの羊を飼えというのか?という人、
それぞれがそれぞれの決断をしていくのですが、
この兄弟の決断は・・・というお話。
頑固で人付き合いもなく、雑然とした家に住む兄と、
こざっぱりとした家で、村人ともコミュニケーションをとりながら
穏やかに暮らす弟との対比も面白いです。
兄弟の対立は、父親の遺産のときに原因があったのか、その前からか、
父親は兄には相続を一切認めなかったとか、気にかかるけエピソードはあるけど
なんでこんなに兄弟仲がこじれてしまったのかは結局は明かされないままです。
この兄弟や村人の着ているセーターがかわいいです。
この地方のものなんだろうか、グレーやベージュ系のアーガイルっぽい模様が
首回りから肩にかけて丸く入ってるセーターです(予告編に出てますね)。
それから、弟の方の家の、壁紙の模様もかわいい。
こういうところは、ゆるふわ北欧映画みたいですね。
あと羊たちもかわいい。
立派な角を持っていて、一見かわいいとは言えない感じだけど
もこもこの体ににゅっと細い足が4本突き出ていて、
とっことっこ歩く様子は、やっぱりかわいいです。
牧羊犬もかわいい。口をきかない兄弟の手紙のやりとりを
このわんこがするんだけど、犬ってやっぱりお利口だね~。
雪に閉ざされる厳しい冬も、家の中は暖かいのか
おじいさんがお風呂に入るシーンや、お風呂から出てウロウロするシーンなど
結構、裸のシーンがあります。
おじいさんの裸なんか特にみたくもないけど、
なんかそういうシーンが妙に映画にリアリティというか体温を与えるなぁとは思う。
まあとにかく、すごいどんでん返しがあるわけでもなく、
謎解きや派手な事件があるわけでもないのに
なんなんだこの凄く印象の強い壮絶なラストは、と思った映画です。
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