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sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:ビラルの世界

2013-01-23 | 映画


インド、
ひろうこんばい。なう。
インドの底知れぬ混沌に目が疲れたわー。

インドの、盲目の両親を持つ三歳児を撮ったドキュメンタリーっていうと、
普通、貧しくてもいたわりあって生きてる家族とか想像するよね。
チラシのコピーもそんな風に読めた。


>走る、転ぶ
>もらす、抱きつく
>叱られる
>手をつなぐ
>カルカッタの路地
>ビラル、3歳

これが、まん丸できらきらな瞳の男の子の顔のアップと
一緒にチラシに載ってたら、なんかハートウォーミングな話と
思っちゃうじゃないですか!(笑)


いやぁ、かなり、いや全然、違う映画だった。
どひゃんと消耗しましたよ。
でもまあ、これがドキュメンタリーなんだな、とも思う。
重くて濃い混沌をそのまま写す映画だった。

別に特に悲惨な話ではないのです。
家族は子どもの糞尿にまみれて、最底辺の貧困だけど、
そこは淡々と撮られています。
でも、カメラの目がどちらの方向も向かず、
どんな物語も語ろうとせず、
何もジャッジしようとせず、
そのまま写し取るだけの混沌の濃さに、
目も頭も、ものすごく疲れたのです。
いかに自分が、物語というものに慣れているかを思い知りましたね。
これに比べたら、この映画の前に見た「壊された5つのカメラ」は、
物語もメッセージもあって、
パレスチナでの納得の行かない悲しい現実をつきつけられることで、
見ている側は理解や共感や感情移入ができる、
わかりやすいドキュメンタリーだったと思った。

アジアの貧しい時代の記憶が、わたしは、おぼろげにある世代です。
子供の頃毎夏、韓国の田舎に行って
電気がやっと通ったばかりのような家で牛や鶏とすごしました。
でも、田舎は貧乏でも、山や川に食べ物はあった。
そして日本ではごちゃごちゃの長屋に住んでたけど、
高度成長期だったし、仕事もたくさんある時代だったから、
インドの都会の貧困とは、また全然別物です。

こういうアジアの都会の貧困で、わたしの少しでも知ってる一番近いのは
マレーシアにいた時、ちらり垣間見えた
パキスタンなどからの移民の生活かもしれません。
暑い国の不衛生な環境、でたらめな日々、国としての駆け足の発展とは別に
必死でいきている個人たち。
途上国の都会の貧困は、何かの希望がなければ
逃げ場がなく息もできないような閉塞感に、どんどん荒んでいきそうです。
そういう、あれやこれやの混じり合ったものを、
さらにうんと濃くしたのを見せられた感じの映画でした。

映画のあと疲れすぎて、
欧米系チェーン店とかのきれいな紙コップに入った
コーヒーが飲みたくなっちゃって、
わたしは西側、北側の人間なんだなぁと一瞬思ったものの、
実際は結局、カレー屋さんでカレーを食べてコップの水を飲み干したわたしは
先進国の清潔で秩序ある生活様式にすっかり染まりながらも
意識の中に強くアジアが染み付いてるから
こういう映画を見ては、内側からじんじんと疲れてしまうのかもなぁ。
これをどこか、知ってると思うから、余計に・・・。

これから第二の人生はヨーロッパ志向で行きたいのに、
わたしはアジアに絡めとられたままかも。やだけど(笑)。

ビラルの盲目の両親は、ムスリムとヒンドゥーで
宗教の違いを乗り越えて結婚したわけで、
熱い時期もあった片鱗を一瞬見せるけど、
今では愚痴と文句ばかり言ってる奥さんと、
何となく優柔不断な旦那さん。
奥さんは子どもを毎日、ばしばし叩く。
それを言われると、みんなやってるわよ!子どもは叩くものよ!とムキになる。
借金だらけで仕事もなくて、でも3人目を妊娠して中絶。
絵に描いたような、教育のない貧困世界の住人です。
愛情あふれる家族、とチラシに書かれているけど
愛情がないとは言わないけど、たっぷりでもなく
彼女なりに普通に必死で育てているだけですね。
チラシは無理矢理、ハートウォーミング路線に押し込みすぎ(笑)。
3歳の息子ビラルも弟をバシバシ叩いたり、いじめる。
近所の子どもともケンカする。
くりくりの好奇心にキラキラした目だけど、
絶対したたかなワルガキになると思う(笑)。
まだ1歳くらいの弟は、家族で一つしかないベッドの上でも
2畳くらいしかない床の上でもおしっこもウンチもジャー。

こういう生活を、悲壮感とかとは無縁にすごくフラットな目、というか
とにかくただ、そのまま撮ってるって感じで
特に希望もないけど、特に絶望もせず、
毎日しのいでいる様子で始まり、終わる映画、でした。
でも、まあ、見てよかった。
見るべき映画だったと思います、わたしにとっては。

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