先日見たモーターサイクルダイアリーズの主役のガエル・ガルシア君が
製作に関わってるし、これもまたロードムービーっぽいかなと、借りて見た映画。
移民たちが列車の上に乗って旅をする様子、興味深いです。といっていいのか。
南米のギャングがでてきます。刺青だらけの粗野で暴力的な男達。
何か思い出すと思ったら、「マッドマックス」だった。
あの世界にすごく近いけど、こちらはもっと現実寄り。
南米の最下層のギャングと移民の話なんだけど、こういうのを見るといつも、
自分もここに生まれてこうなってたかもしれないとどきどきする。
自分が日本で在日に生まれたのも、本当にたまたまだと、いつも思ってる。
こうして毎日、気持ちいいベッドで眠れるのも美味しいものを食べられるのも
友達と楽しい時間を過ごせるのも、好きな映画を見られるのも、全部たまたま。
誰がどこに生まれたかは、ほんのたまたまのこととしか思ってない。
わたしは同じわたしの卵のまま、別の時代の別の国に
生まれたかもしれないと、よく思うのです。
いや、実際生まれているのかもしれない。世界中にたくさんたくさん、
別のわたしが実際にいるのかもしれないと思ったりする。
だから不思議に思う。日本民族偉大、日本サイコーの人種差別者の人たちって、
自分がほんのたまたま日本の日本人に生まれただけって考えたことないんだろうか。
ないんだろうなぁ・・・。
映画は、アメリカへ移民してた父親が娘を迎えに来て
一緒にアメリカへ行くことになる、そのロードムービー、かな。
少女は列車の旅の途中で、ギャングの青年と会います。
この青年はギャングの組織にいるのだけど、
まるで漫画のような野蛮で幼稚で凶暴な組織です。これが現実なのかな。
家の家族もないような男たちの組織ですが、ここに入るためには
13秒間のメンバーからのリンチに耐え、さらに人を一人殺さないといけません。
こっそりよそで恋人を作っていた青年は、恋人を殺され、
さらに忠誠を示すために、列車強盗を命じられます。
そこでヒロインの少女と出会います。
映画の中では青年は少女に恋をしたようには見えません。
恋心、というよりもっと淡い気持ちかな。
ギャングの世界とは違う無垢な少女に対するほのかな好意、くらいかなぁ。
でも少女は青年を好きになります。
死の予感、未知の世界、危険な香り、絶望を漂わせ暗い影のあるこの青年に
少女はころっと惚れてしまうのですねぇ。
初恋かもしれません。
恋してしまえば、強い少女です。危険を覚悟してついて行こうとします。
この子、意志の強い、心の強い女の子の役、なかなかいいですね。
南米の熱くて強くてしっかりした女の感じがよく出ています。
一方、青年は、ギャングの世界には向かない子だったのでしょう。
ギャング達は本当に暴力しか知らず、殺し殺されることをなんとも思ってないけど
青年は、不快感まではいかなくても、少なくとも違和感を持ってました。
だから恋人が出来た時にはここから出たいと思ったのでしょう。
そして殺された恋人が本当に好きだったようで
デジカメの中の恋人を何度も見ていて、そういうディテールもいいです。
青年には弟分的なまだ幼い少年がいて、どう見てもまだ小学生ですが
ギャングの世界にあこがれて、そこへ入っていきます。
まだ善悪もわからない状態で、この世界に入ったら
暴力や人を殺すことになんの躊躇もない人間になっていくのでしょう。
というか、映画の中ではすでにそうなります。
きっとこういう現実があるんだろうなぁと思うとやりきれません。
終わり方は悲しいラストだけど、絶望と、仕方ないという諦めと同時に
わずかな未来も残されています。
でもどんなに新しい未来が来ても、この時の悲しさは忘れないんだろうな。
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