去年、友達にもすすめられてたんだけど
気持ちのいい映画ではなさそうだし、気が進まないうちに見逃してました。
80分くらいなので、まあ見ておくかとDVDを借りてみた。
見始めてげんなり。
アクションや殺し合いやエグいのには多少免疫が出来て来たけど、
こういう建前と本音のせめぎ合いで
上品にとりつくろった人がいがみ合う会話というのを、
1時間も見てるのかと思うとどっと疲れる。
見るけど。
その嫌らしさがこの映画のウリだしね。
でも、自分を甘い善人だなぁと思うのはこういう時で
この暴かれる本性みたいなところを
大笑いできて、面白いと云える人に、中々自分はなれない。
イヤなところを見るのはいやだなぁ、やっぱりわたしは。
かなり笑えるように作られているんですけどね、この映画。
子ども同士のケンカで怪我をさせた加害者の子の親が
怪我をさせられた被害者の子の家を訪ねて話し合う。
最初はなんとか表面上取り繕った雰囲気のまま
話し合いは一旦終わりかけるけど、おさまらない気持ちで
ちくりちくりと謝罪や反省を求める被害者の母親に、
子どもに興味のない加害者の父が反論したり、
ついついこぼれ出る本音の応酬がどんどん増えていき
こどものけんかに関係のないそれぞれの夫婦関係の問題まで暴かれる・・・
2組の夫婦の室内劇だけど、
誰一人としていい感じの人がいないので疲れます。
被害少年の母、ジョディ・フォスターは
インテリリベラルなニューヨーカーを自認していて正論を言う。
でももちろん、ヒステリックで融通が利かずユーモアもない。
夫役のジョン・C・ライリーは平凡でつまんない男なのは見てわかるんだけど
最初は物わかりのいい温厚な夫を演じている。
そのうち妻にあわせていたリベラルの仮面ははがれて、
アホでマッチョな単細胞が顔を出します。
加害少年の母ケイト・ウィンスレットもやっぱりヒステリックな役。
夫婦関係さえ取り繕って生きて来たのが、どんどんはがれていく。
その夫の弁護士は、皮肉屋で慇懃無礼、人に嫌われてもなんにも感じないし
苛立たせるほどケータイにかかりっきりのワーカホリック。
好き嫌いでいうと、全然好きじゃない映画なんだけど、
確かに面白いと云えば面白い映画でした。
上質な中編映画だと思います。
そしてわたしは、最初不穏な空気をはらみながら
段々雰囲気が悪くなっていく前あたりに一番疲れてて、
映画の後半、本音の罵り合いになってきたら、
見てるのが随分もラクになって来たことに気づきました。
保ってる外面が崩れていく時が、自分には居心地が悪いのだとわかった。
崩れてしまえば、平気・・・。
恐怖や不安はファンタジーだって誰かが何かの映画で言ってた気がするけど
自分はそういう、現実ではないこわさや不安に特別弱いのだなぁと思います。
心配性だし。
現実になってしまえば、そこにはもう正体のない恐怖も不安もなく
現実に追われるだけなのに、
そこへいたるまでの不安にとても弱いのですねぇ。
だからこの映画の前半に、異常に疲れてしまったのでした。
あ、それとこの映画、邦題いいですね。
邦題が非常にひどい映画、多いけどこれはいい。
(先日見た「50歳の恋愛白書」なんか、ひとりの女性の
家族と人生、自立に関するいい映画なのに、あまりにひどい邦題のせいで
夫に浮気されて若い男に転ぶ下らない話かと思ってしまった。気の毒。)
原題は虐殺という意味のタイトルで
この4人の修羅場と、劇中に出てくるアフリカの話を絡めているんだろうけど
おとなのけんか、ってすっきりしてると思います。
ポスターのフォントも、不穏な雰囲気の人々の中、呑気な感じを醸し出してて
笑える映画であることがうまく出てると思う。
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