sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:アイ・ウェイウェイは謝らない

2014-01-19 | 映画


世界的に有名な、中国の現代アーティストの
ドキュメンタリー映画です。
友だちが、数年前に彼の展示を見て、すごくよかった!とほめてて
ずっと気になっていたのだけど、この映画が来たので絶対見なくては!と。
でもなぜか大阪は梅田には来ないので(心斎橋には来るけど)、
珍しく神戸で見てきました。
梅田でやってほしいなぁ。もう一回見てもいい。

現代美術家の中国人アイ・ウェイウェイは体制への反逆者で、
作品を通して大々的な体制批判を繰り広げてきました。
こわくないんですか?と聞かれて
「こわいよ、でも何もしなかったらもっとこわいことになる。
こわいからするんだよ」と映画の中で何度か言っている不屈の人。

北京のオリンピックスタジアムの鳥の巣とよばれる主会場の建設で、
芸術顧問として設計に関与したけど、
結局オリンピックは国のプロパガンダでしかないと批判的になり手を引いた。
オリンピックのために貧しい人々や労働者を力ずくで追い出したことに対しても
激しい非難をして、開会式には出なかった。

さらに四川大地震のときは、亡くなった学生や子どもの正確な調査をしない?
あるいは公表しない政府に怒り、
また杜撰な建物のせいで犠牲が増えたという点でも政府の責任を問い、
亡くなった何千もの子どもたちの名前を独自に探し出すということをして
その名簿を作品としている。
その後も、名簿を名簿の数だけの市井の人の声で読み上げる作品を発表したり
それらを、本にする計画もあるようです。

ニューヨークに何年も住んでいたのに中国に戻り
そこを基盤に世界中で展示をしてきたけど、
中国でそんな体制批判をしてても大丈夫なの?
世界的有名人だから大丈夫なの?と思っていたらやっぱり捕まった。
それまでにも、警察にいきなり拘束されたり
殴られて脳内出血で手術するはめになったり
監視されたりブログが閉鎖されたりはあったようだけど、
今回はちょっと本気の対応をされてしまったということのようです。
ちなみに、中国では著名な作家やノーベル平和賞受賞者も、
まだ服役中だったりするし、
アイ・ウェイウェイがどんなに有名でも
逮捕され勾留されるのは不思議なことではない。

映画の中では2011年の4月に突然当局に捕えられ(容疑は脱税・・・)
81日間拘禁されたあとで釈放されたところで終わっています。
保釈中なので拘留中のことに関して一切言わないとか
ネットで発信を禁止とかいろいろ条件があったようです。

ここまでは映画の内容。

そして今、最新のインタビューなど見ると
その後3年近く、パスポートを取り上げられたままで
中国から出国できない状態が続いているそうです。
→「アイ・ウェイウェイインタビューNYタイムズ」
彼は今、北京のスタジオ前にある自転車のかごに
毎朝9時に花を飾るというパフォーマンスを続けていて、
その行為をアート作品としてネットにアップしています。
Twitterに毎日アップされている。

その自転車はあるドイツ人のもので、そのドイツ人は当局によって
10ヶ月以上拘禁され、ドイツ政府の多大な努力で解放され
今はドイツに戻っているそうですが、
戻る時に自分の自転車をアイ・ウェイウェイに託したのだそうです。
政府はそのドイツ人を密輸の罪で逮捕したと云っているけど、実際は
当局が免税のアート特区を作って彼の仕事を奪いたかっただけなのだと
ウェイウェイは言います。
この自転車は例えばニューヨークでは捨てられてたりするほど
どこにでもある自転車だけど、
ここ中国ではその持ち主が無実の罪で逮捕されたりするということで、
そういう弾圧の象徴的なものであると考え
自分自身の取り上げられたパスポートが戻るまでそこに毎日欠かさず
花を置くと云う行為を続けることにしたそうです。

この花束というか、アレンジは今風のおしゃれなものではなく
菊が中心の古くさい感じのものが多いですが

この自転車とこの壁にはすごく似合うなぁ。
花だけが、世界の事情に関係なく生きているように、わたしには見えます。


そういえばベルリンにスタジオ建設する予定もあると言ってます。
もちろん今のままでは彼は行けないし、スタジオは出来上がっても
結局からっぽのままかもしれない。
でも、空っぽのままのスタジオも、それもまた意味のあるアートであると言うし、
また年内に予定されてる海外での展示も
彼が行けるかどうかは、まだわからないけど
本人不在の展示もアートとして彼の政府批判をよく表すのかもしれません。
転んでも絶対ただでは起きない人ですね。
どこまでも不屈でしなやかです。
風貌は昔の中国の絵の仙人のよう、というか
村上隆にも少し似ていますが(笑)。

村上隆も中国に生まれれば、アイ・ウェイウェイのようになったのかな。
アイ・ウェイウェイも日本に生まれれば村上隆になったかな、いや違うなぁ(笑)。
ウェイウェイは現代アートの分野で世界的に評価されてるけど、
彼の作品は現代アートとしてはかなりストレートだと思います。
シンプルにわかりやすく意表をつき、大きく、美しい。そして、
アートの現状あるいは未来を考えるより(戦略としては考えているでしょうが)
体制への怒りや理想をまず持っているように見えるアイ・ウェイウェイ。
社会活動家としての彼と芸術家としての彼をきりはなすことはできないでしょう。
日本に生まれてもきっと、派手に体制批判や社会活動をやってただろうけど、
何だか日本社会の中の彼をあまり想像できない。
大きなものに向かう彼しか想像しにくいです、大陸的なんだと思います。
日本にもアイ・ウェイウェイのような芸術家はいるのかな。
いるかもしれないけど、彼の大きさに匹敵する人はいない気がします。

もうひとつ、映画を見て、つくづく感じたのはTwitterの力です。
2006年にアメリカの30歳そこそこの若者が作りだしたTwitterだけど
その後、このTwitterが世界の紛争や政治に果たした影響力は
本当に計り知れないんだということを、つくづく感じました。
Twitterなしにアイ・ウェイウェイの運動はなかったかもしれない。
警官に殴られても、拘束されても、裁判の訴えを却下されても
すかさずそれをその瞬間にアップして、逆手に取り
あらゆることをオンタイムで世界に告知する様子を見ると
インターネットの力を再認識せずにいられません。

映画を見て帰宅後、すぐに、Twitterの
アイ・ウェイウェイのアカウントを5つほどフォローしました。
中国語と英語だけですが、みんなもフォローするといいよ!

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