映画をたくさん見てる友達が（今年もう100本以上）、他にもいい映画あるけど
これが彼女の今年のナンバーワンになるかも！と褒めてたのでいそいそと見てきた！
この前にもう一本みたんだけど、そこで、その彼女と偶然バッタリ会ったりして
映画好きの世界は狭いな〜と思いつつ。
ジョージア（グルジア）とエストニアの初の共同製作映画です。
後半までは、いい映画だけど、それほどかな〜とぼんやり見てたんです。
映像きれいで、このグルジアあたりの風景ってとてもいいなぁと思うし、
役者も渋くていい味だし、ストーリーも退屈はしない。
でもなんだか決め手がある感じじゃないなぁ、期待しすぎたかな？と
ぼんやり見てたんだけど、後半に入ってからの展開で、
少しずつ前のめりになり、ラストのうまさに見終わった後で、
ちょっとこれ、うわ〜！いいやん！となりました。
後半には、つらい事件の起こるシーンで、そのつらさだけでなく、
戦争の、人と人が殺し合うことの愚かさ、無意味さがどっとこみあげてきて
思わず嗚咽がもれそうに・・・。
グルジアやエストニアの政治情勢には暗いのですが、お話はわかります。
敵同士の兵士が戦闘で怪我をして同じ家で世話になる話で、
よくある、それで心が通いあうハートウォーミング系か？と前半は思っちゃう。
ハリウッドでも作りそうなタイプの心温まる感動ものかと。
ところが、全然そんな甘ったるい話にはならなくて、
人肌程度の温かさを少し感じられるかどうかくらいのところまでな感じでした。
でもその人肌程度のほのかな温かさが、すごく重要なことで、効いてくるのです。
殺す殺すと憎しみをたぎらせてる同士が、少しずつ落ち着いて行く過程は、
すごく抑制が効いてるから、甘ったるさも、ありがち感もないし、
登場人物も年寄りと兵士ばかりで色気がないけどよく描かれてて、かなり渋い。
でも抑制は効いてるけど、充分エモーショナルな映画で、心に残るものが大きいです。
イスラエルとパレスチナにも当てはまりそうな話で、みんな観たらいいのにと思う。
映画の終わり方は、よく考えると悲しいし希望もあまりない話だけど、
どこか明るい気分なのは、結局これが人間を信じてる人の作った映画だからと思う。
結果はうまくいかなくても、それでも人間を信じることを肯定している映画です。
「世界が危機的な状況のなかで、人間らしさを保つことの大切さを描きたかった」と
語ってる通りに、この監督は希望を失っていない人なのでしょう。
公式サイトよりあらすじを：
ジョージア（グルジア）のアブハジア自治共和国でみかん栽培をするエストニア人の集落。ジョージアとアブハジア間に紛争が勃発し、多くの人は帰国したが、イヴォとマルゴスは残っている。マルゴスはみかんの収穫が気になるからだが、みかんの木箱作りのイヴォは理由を語らない。ある日、彼らは戦闘で傷ついた二人の兵士を自宅で介抱することになる。ひとりはアブハジアを支援するチェチェン兵アハメド、もうひとりはジョージア兵ニカで敵同士だった。彼らは互いに同じ家に敵兵がいることを知り、殺意に燃えるが、イヴォが家の中では戦わせないというと、家主が力を持つコーカサスのしきたりに則り、兵士たちは約束する。数日後、アブハジアの小隊がやってきて‥･。
イヴォには惚れます。最初はただのおじいさんに見えたんだけど
深い悲しみを知ってもなお、復讐や憎むことの無益さを忘れない大人な人。
みかんのことばかり考えているマルゴスも、かわいいキャラクターで
お金も大事だけど、（戦争で収穫できずに）みかんが腐ると思うと
こころが痛くなるんだよ、というセリフが、彼のやさしさを表してる。
やたら殺す殺すといきりたつマッチョな兵隊たちにはうんざりするけど、
終わる頃には、どちらも嫌いじゃなくなってます。
ニカが、イヴォの孫娘の写真を見ては、かわいいなぁと、優しい顔で微笑むのも好き。
ジョージアは豊かで美しいところだと聞いたことがある気がします。
舞台になっているみかん畑のある主人公たちの家のまわりの自然がとても素敵。
アブハジアはまだ戦闘状態にあるので、同じ黒海沿岸グリア地方の広大な荒地に
集落や道を作り、樹木を植えて撮影されたそうです。素晴らしいロケ。
そういえば、家の中ではことあるごとに「お茶を飲むか？」とすすめるのですが、
なんかこのお茶がとてもいい。
マグカップを持ち、大きいヤカンに沸いたお湯で、小さいヤカンに入ってる何か？
（濃く出したお茶？）を割るんです。どうなってるのかな？
でもなんか、とても温かいんですよねぇ。
わたしも誰かにこんな風に、お茶飲む？って言ってほしいなぁ。
部屋の中も、壁にかかってるファブリックみたいなものとか全部可愛い。
