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sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:NO

2016-01-12 | 映画


チリのピノチェト独裁政権の終わり頃の実話ベースの話。
国際非難により現政権の国民信任投票をすることになった時の話。
格差を大きく生みつつも経済成長優先させ、
拷問を武器に反対派を弾圧しまくったピノチェト将軍様。
自由を求めるアーティストたちや、家族を不当に殺された市民たちは
現政権にNOと言う一方、
息子は大学に行ってる娘も職があるから何も不満がない、と
将軍様を慕う市民もいる中で、
与党と対抗勢力の野党連合それぞれに27日間毎日15分のテレビ枠が与えられ、
野党の側のそれ(NO側)を任された広告屋の戦い。

主人公の広告マンがガエル・ガルシア・ベルナル。
ガエル・ガルシア君って、小さいのに頭でかいし、笑い顔は泣き顔みたいだし、
なんかバランス悪いんだけど何か持ってるよねぇと、見るたび必ず思う俳優。
彼が出てる映画はとりあえず見てみようかなぁと思うし。

80年代の機材とフィルムで撮った、なんだか粗くて雑な感じの映像が印象的です。
これは映画内で映される、当時の実際のテレビCFと
違和感がないようにということらしいけど、
なんか古びた色合いで、ピントがあってるのかどうかわからないような
ゆるい映像の不思議さは、かなり面白かったので成功してると思う。

広告屋なんて、人の感情操作をする仕事で、騙してなんぼ的なところを
心の汚れた大人になって、なんとかやるしかないようなもんだと思ってたけど、
まあそうなんだけど、ここでは広告屋さんを責める気分にはならなかったです。
勝つとわかってる独裁与党の驕り高ぶった尊大さやずるさや暴力に震えるし、
勝てると最初から思ってない諦めきった野党側のダメさや旧態依然とした態度、
勝つことより自分たちの理想を声高に叫びたいだけの戦略のなさにもあきれるし。
主人公の元妻は、反政府運動をしているけど
彼女までが、そんなことをしたって何も変わらない。
選挙で勝てるはずがない、勝てても不正されて負けるに決まってる、と
すでに希望を失っている中で
淡々と、政治ではなく広告の戦略で、CMを作っていく主人公が
一番冷静で物をわかっているように見えます。

それから、理屈や冷静な事実より、楽しく明るく希望に満ちたイメージに
流されてしまう一般大衆というものについても考えました。
本当に、問題提起しないで、啓蒙もしないで、
明るくハッピーなコーラCMみたいなイメージ映像で勝てるのか?と不思議に思うけど
実際そうだったわけで、広告に操作される側の無知や意識の低さに
問題があるのは、ずっと変わらないことなのかなぁと。

ちなみにこれ大好きな映画「グロリアの青春」のプロデューサーなのね?
ラテンアメリカの映画界は、まだ案外狭いのかな。
でもハリウッドや欧米とは違う、独特の感じがあって、結構好きです。


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