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sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:さざなみ

2017-01-18 | 映画


予告編とかあらすじの紹介とかで「死の棘」的な、
一方的に妻が嫉妬い狂いヒステリックに言いたて責める映画かと思ってたけど、
そういう激しいシーンは少なくて、
妻が心情を吐露するのは一、二場面だけで、しかもその内容は結構理性的で、
理屈も通ってるし、ヒステリックでもないし、妄想でもない。
一方でこの呑気で鈍感な旦那も旦那だわ全く、という感じだったので、
こりゃまあ妻の気持ちもわかるなと思い直しました。
「死の棘」の怖さは、妻がもう理屈の通じる相手ではなく
すっかり壊れてしまっているところだったのですが、
「さざなみ」の主人公は、そういう風には壊れないのです。
いや、もちろん自分の中に傷ついたところや壊れたところはあって
一部は永遠に治らないかもしれない傷だったりもするんだろうけど、
自分の形がなくなるほどは壊れない。
その傷を抱きながら、何事もなかったかのように生きていくんじゃないかな。
シャーロット・ランプリングの知的で怜悧な顔はこわいので
そこに深刻味は増えてて、なんだか怖い寂しい話だなとは思う。
でも、もっとこわい映画かと思ったのに、案外普通というか、
なんでもなさすぎというか、どこにでもあって案外誰でも持ってる傷の話だから
この怖さって元々日常の中のあちこちにもあるものなのに、
それをこの映画が描いたのはすごい!というように驚くのは鈍いと思う。
いや、とてもうまく描いている!と感心するのならわかるけど。

もうひとつ
恋愛における執着や嫉妬はわたしにはあまりわからない分野なので、
「さざなみ」も絶対わからないだろうと思いながら見たのに、
案外、妻の気持ちがわかる気がしたのは、
嫉妬だけの問題じゃなかったからだなと思いました。
何十年一緒に積み重ねてきたはずのものへの疑問や、
そうなると自分の人生っていったい何?的なことで、
それなら、わたしにもよくわかるから。
信じてきたものが違っていたのかもということのショックなら、わかる。

しかし非常に繊細でよくできた上等な映画で、
グレイがかったイギリス郊外の景色、老夫婦の落ち着いた生活のある家、
シャーロット・ランプリングとトム・コートネイの演技、みんないいです。
上に貼った予告編にもあるけど、川をボートが行くシーンの美しさ!
夫役のトム・コートネイは、わたしの見たことのある映画では、
「ドクトルジバゴ」「リスボンに誘われて」「モネゲーム」とかに出てる。
特に「リスボンに誘われて」ではシャーロット・ランプリングと共演してますね。
ふたり同じ場面にはほとんど出てこなかったけど。

犬と静かに暮らす70歳と79歳の夫婦の元へ、
結婚前の夫の恋人の死体が氷河の中に氷漬けで発見されたと手紙が来る。
若い頃そのままの姿で発見されたという恋人のことを思い出す夫、
その夫の気持ちを推し量り心穏やかでいられなくなる妻。というような話。

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